【ボス『リマスター制作秘話』その3】:ボスも吃驚!「車を運転しながら聴いていたときに、当初意図していた音を初めて聴いた」と語る

ブルース・スプリングスティーン初期名盤7Tが初のリマスター!実際にリマスターを行なった、巨匠ボブ・ラドウィックがその制作過程を語る!今回初めてリマスターした『ザ・リバー』と『ネブラスカ』、一度リマスターをした『明日なき暴走』と『闇に吠える街』を再び新たにリマスターした理由。それぞれのアルバムについて語ります

●『ザ・リバー』と『ネブラスカ』

Mastered for iTunesシリーズには当初この2作は入っていなかったため、今回が初めてのリマスタリング版となる。『ザ・リバー』はこれまで見直しの対象として長い間棚上げになっていた作品。1980年に発売されたこの2枚組はオリジナル盤がデジタルでミックスされたものだったため、初期のアルバムのようなスピードの問題がなかった。しかし改良の余地は大いにあったとラドウィックは語る。

「『ザ・リバー』が初めてCD用にリマスタリングされた頃はデジタル・ドメインのコンソールが存在しなかった。それにアナログからデジタルへのコンバーターも今ほど質がいいものではなかったから、今回のヴァージョンをみなさんに喜んでもらえたらいいね。自分としてはもっと温かみが必要だと思っていたけれど、今回はそれを入れることができた」。

『ネブラスカ』はその出自からして常にトリッキーな作品だった。この音源がカセットに録音されたのは有名な話だが、1982年にアルバムとして発売されることになったときは多くのエンジニアの頭痛の種となったものである。ラドウィックは幸運にも、ブルースがポケットに持ち歩いていたミックス・ダウンのカセットまで遡る必要がなかった。ボックス・セットに収められた他の6作について、彼はこう説明する。

「オリジナルの1/4インチの2トラックのミックス・マスターを使ったんだ。だからマルチ・トラックから引っ張ってくる必要はなかったけど、『ネブラスカ』は例外だった。オリジナル・アルバムがカセットにミックスされていたから、そこからアナログ盤を起こすことができなかったんだ。それで、『ネブラスカ』のセッションの間に1/2インチのマスター・リールを作ったんだ。それに正しいテイクを正しいスピードで編集して繋ぎ合わせたものが入っている。ブルースが望んでいた方向性でね。オリジナルのアナログ盤、カセット・マスター、CDのマスタリングにはそのリールが使われたんだ。今回もそこから起こしているよ」。

●『明日なき暴走』と『闇に吠える街』

スプリングスティーンの1975年と1978年の名作は以前もリマスタリングされているが、ラドウィックはこれらもまた、同名のボックス・セットではなく、生まれ変わったヴァージョンだと念を押す。『明日なき暴走』ほど数多くリマスタリングを施されたアルバムに、これ以上何を施したというのだろうか。ラドウィックによると、答えは冒頭にあるという。

「「涙のサンダー・ロード」の冒頭、ピアノとハーモニカが奏でる4つの音をよく聴いてもらえると分かる。私にはその部分が「不安定」に思えていたんだ。プランジェント・プロセスが奇跡のようにその問題を解決してくれて、実際にプレイしたときのような音になったよ」。

とはいえ、『明日なき暴走』にオーバーホールを期待してはならない。2005年、スプリングスティーンの傑作の30周年記念盤にリマスタリングを施した時点で、ラドウィックはスプリングスティーンから「究極のコメント」を頂戴しているのだ。

「『明日なき暴走』の30周年記念ボックス・セットのリマスタリングを手がけた頃、ブルースに楽屋に会いに行ったら、「車を運転しながら聴いていたときに、当初意図していた音を初めて聴いた」と言ってくれたんだ!だからアプローチを変える気はなかった。だけど今回新たに変換したことによって、生命観が増したと自分としては思うね。EQの仕方も微妙に違うんだ。『闇に吠える街』も同じだね」。

「違って聞こえるかって?勿論だよ!」とラドウィックは宣言する。「自分でも新しいヴァージョンを買いに行きたいくらいだよ。これはマーケティングの人間としてじゃなく、いちファンとしての意見なんだ」。

ー完ー

遂に霧が晴れた!
ボスの名盤中の名盤初期7タイトルが初リマスターで甦る!


ブルース・スプリングスティーン
『アルバム・コレクションVol.1 1973-1984』

BRUCE SPRINGSTEEN: THE ALBUM COLLECTION VOL. 1 1973-1984
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●豪華60Pブックレット付き(レア写真満載,貴重なメモラビア、プレス・クリップなど).
●日本制作紙ジャケット 
●30周年復刻帯 :各紙ジャケには1984年『ボーン・イン・ザ・USA』発売時に全面改定した共通デザイン帯を復刻。
●解説・歌詞・対訳付 :各アルバムに投げ込み(三浦久氏による歌詞の世界から見たアルバム解説も)
●ボックス用新規解説:五十嵐正氏による、このボックス用の新規ライナー
●収録アルバム
アズベリー・パークからの挨拶 Greetings From Asbury Park』(1973年) *
『青春の叫び The Wild, The Innocent & The E Street Shuffle』(1973年) *
『明日なき暴走 Born To Run』(1975年) **
『闇に吠える街 Darkness on the Edge of Town』(1978年) **
『ザ・リバー The River』(1980年) *(2枚組)
『ネブラスカ Nebraska』(1982年) *
『BORN IN THE U.S.A. Born in the U.S.A.』(1984年) *
(*初のリマスタリング盤  **再新リマスタリング)

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http://www.sonymusic.co.jp/artist/BruceSpringsteen/info/445016

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