【福島県知事選】前宮古市長が出馬表明~「命は絶対」「被曝の危険性から子どもたちを守る」 | 民の声新聞

【福島県知事選】前宮古市長が出馬表明~「命は絶対」「被曝の危険性から子どもたちを守る」

福島県知事選(10月26日投開票)に、原発再稼働反対、子どもたちの被曝回避を公言する候補者が立った。福島市出身で、岩手県宮古市の市長を12年間務めた医師・熊坂義裕さん(62)。15日、福島県庁で出馬会見を開いた。政党や団体の縛りは受けず、〝原発被災県〟の首長として国に強く物申す知事を目指すという。「経済は大事です。市長も経験したから現実味のないことは言わない。しかし私は医師。命は絶対なのです。命は守ります」


【「当然、被曝の危険性はある」】

 「被曝の危険性?あるに決まってるじゃないですか。中通りが汚染されていないなんて思っていません。福島だけじゃない。宮城も栃木も状況は同じだと思いますよ」
 出馬会見を終え、県政記者クラブ加盟記者の囲み取材や顔写真撮影からようやく解放された熊坂さんは、きっぱりと言った。「もちろん、健康被害の有無は分かりません。20年後、子どもたちの身体に何も悪影響は起きないかもしれない。でも、それは誰にも分からない。ていねいにていねいに健康診断を続けていくしかないんです。様々な事情で多くの子どもたちが福島に暮らしているのですから」。

 子どもたちの被曝回避策について、会見中は記者からの質問は皆無だったが、熊坂さんは「原発被害対策をすべて見直す。低線量被曝については、人類は経験がないから分かりません。放射線量は低い方が良いに決まっています」、「除染、特に山林除染はやっても仕方ない。無駄です」、「帰還の決め方は果たして適切だったのか。帰還一辺倒ではなく、もう一回見直します」、「たとえば浪江町のADR。和解案をなぜ東電は拒否したのか。国や東電は原点に立ち返るべきですよ。原発事故による被害を見て見ぬふりをしてはいけません」などと語った。2012年10月に郡山市で開かれた「原発事故子ども・被災者支援法福島フォーラム」の実行委員長を務めたこともある。

 現職の佐藤雄平知事については「被災県の首長はつらいと思う。でももう少し、国に対してはっきり物を言わなければいけないと思う。福島は〝原発被災県〟ですから。闘わなきゃ」と述べた。
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福島県知事選への出馬会見を開いた熊坂義裕さん。

「原発被害対策をすべて見直す」と語った

=15日、福島県庁

【待ったなしの少子高齢化対策】

 福島市出身。県立福島高校を卒業後、東北大学工学部を経て弘前大学医学部卒。1987年、岩手県宮古市内に内科医院を開業した。宮古市長は、1997年から2009年まで3期務めた。現在は医師の傍ら、24時間365日つながる電話相談窓口「よりそいホットライン」を運営する一般㈳法人・社会的包摂センターの代表理事も務める。
 「国の言う『復興』と、県民が考える『生活の復興』が乖離しています。ホットラインに寄せられる相談を聞くだけで涙が出ます。本当に深刻です」

 会見中、熊坂さんは何度も「私は医者」「医師として」という言葉を口にした。「少子高齢化対策も待ったなし。早く設計図を描かないと大変なことになる。世界のお手本になるような福祉行政を進めたい」と話した。現在、厚労省の社会保障審議会介護給付費分科会委員も務めており「ケアマネジャーの資格も持っている。政治の動かし方も知っている」と胸を張った。

 選挙にあたっては、特定の政党や団体からの推薦は受けない。「私の公約を理解して、何を話しても良いと言うのであればぜひ応援していただきたいが、支持や推薦を受けたり政策協定を結んだりすると縛りが出ます。縛られるのが一番困る。〝県民党〟として応援していただきたい」。
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福島市内にも点在する放射線の線源。原発事故から

3年5カ月が経過したが、子どもたちは今も被曝の危険

性に晒されている

【ありえない原発再稼働】

 会見では、国が進めている原発再稼働についても触れられた。

 「福島第二原発は廃炉にするのが当たり前です。しかし、それすら決まっていない。おかしいですよ」

 避難計画についても「道路を整備したって、地震で壊れてしまっては避難できないし、助けに行かれない。施設に入所している高齢者はどうやって助けるんですか?」と話し、原発再稼働には反対の姿勢だ。「福島第一原発がまったく収束していない中での再稼働なんてするべきでないし第一、核のゴミの最終処分場が決まっていないではないですか。再稼働できるはずがないですよ。経済活動に電気は必要だが、原発に依存しない経済社会づくりを目指します」。
 難航する中間貯蔵施設の建設については「難しい問題。しかし、他県のものを福島で受け入れるのが難しいように、県外の自治体にお願いするのはなかなか難しいのが現実です。根気よく(地権者らと)話し合っていくしかないでしょうね」と述べた。

 「私はバリバリの福島県人。福島県外の方が立候補するような話も聞いているが、福島の痛みが分かるのは福島県人だけです。ふるさと福島のために人生を捧げたい。誰もやらないのなら私がやります。分断を乗り越えて一つにまとまりましょう」と語る熊坂さん。近く、選挙事務所を開いて福島県内を廻り始めるという。

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8月15日現在、福島県知事選への立候補を表明しているのは、いわき市の五十嵐義隆氏(36)と熊坂氏の2人。自民党県連は日銀福島支店の元支店長・鉢村健氏(55)を擁立する方針。民主党県連の支持する現職・佐藤雄平知事は告示まで2カ月を切った今も態度を明らかにしていない。


(了)