Lost For Words(Pink Floyd) | kyupinの日記 気が向けば更新

Lost For Words(Pink Floyd)


Lost For Words(Pink Floyd)

Lost For Wordsはピンクフロイドの1994年のThe Division Bellという作品に収められている。このThe Division Bellは1994年、全米・全英とも1位に輝く名盤である。僕は彼らのアルバムの中では、The WallとこのThe Division Bellのアルバムが好きで、今でも良く聴いている。

The Division Bellは奇妙な石像が向かい合ったジャケットであり、邦題も「対」という名前がつけられている。このアルバムのコンセプトは「コミュニケーションの欠如」。デヴィッド・ギルモアのギターもいい。

kyupinの日記 気が向けば更新 (精神科医のブログ)

1. Cluster One
2. What Do You Want from Me
3. Poles Apart
4. Marooned
5. Great Day for Freedom
6. Wearing the Inside Out
7. Take It Back
8. Coming Back to Life
9. Keep Talking
10. Lost for Words
11. High Hopes


ピンクフロイドの楽曲の特徴は詩の素晴らしさだと思う。2000年7月頃の過去ログでこのLost For Wordsの訳をアップしたことがあった。もう9年前になる。

Lost For Words

I was spending my time in the doldrums
I was caught in a cauldron of hate
I felt persecuted and paralysed
I thought that everything else would just wait

While you are wasting your time on your enemies
Engulfed in a fever of spite
Beyond your tunnel vision reality fades
Like shadows into the night

To martyr yourself to caution
Is not going to help at all
Because there'll be no safety in numbers
When the Right One walks out of the door

Can you see your days blighted by darkness?
Is it true you beat your fists on the floor?
Stuck in a world of isolation
While the ivy grows over the door

So I open my door to my enemies
And I ask could we wipe the slate clean
But they tell me to please go fuck myself
You know you just can't win

僕はただふさぎこんで暮らしていた
憎しみの泥沼に浸かっていた
自分は虐げられ麻痺したようになっていた
僕以外の全てのものは、待ちつづけるだろう 

敵に立ち向かい、いたずらに時が過ぎ
お前は悪意という熱に飲み込まれる
視野狭窄に陥り、現実感は失われた・・
ちょうど夜の闇が訪れるように

警告のための殉教のつもりだろうが、無駄だ
何人お前を助けに来ようとも
「救いの人」はもういないから

お前の人生を照らしているのが暗闇だということがわからないのか
お前が拳を床に叩きつけているという話は本当なのか
孤独な世界に閉じ込められ
厚いツタだけがその扉を覆っていく

そこで僕は敵に扉を開放し
全てを水に流そうと持ちかける
だが彼らの答えは
「ふざけるな お前が勝ったと思ったら大間違いだ」


この詩のやや難しいところは、

Because there'll be no safety in numbers
When the Right One walks out of the door


であろう。というか、僕は難しいと感じた。Right Oneは大文字だしいかにも宗教的な言葉だろうとは思ったが、当初はあまり意味をとらず、

たいてい安全っていうのはそうあるものではないし
そういうものは無くなってしまうものだろう


といった風に誤訳していた。あめぞうの住人の「落ち武者」さんにこの部分の訳し方を聞いたところ、前後の文脈から、

何人お前を助けに来ようとも
「救いの人」はもういないから


の方が良いということだった。(彼は今、元気なのだろうか?)その日の彼のコメントだが、in numbersとRight Oneについて、

in numbersはここでは「何人でも」「どんなに人を集めても」「大衆なんて」との意味でしょう。数だけいても仕方ない、ということですね。「正しき人」は正に宗教的な意味でしょう。The Right OneのTheが「唯一」という意味をそれだけで示してる。欧米のコンテキストではキリストか神か。「最終的な助けになる人」だから前者じゃないかな。だから「救いの人」でも「絶対なる人」でもいいね。

とアドバイスを頂き、その部分を書き換えている。結局、偽物の救いの人がたくさんいたとしても、本物がいなくなっているのでどうしようもない、くらいの意味なのだろう。

このアルバムで最後に収められているHigh Hopes も相当に好きな曲だ。とても美しい曲だと思う。


High Hopes(Pink Floyd)


Wearing the inside out(Pink Floyd)このように心が落ち着くような楽曲は好きだ。

参考
Cloudbusting(Kate Bush)
マドリガルミステリーツアー