唄はなまえ | 江口昌記の 月のうさぎ

唄はなまえ


言葉にするのはおろかな呪い
凍てつく息は白くて赤い嘘をつく

語りつくそうとすると夜はきびすを返し
蝙蝠はアテなき魂をさらいにやってくる

ひとは闇をつかまえては抱え込み
空にさらす髪は風の川を流れ行く

鎌になぎたおされた草の海原に
真昼の月は片足を落としている

記憶とは
忘れさったものには冷酷な断罪を課すもの

たどってきた道はとめどなく遠いはずなのに
ふりかえるとところどころが消え失せていた

地の果てまでも見通す丘からのぞんだのは
まばゆいほどに鏡の池と蒼い草の墓石たち





唄はなまえ

Abstract Grass Flow #14 / Visual Images provided by Stian Rødven Eide






1562014