唄はなまえ
言葉にするのはおろかな呪い
凍てつく息は白くて赤い嘘をつく
語りつくそうとすると夜はきびすを返し
蝙蝠はアテなき魂をさらいにやってくる
ひとは闇をつかまえては抱え込み
空にさらす髪は風の川を流れ行く
鎌になぎたおされた草の海原に
真昼の月は片足を落としている
記憶とは
忘れさったものには冷酷な断罪を課すもの
たどってきた道はとめどなく遠いはずなのに
ふりかえるとところどころが消え失せていた
地の果てまでも見通す丘からのぞんだのは
まばゆいほどに鏡の池と蒼い草の墓石たち
1562014