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『国力とは何か(前編)①』三橋貴明 AJER2014.11.11
『国力とは何か(後編)①』三橋貴明 AJER2014.11.18
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本日はTOKYO MX「モーニングCRSS」に出演いたしました。
明日は総選挙の公示日ですが、わたくしは早朝(9時)から愛知三区(名古屋市 昭和区・緑区・天白区)の自民党立候補予定者、池田佳隆氏の出陣式に出席いたします。
さらに明後日は、文化放送「おはよう寺ちゃん活動中」出演のため、三日連続で五時起きです。
さて、モーニングCROSSでも取り上げましたが、政府が12日公示、14日投開票の総選挙の費用として、今年度予算の予備費の中から631億8300万円を支出することを閣議決定致しました。
約632億円の支出について、
「政府は無駄遣いして」
と、例により、企業・家計と政府を混同する批判をメディアが展開していますが、現在の日本にとって、政府の「余計な支出」は福音です。何しろ、我が国は名目GDPという総需要が減少するデフレ化のプロセスを歩んでいるのです。
政府の支出は、「政府最終消費支出」というGDPの需要となり、デフレを「緩和する」方向に導きます(デフレ脱却のためには全く規模は足りませんが、方向的にという話です)。と言いますか、政府の「需要創出」とは「政府の追加的な消費・投資」を意味し、総選挙による「余計な支出」は、まさに政府の「追加的な消費」に該当するのです。
もちろん、今回の総選挙の是非やら大義とやらについては、個人の価値観に基づき、言いたいことがある人は少なくないでしょう。あくまでここでは「経済効果」の話をしています。
さて、政府が「余計な支出」をすると、一般の国民あるいは「企業経営者」は、
「何てもったいない! 経済が悪いのだから、政府も節約するべきだ!」
と、反射的に考えてしまいます。結果、「彼らの善意」が財務省の財政均衡主義に活用され、我が国は延々と緊縮財政・デフレ路線を歩み、国民が貧困化していったのです。
地獄への道は、善意で舗装されている。などと言いますが、実際に財務省に好き勝手に緊縮財政をやらせ、日本の経済力を弱体化を許している「背後の力」は、結局のところ国民の善意なのです。
本問題について、クルーグマン教授が「ビジネス vs 経済学」というタイトルでコラムを書かれていましたので、ご紹介。
『ノーベル経済学賞受賞ポール・クルーグマン 東京発――経済的岐路に立つ日本の運命【第2部】 ビジネス vs. 経済学
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/41017
米国の連邦準備銀行にあたる日本銀行は、約20年にわたり日本経済を苦しめてきたデフレを終わらせるための大きな取り組みを、ここしばらくの間進めてきた。これには、多くの紙幣を印刷すること、さらに重要な点としては、インフレが2パーセントに達するまで紙幣増刷を続けると投資家に確信させる試みが含まれており、これを始めたころは上手くいっているように思えた。しかし最近になって、経済の勢いが失速したため、先週、日銀は新たにさらなる積極的な金融措置を発表した。
ご想像通り、私はこの動きに大いに賛同するが、財政政策上の誤り(以下に詳述)のために、この政策は失敗するのではないかと懸念している。日銀は正しい決断をしたが、これは内部の大きな反対を押し切っての決定だった。実際のところ、この新たな刺激策は日銀の政策委員会のメンバー9人のうち、わずか5人によって可決されたもので、ビジネス界に近い人たちは反対票を投じた。これが今回のコラムのテーマだ。すなわち、ビジネスリーダーたちの経済知識、というか、その欠如についてである。
私がここ日本で話した人のなかには、日本の企業リーダーの多くが日銀の措置に反対しているということは、日銀が間違った方向に向かっていることを示していると主張する者がいる。こうした主張は、米国をはじめ、多くの国でよく見られる光景であり、経済の不調を修正したいのならば、大手企業のリーダーや起業家、富裕投資家といったビジネスで成功している人々の意見を聞くべきだという考えだ。つまるところ、お金の面で成功しているということは、経済が実際にどう動くかを知っているということではないか?
