平均観客数4万人越えサッカークラブがアメリカにあった!シアトル・サウンダーズのブランド戦略とは | Sports of Japan(SOJ)

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早稲田大学公認サークル Sports of Japan(SOJ)のブログです^^

こんばんは!
前回ブログを書いた佐藤君から指名を受けて書くことになりました、2期連続で幹事長となった酒井です。
今シーズンもどうぞよろしくお願いします(´▽`)

さて明日はバレンタインですが、皆さんはどんな思い出があるでしょうか。義理チョコをあげたり、本命チョコをもらったり、、まあ色々あるでしょう。
最近は男の子から女の子にあげる「逆チョコ」なるものがあるらしいですが、やっぱり男の子からすれば女の子にチョコを貰えるだけで嬉しいものです。
そんな訳で、もしチョコをあげようか迷っている女の子がいれば、とりあえずあげてください。その方が世界は幸せになります。そしてあわよくば僕にも下されば幸いです(笑)。

前置きはこんなところにして、今回はタイトルにある「シアトル・サウンダーズ」というMLS(メジャーリーグサッカー)でNo.1観客動員数を誇るクラブのブランド戦略について書きたいと思います。
というのも、私先日行われた「シアトル・サウンダーズセミナー ~MLS屈指の集客力を持つシアトルサウンダーズのCOOを迎えて~」というセミナーに参加してきたので、こちらでシアトル・サウンダーズのCOOであるBart Wiley氏のお話を少し共有できればな、と。
(載せたらまずいことがあったら河島さんごめんなさい)。

まずはサウンダーズがどれだけすごいか、ということについて。
下記は2014シーズンにおけるMLS各クラブの平均観客数です。

MLS平均観客数

赤がサウンダーズ緑がMLSの平均観客数です。
一目瞭然ですが、平均観客数どころか2位のトロントFCとも2倍近い差をつけてサウンダーズがトップに立っています。

では、世界に目を向けるとどうでしょう。
下記は全世界のクラブの2014シーズンにおける平均観客動員数トップ30です。
※ヨーロッパクラブは2013-14シーズン

全世界平均観客数


このようにサウンダーズは、全世界において27位、ヨーロッパ外のクラブにおいては4位という平均観客動員数を誇っており、このことからも如何に凄い集客力を有しているかが見受けられます。

では、サウンダーズはいかにしてこれほどの集客力を持つようになったのでしょうか。
そのためにもまずはサウンダーズというクラブの概要を紹介します。

「シアトル・サウンダーズFCとはメジャーリーグサッカー(MLS)に加盟しているプロフェッショナルサッカーチームである。アメリカ合衆国ワシントン州シアトルを本拠地とし、ホームゲームはセンチュリーリンク・フィールドで開催される。」(「Wikipedia」より)

日本語版のWikipediaでは正直いってこの程度の紹介しかされていませんが、英語版に行けばかなり深く設立の背景を知れますので、興味のある方はこちらを見ると良いかと思います。
Seattle Sounders FC - Wikipedia

簡単に概要を説明すると、

・元々MLSの前身であるNASL(North American Soccer League, 北米サッカーリーグ;1984年に打ち切り)で"Seattle Sounders"というチームがシアトルに存在した。
・MLSの構想が始まった時期(1994年)時にシアトルにチームを創ろうという機運が高まったものの、既にAPSL(American Professional Soccer League;1990年に設立され、1996年にUSL(United SoccerLeague)と合併し、1996年のMLS設立以来は実質的な下部リーグ)に"Seattle Sounders"というチームが既に存在したことや、サッカー専用スタジアムが存在しなかったことから実現せず。
・1995年頃から現ホームスタジアムであるセンチュリーリンクフィールド(NFLのシアトル・シーホークスが所有)の建設構想が始まり、2002年に完成。この頃MLS入会条件として存在した「サッカー専用スタジアム」が"adequate grass-field facility"=「十分な芝生フィールドの施設」に格下げられる。
・2000年、MLSのチーム設立方法が"league-operated"=「リーグ主導」から"investor-operated"=「投資家主導」に移行。MLSでのチーム設立のために資金豊かなオーナーが必要に。
・2006年、USLに所属していた"Seattle Sounders"のオーナーであるAdrian HanauerがMLS加盟に向けて動き出し、"possibility for an MLS expansion team"にリストアップされるも、シアトルでのフランチャイズ権を獲得するための資金が足りず入会を見送られる。
・Hanauerは共同のオーナーを募り資金を確保。2007年にようやくMLS入会が承認され、2008年にファン投票によってチーム名が"Seattle Sounders FC"に決定。2009年から"Seattle Sounders FC"としてMLSに参加。

ということでかなり複雑なプロセスを経て、このシアトル・サウンダーズというチームはMLSに加盟したということが分かります。
そして同時に「現在の」シアトル・サウンダーズは2009年に設立されたことから、チーム自体の歴史は非常に浅いと言えます。

今回話を伺ったBart Wiley氏は元々の"Seattle Sounders"で2001年から2008年までGMを務めていたそうですが、セミナーでは2009年に出来た"Seattle Sounders FC"がどのような戦略を展開してきたのか、ということに焦点を当てていました。

