難病助成改革についてどうしても言いたいこと! | ブロッギン・エッセイ~自由への散策~

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アウシュヴィッツが陸の上のジェノサイド,ヒロシマ・ナガサキが空からのジェノサイドだったとすれば,水俣病は海からのジェノサイドである。(栗原彬編『証言 水俣病』)


 またしばらく忙しくなり,ブログも書けそうにないので,今のうちに書きたいことを書いておこうと思う。とりあえず難病助成制度改革について。

 今回厚労省が提出している難病助成改革案の個々の具体的な問題点については,また別の機会に書くとして,今般の難病制度の論議において私が許し難いと感じることを一点,ここに記しておきたいと思う。すなわち,これまで医療費助成を受けてきた難病患者と,助成を受けてこなかった難病患者との間の格差を殊更に取り上げ,両者の不和,不公平感を煽り,それを利用して改革法案を成立させようとしている点である。

 今回の改革案では,助成の対象とする難病の数を56から300に拡大し,患者数も大きく広げるかわりに,全体として助成は薄くなる。いわゆる「広く薄く」という改革案である。当初,厚労省側は重症患者の線引きによって「薄く」だけで突っ切ろうとしたが,患者団体の猛反発を招き,対象患者数は「広く」なる見込みである。だが,「薄く」という部分は納得できないものが残る。というのも,現行の助成受給者を犠牲にしてのものだからだ。つまり,現行の受給者は今回の改革で,負担額が大幅に上がる。一昨日の記事でも書いたが,私の場合,年間医療費が3~4万円だったのが,20~30万円ほどに跳ね上がる。これはあくまで助成の対象になった場合である。万一,軽症者と見なされ助成から外されれば,通常の国保で3割負担になるから,年間70~80万円の負担になるだろう。

 逆に,これまで助成対象でなかった患者は,改革によって負担が軽くなる。この点だけ取ってみれば好ましいように見える。しかし,現行受給者が受けてきたレベルほどには助成は受けられない。要は,これまで助成を受けてきた患者がその恩恵分を,他の助成対象でなかった患者とシェアするような形である。これで難病患者間の格差や不公平感は縮まるかもしれない。だが,これが難病患者の福祉を考えた本当の改革だろうか。

 今回の改革論議を見ていると,少し前に問題となった,最低賃金よりも高いと言われた生活保護費の切り下げ問題と同じ根を持っている気がしてならない。確かに生活保護費をカットすることで,最低賃金で働いている人たちと生活保護を受けている人たちとの間の格差は縮まるかもしれない。しかし,社会全体で見れば,こういった生活保護や最低賃金のレベルにいる人たちと,そうでない人たち,とりわけ富裕層といわれている人たちとの格差はむしろ広がるだけである。日本の最低賃金が先進国で最低であり,また日本の相対的貧困率がOECD諸国中ワースト4位だったというのは周知の事実であろう。他方,GDPに占める生活保護費の割合や総人口に占める生活保護受給者の割合が,日本は他の先進国と比べて圧倒的に低いというのも,よく知られている事実である。そういう事実を隠蔽して,ごく一部の生活保護費の不正受給問題や芸能人の家族が受給していたことなどを殊更に強調して,生活保護受給者を悪者に仕立てあげ,貧困問題を社会全体の問題として客観的に見させないようにしているのだ。最低賃金を他の先進国並みに引き上げることをせず,生活保護費の方をカットすることで,格差是正としている。こんなのはごまかし,偽りの「格差是正」以外の何ものでもない。社会全体の格差は拡大し,貧困問題はより深刻化していくだけだ。

 同じような偽りの「格差是正」が,難病制度改革でも行われている。つまり難病患者間の格差を是正することで事足れりとしているのだ。問題は難病患者とそうでない人たちとの間の医療格差,社会的格差ではないだろうか。できるだけ難病患者が健常者と同じくらいに自由に社会参加できるよう,長期にわたる患者の負担を軽減し,医療費を支援するのが国の本来の役目ではないか。難病患者間だけで公平を図っても,根本的な解決にはならぬ。1/12の朝日新聞・社説に書かれていたが,ヨーロッパでは難病という概念ではなく,長期にわたって高額な治療費を必要とする慢性疾患として,医療費は国が支援するのが原則だという。これが本来のあり方だと思う。「広く薄く」助成することで,本当に患者のことを考えた支援といえるのか。一回限りの治療ならともかく,一生にわたって続く高額な負担を「薄く」支援するという今回の改革案。生存権の確立しているヨーロッパ諸国の人から見たら,非常識に映るに違いない。先進国でこんな改革案を法制化するのは恥だ!

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