機動戦士ガンダム(ファースト)やコンバトラーV等でキャラクターデザインをしていた
安彦良和氏。ギリシャ神話をモチーフにした「アリオン」で漫画家としてデビューし、
以降は漫画家としての活動がメインとなっている同氏の明治時代を描いた力作が、
今回ご紹介する「王道の狗」です。




王道の狗1 (中公文庫)
http://www.amazon.co.jp/dp/4122060168/ref=cm_sw_r_tw_dp_jFvCub0P3V9FS
こちらが新装発売された中公文庫版で、



王道の狗 (1)(講談社)
http://www.amazon.co.jp/dp/406319941X/ref=cm_sw_r_tw_dp_7GvCub1TJB4H1
こちらがオリジナルの講談社版です。私はリアルタイムでコミックを購入していました
ので、現在保有しているのは講談社版です。


ストーリー
>加納周助は自由党の壮士として秩父事件・大阪事件に関わるが、逃亡時の資金難から強盗事件を
犯してしまう。思想犯ではなく一般犯罪者として北海道の監獄に収容され、明治政府による
石狩道路建設のための懲役労務に従事していたが、新潟天誅党の風間一太郎と共に
現場から脱走。脱走の最中にアイヌ人・ニシテの助けを受けてアイヌ名を与えられ、
日本人開拓者・徳弘正輝の下に身を寄せることになる。

二人は世のために何かを為そうとの思いを強めると、加納は武道家・武田惣角の指導を
受けて柔術の技を磨き、朝鮮の開明派政治家・金玉均の護衛役となる。
一方、風間は山師の男を殺害して男の身分と名を奪うと東京へと向かい、
明治政府の閣僚・陸奥宗光に近づくことに成功する。やがて加納は金の下を去ると
勝海舟の支援を受けて、中国の政治指導者・孫文や朝鮮の全琫準の協力者として
「王道」を目指していく。>


王道の狗Wiki
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%8E%8B%E9%81%93%E3%81%AE%E7%8B%97

より引用。この作品のキモの一つは、主人公の加納周助が自由党の壮士として
自由民権運動に関わっていながらも、逃亡中に犯した強盗事件のために
一般犯罪者として日陰の道を歩まなくてはならなくなるところです。
加納達壮士を焚き付けた大井健太郎等の自由党幹部は、政治犯としての
逮捕でしたので、大赦が出た後は大手を振って政治活動をしているのにです。
なので加納はかつて大井健太郎達が利用しようとした金玉均の警備役
を果たそうとしますが、揉め事に首を突っ込んだことが原因でそれも
叶わなくなります。ここら辺の主人公の葛藤が、見どころの一つだと
私は思っています。



元会津藩家老西郷頼母の弟子である武術の達人武田惣角に、弟子入りを願う
主人公の加納周助。周囲の目をごまかすため行方不明のアイヌの名(クワン)と
名乗っていたが、後に金玉均から貫真人(つらぬきまひと)と日本名を名付けてもらう。



主人公加納周助(後にクワン⇒貫真人)に武術の手ほどきをした、武田惣角。
作中では無敵をほこる惣角も、師匠の西郷頼母だけは苦手らしいw。
惣角から習った武術によって、主人公はかろうじて生き延びる



かつて自由党が利用しようとした金玉均。作中では日本に亡命中


新潟天誅党の一員で、加納と同じ北海道の監獄に捕まっていた風間一太郎。
二人は鎖で繋がれていたため、その逃避行は困難を極めた。後に山師を殺して
身分と名前を奪い、財部数馬という別人に成りすます。
古河市兵衛の紹介で陸奥宗光に取り入り、立身出世を目論む。



風間と懇ろになり、利用されて一度は捨てられたアイヌ女性のタキ。
加納のこともまんざらではなかったが、ある事件をキッカケに風間が彼女と
寄りを戻す。だが…。本作品のヒロインにして、非常に強い女性。



金玉均と福沢諭吉の面会シーン。


私が福沢諭吉の脱亜論について具体的に知ったのは、この作品のこのシーンでした…







漫画家の黒鉄ヒロシ氏が、テロ朝のサンデースクランブルという番組において
福沢諭吉の脱亜論を取り上げたことがありました。その意見に素直に納得
出来たのも、王道の狗を読んで福沢理論に触れていたからでした…



