昨日、湯川氏が殺害されたと見られる写真を持った後藤氏の映像が公開されました。

いまだこの映像が「イスラム国」によって公開されたものかは確定していない段階だと思われますが、仮に本物だとしても、日本政府としてはいよいよ「イスラム国」の要求には応じられない状況に陥ったように思います。

今回、人質解放の条件が、「2億ドル」の支払いから、ヨルダンに捕えられている「テロリスト」の解放へと変わりました。

この交換条件と名指しされた「テロリスト」は、「自爆テロの容疑で死刑判決を受けヨルダンの刑務所に収監中のサージダ・アル=リシャーウィ」。
2005年に起きた、ヨルダンの首都アンマンの複数のホテルで合計57人もの死者を出した自爆テロの実行犯グループの生き残りだといいます。

2億ドルもの大金は出せないけど、人一人くらいなら解放することは容易だろう、なんて思う方がいたら、それは大間違い。僕の理解では、2億ドルを出すことよりも、このテロリストを解放する方がよほどハードルが高いように思います。

それはなぜか。

あくまで目的は「日本人」の生命を助けること。

その生命を助けるために、2億ドル。
人の生命に値段は付けられないのは確かですが、これが高いかと聞かれれば、平たく言えばべらぼうに「高い」、と個人的には思います。人を馬鹿にした金額としか思えません。
しかしながら、金額としてどうしても払えない額かと言えば、そんなこともありません。日本の予算規模を考えれば払える額だとは思います。(払うべきでないのは当然ですが。)

一方で、このテロリストは、ヨルダンの国民を無差別に殺害した罪で死刑宣告をされています。ヨルダン国民からすれば、自国の民間人の生命を奪った張本人です。また、仮に解放されたら、再びヨルダンで自爆テロを起こし、ヨルダン国民の生命を奪うかもしれません。

もし日本人の生命を守るためにこのテロリストを解放するということになれば、ヨルダンの国民の生命よりも日本人の生命の方が大事なのか、という声がヨルダン国内で出てくることは必然です。

もし、ヨルダン政府の理解を得ることを目的として、もし日本政府が、この「テロリスト」の解放されたら更に資金援助をするなどと言ったら、どうなるか。
これが明るみに出た暁には、ヨルダン人の命を金で買った、などと国際社会の中で大いに批判されることは目に見えています。

私も人命救助は第一に考えるべきだと思います。
しかしながら、今回のテロリストの要求は、日本にとって一層飲みづらい内容となりました。

最後の最後まで、希望をもって事態の推移を見守りたいと思います。
しかしながら、交渉の余地は着実に狭まっている印象を受けます。


前衆議院議員 三谷英弘