本当のところ、答えは「ノー」だ。事実、ビジネスリーダたちは、問題を抱えている時期には特に、経済についてとてつもなく間違ったアドバイスをすることがよくある。そしてその理由を理解することが重要なのだ。(中略)
私が何年も前に出版した論文のタイトルを引用すると、この質問の答えは、「国は企業ではない」ということだ。たとえ小国であっても、国の経済政策では、ビジネスの世界ではほとんど問題にならないような類のフィードバックを考慮する必要がある。たとえば、最大級の企業では、自社の従業員に売る自社製品は全体のほんの僅かに過ぎないが、非常に小さな国であっても、ほとんどの商品とサービスを売る相手は自分たち自身なのだ。
成功したビジネスマンが問題を抱えた経済を見て、ビジネスの経験から得た教訓を当てはめようとしたらどうなるか考えてほしい。彼または彼女(稀なケースだが)は、問題がある経済を問題を抱えた会社のように捉えるが、会社ならコストを削減し競争力をつける必要がある。ビジネスマンは、雇用を創出するには賃金を下げ、経費を削減しなければならないと考える。概して緊縮経営が必要なわけだ。当然ながら、赤字国債の発行による支出や紙幣増刷といった仕掛けでは、根本的問題を解決することはできないということになる。
しかし現実は、不景気な時に賃金や支出を削減すると、本当の問題、すなわち不十分な需要という問題をひたすら悪化させることになる。一方、超過支出や積極的な紙幣増刷は事態の改善に大きく役立つ。
しかし、こうした論理が特に実務的でない学者タイプの人から出てきた場合、それをどうやってビジネスリーダーたちに納得させることができるだろうか?――世界経済の運命は、これに対する答えにかかっているのかもしれない。
ここ日本では、もし従来型の慎重論が優勢となれば、デフレとの戦いは失敗に終わる可能性が極めて大きい。そうではなく、ビジネスリーダーたちの直観を抑え、斬新な考えが勝利をおさめることができるのだろうか。引き続き注目を。』
クルーグマン教授にとって、日本の経済政策の混乱は他人事でございますので、「引き続き注目を」で話が終わるのでしょうが、我々日本国民にとってはそうはいきません。
個人的に最も気に入った文章は、
「非常に小さな国であっても、ほとんどの商品とサービスを売る相手は自分たち自身なのだ」
の部分です。
輸出依存度が低い日本の場合は、特にそうですが、生産者である国民の顧客のほとんどは、自分たち国民なのです。実質賃金が下落し、国民が貧困化すると、「自分たち国民」が生産したモノやサービスが売れません。すると、「自分たち国民」の所得が減り、さらに「自分たち国民」が生産したモノやサービスが売れなくなります。
国民の所得が減ると、税収も減ります。何しろ、わたくし達は所得から税金を支払っているのです。税収が減ると、財政赤字が拡大し、国民が、
「政府は無駄遣いをやめろ!」
の大合唱を始め、政府が支出を絞る(あるいは増税する)と、ますます国民の所得が減り、国民が生産する者やサービスが売れなくなる。
上記の問題を解決するためには、クルーグマン教授の言葉を借りれば、
「国民の直観を抑え、誰かの支出が誰かの所得になるという現実を国民の多くが理解する」
必要があります。さもなければ、我が国は永遠に財務省主導の「財政均衡主義」という悪夢から覚めることがなく、国民の貧困化が続くでしょう。
幸いなことに、上記の類の話は、「落ち着いて考えれば、誰でも理解できる」のです。というわけで、我が国の経済政策の混乱をを収めるためにも、わたくし達国民一人一人が「別の国民」に事の本質を伝えていくことが重要になります(特に、政治家に)。皆さんも、是非、ご協力くださいませ。
「誰かの支出が誰かの所得になるという、当たり前のことを理解しよう」に、ご賛同下さる方は、
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