この作品における、王道の象徴である勝海舟。金玉均のことを
「いい男だが、正直すぎて革命など出来っこない」と評する



支那の政府に勝てても、中国人には勝てっこない。
それが判らないから日本人はつけあがり、あとはろくなことにならない

政治というやつは五十年先が大事。
今のことだけなら八っつあん熊さんで足りる。
そんな程度の政治家が多すぎる


非常に含蓄のある、勝海舟の台詞です


王道の象徴である勝海舟に対して、覇道の象徴である陸奥宗光。作者によると
「王道」と「覇道」の対立という図式は出版社から「分かりやすい話に」という
依頼に応じたもので、作者自身はそんな単純なものの見方をしているわけではない
とのこと。実際問題、陸奥の言ってることは当時としては正しい現状認識である
と思います。今の時代に陸奥宗光が降臨するようなことがあったら、どんな非難を
浴びてでも沖縄の基地問題を辺野古移設で進めるでしょうね…。



>本作は「王道」を目指す主人公・加納周助と、「覇道」を推し進めようとする
風間一太郎の相克を中心に、明治時代における日本の対外政策が描かれている
。作者の安彦によれば、作品内の「王道」と「覇道」の対立という図式は、
出版社からの「読者に分かりやすい話に」との依頼によるもので[3]、
王道の側に勝海舟を、覇道の側に陸奥宗光を配置する構想は自身のアイデアだが[4]、
加納と風間という相反する登場人物は編集者のアイデアによるものだという[4]。

安彦自身は「王道」と「覇道」といった様に現実世界を単純化は出来ないし[4]、
それぞれの明確な境界線が存在するのかは分からないとしており[3]、作品内の
陸奥の描き方について「総理大臣を務めることが出来るほどのスケールが大きい人物。
一方、許さざるべき巨悪かといえばそうとは限らず、その冷徹さには抗し難い魅力がある。
そのため作品終盤では「情」の側に配した」と発言している[5]。

また、主人公の加納が孫文の支援者となり中国の革命運動に関わっていく場面で
作品が終了している[6]ことについて作者の安彦は、日本から革命に参加した政治運動家の
山田良政のことが念頭にあり[6]死を連想させるような終わらせ方にした[6]、と語っている。
このことについて安彦は、連載時に明言はしていなかったが[6]、山田が生前に関わっていた
東亜同文会の流れを汲む愛知大学の関係者の知る所となり、2006年に大学に招かれて
講演を行うことになった[6][7]。

掲載誌の『ミスターマガジン』が2000年1月で休刊されたため、作品終盤は急ぎ足の
展開となったが[4]、2004年から2005年に白泉社から出版された完全版では
第31話と第47話が新たに書き下ろされるなど大幅な内容修正がされている[8]。
完全版の各巻には鶴田謙二、森薫、平野耕太、久米田康治からの推薦文が寄せられた[4]。>


王道の狗Wiki
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%8E%8B%E9%81%93%E3%81%AE%E7%8B%97
の概要の箇所より引用

掲載誌の休刊(事実上の廃刊)により、作品展開が早くなったことは知っていましたが、
後に出た白泉社版では書き下ろされた話があったとは、今回調べて初めて知りました。
恐らく中公文庫版でも書き下ろし分が収録されていると思われますので、
「オリジナルを持っているから、文庫版の購入は見送ろう」との思いは簡単に
打ち砕かれましたw。他人様に薦めるからには、自分でも買ってしまおうw。


今回この王道の狗をブログ記事で採りあげようと思ったのは、中公文庫版の
発売というタイムリーさもありましたが、それ以上にツイッター上である人と
交わしたやり取りが発端でした。初見の相手でしたが、
「安彦良和氏の神武を大河ドラマにしてほしい」といった内容のツイートに
対して、私が「安彦作品のドラマ化だったら、王道の狗が一番観たい」
と返信したのです。それから安彦作品談義を少ししたのですが、
「色々と表現上の問題があって、現実化は難しいだろうね」
という結論になりました。だって、お隣の国への配慮とやらで福沢先生、
勝先生、陸奥宗光の発言なんて絶対に映像化出来ないでしょ爆弾
仮に映像化したところで、放送自粛を求める火病干渉をしてきて、
狗HKぇや他の民放、映画館等々どれをとっても簡単に折れるに
決まっています(そうなることが明白だから、最初から企画が
通らない可能性が大!)。

あと北海道が舞台だった作品の始めの方では、バリバリにアイヌ人が倭人に
差別&虐待されている描写がありますので、その点でも無理っぽい…。
それでも私はこの作品が好きなんですよね。一人でも多くの人に、手に取って
読んでもらいたい作品です。



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