繰り返しになりますが、概要からシアトルという街には過去に二度ほど「シアトル・サウンダーズ」というチームが存在しており、MLSが出来てからも何度となく加盟しようと努力してきたことが伺えます。
それに加え、同氏によるとシアトルはリベラル派の多い街で元々サッカー人気も高く、2009年当時はシアトルにフランチャイズを構えるマリナーズ(MLB)やシーホークス(NFL)が実力を落としていたとのこと。

そんな状況下で、MLS加盟に当たってサウンダーズは「我々はどういうチームなのか」を常に問い続け、ブランドの構成を理論・感情の二軸に基づいて4つに分けました。そして、何かをやるときには必ずここに立ち戻って考えると。

チームの根幹が決まり、次にMLS加盟に当たってサウンダーズはキャンペーンを仕掛けました。それが「スカーフを掲げよう」というキャンペーンで、なんと2009年の全ての試合でチケットをスカーフ付きで発売。「スカーフ」(日本ではタオマフと呼びますね)を掲げるという行為はサッカーの一つの特徴であり、その雰囲気を伝統として作り上げたかったとのこと。

このキャンペーン以来、サウンダーズは毎年シーズンチケットの購入者には必ずスカーフを送っており、その他にも伝統として以下のようなことを行っています。ファンベースを育てる上での伝統の重要性はこの時とても熱く語っていました。

・試合前にスタジアムから離れたところにファンを集め、MC・バンドがスタメンを発表し、スタジアムまで一緒に行進
・国歌斉唱
・試合開始時に2階席から緑のトイレットペーパーを投げ入れ
・ゴール直後にゴール裏から炎が上がる
等など


スタジアム全体がこうなっていたら壮観ですよね。


街中にスカーフをぶら下げたりもしたとか。笑


その他にも大事にしていることが3つあり、その3つとは
・パッション
・勇気
・コミュニティ
だそうです。

特に「コミュニティ」という面で言えば昨年は400回以上コミュニティに出て活動をしたとのことで、この辺りはJリーグの地域密着と通ずるものがあります。
また、41人の評議員をファンの中から選出し、月一でチーム各部署の責任者と直接話すことで彼らの意見も集めているほか、シーズンチケットホルダーに対してはGMへのイエスノーの投票権を与えているとのこと。こういった活動通して彼らにチームの一員であることを感じてもらいたいと。

他にも様々な施策を紹介して頂きましたが、最後に私が一番驚いたことを一つ。
それは、「試合が始まったら広告等は一切表示せず、ハーフタイムにもスポンサーイベント等は行わない」ということです。
前回のブログでは佐藤君がスーパーボウルについて書いていましたが、スーパーボウルのハーフタイムショーなんていったらとんでもないですよね。笑 そんなことから、アメリカのスポーツと言えば「ハーフタイムに派手なイベントをやって、広告宣伝の露出も多く行っている」とイメージしていたので、この話にはとにかく驚きました。

なんでも、試合中の広告に関してはサッカーそのものの伝統を重んじたいということや、ファンの声から掲載しないようにしているとのこと。
ハーフタイムに関してはメモし忘れていたので覚えていない部分もありますが、恐らく同様の理由かと。

話があちらこちらに飛んでしまいましたが、こういった様々な施策を通じて「シアトル・サウンダーズ」というブランドイメージが形成され、チーム設立から5年で平均観客数4万人超えを成し遂げているのだと思います。

実は先日サガン鳥栖の竹原社長のお話も伺いましたが、同様に「ブランド価値の向上が何より大切」と仰っていました。

「サウンダーズの試合」=「ファンがスカーフを掲げている」というブランドイメージが形成されれば、それだけでファンにとっては自身のクラブへのアイデンティティの向上に繋がり、同時に新規のファンもチームの一員に入りやすいのではないでしょうか。

日本のチームがこれらのことをどれだけ真似出来るかは分かりませんが、「ブランド価値を高める」ことの重要性にもっと気づき、差別化していく余地はまだまだあるのでは。

そんなことを思った今回のセミナーでした。


参考資料
・A Record Setting Year for MLS Attendance - EMPIRE OF SOCCER(2015.2.12 閲覧)
http://www.empireofsoccer.com/record-breaking-attendance-29742/
・Average attendances of European football clubs - Wikipedia(2015.2.12 閲覧)
http://en.wikipedia.org/wiki/Average_attendances_of_European_football_clubs
・Average home attendances im non-European club football(2015.2.12 閲覧)
http://en.wikipedia.org/wiki/Average_home_attendances_in_non-European_club_football
・シアトル・サウンダーズFC - Wikipedia(2015.2.12 閲覧)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%82%A2%E3%83%88%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%82%B5%E3%82%A6%E3%83%B3%E3%83%80%E3%83%BC%E3%82%BAFC
Seattle Sounders (1994–2008) - Wikipedia(2015.2.12 閲覧)
http://en.wikipedia.org/wiki/Seattle_Sounders_(1994%E2%80%932008)
・北米サッカーリーグ - Wikipedia(2015.2.12 閲覧)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8C%97%E7%B1%B3%E3%82%B5%E3%83%83%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%B0
Seattle Sounders FC - Wikipedia(2015.2.12 閲覧)
http://en.wikipedia.org/wiki/Seattle_Sounders_FC
USLプロフェッショナルリーグ - Wikipedia(2015.2.12 閲覧)
http://ja.wikipedia.org/wiki/USL%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%8A%E3%83%AB%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%B0
American Professional Soccer League - Wikipedia(2015.2.12 閲覧)
http://en.wikipedia.org/wiki/American_Professional_Soccer_League