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「衆院選、投票したい党は? 2位は日本維新の会」
 今月16日、午後の本会議で解散された衆議院。3年4カ月ぶりの総選挙が12月16日に決定した。与党の民主党が今後も政権を維持するのか、自民・公明両党が政権奪還を果たすのか、はたまた知事時代に高い支持を誇っていた橋下徹氏や石原慎太郎氏率いる日本維新の会の動向にも注目が集まっている。
【1位】自由民主党(25.2%)
【2位】日本維新の会(19.5%)
【3位】民主党(7.0%)
【4位】公明党(6.4%)
【5位】日本共産党(4.8%)
【6位以降】は、みんなの党、たちあがれ日本、社会民主党、国民新党

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「トシさんって、おっき~い!(‐^▽^‐)」
それが彼女の第一声。ネットの某掲示板で僕らは知り合い、オフ会と称して初顔合わせをした(出会い系サイトぢゃないよ)。
「いやぁ、『姫』が小さいだけで…。(;^_^A」
確かに彼女は小さかった。150cmというのはサバ読み後の身長で、平均的男子(170~175cm)と並ぶと、ハンドルネームの通り、彼女は「親指姫」だった。新宿の雑踏の中から突然、彼女は僕の前に現れた。


$GIPSY☆TOSHI ♭\(∂_∂)/♯ の「る・る・る♪」 (笑える・学べる・タメになる)-新宿


同郷・同窓・同じ職場では決して出会わなかったであろう人とつながるのがネットワークの時代。育った環境や教育・職業上のバックグラウンドが違うと、こうも価値観が違うのかと驚くことがある。「常識」という言葉がもはや何の意味も持たないのではないかとさえ思ってしまう。

一緒にご飯を食べて僕がお金を出す。
「ごちそうさま~!(╹◡╹)」
その一言が出ない。男がお金を出すのは平均的賃金から考えて「常識」だろうし、たかだか数千円の酒食を恩に着せるほど小さい人間ではないつもりだけど、何だか居心地が悪い。
「ごちそうさまを言うくらいなら、おごって欲しくない。」
そんな女性さえいる。

親指姫との初デートの後、帰途の新宿駅地下。
「トシさん、ちょっとここで待ってて。」
そう言って彼女は人ごみに紛れた。
「うーん、よく分からない娘(こ)だな。やっぱり、『ごちそうさま、言わない派』だし。」
戻って来た彼女の手には紙包み。
「トシさん、これ食べて。明日の朝ごはん。ヾ(^▽^)」
差し出した菓子パンは彼女なりの「ごちそうさま」だった。
「おっ、案外、いい娘かも。モジモジムスメっていうのもカワイイなー。(//∇//)」
僕らは何となくつき合うようになった。


$GIPSY☆TOSHI ♭\(∂_∂)/♯ の「る・る・る♪」 (笑える・学べる・タメになる)-パン


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「大同小異」=「小異を捨てて大同につく」
師走の衆議院選挙を目前にして第3極の合従連衡がかまびすしい。「橋下維新の会」が「石原太陽の党(たちあがれ日本)」を丸抱えしたかと思えば、「渡辺みんなの党」は「小沢生活が第一」との連携を模索する。つながることが目的ならば、「大同小異」は必要なのだろう。

バックグラウンド・価値観が違う女性とつき合うということは、互いの違う部分をことさらにあげつらう減点方式でなく、共通する部分を探す加点方式だと思う。親指姫と僕は共有できる価値観をひとつひとつ足し算して行った。



山手線しか馴染のない関西人にとって、その内側は「暗黒大陸」だし、少し外側もまた「未開の土地」である。浅草と浅草橋がなぜ同じ名前を冠しているのか、親指姫とつき合う前は知る由もなかった。電車に乗っていては分からない土地の空気を、地元民の彼女はごく自然に吸っていた。


$GIPSY☆TOSHI ♭\(∂_∂)/♯ の「る・る・る♪」 (笑える・学べる・タメになる)-浅草橋地図


総武線の浅草橋を降りれば、古くからの人形屋さん。一方の浅草で業平橋から東京スカイツリーを見ているだけでは気付かないけれど、浅草橋から江戸通りを歩けばほんの15分ほどで浅草に着く。途中、駒形どぜうの隣にバンダイ本社があり、この界隈が昔からのものつくり・職人の街であることが分かる。親指姫もまた高校卒業後、おもちゃメーカーに入り商品開発をしていた。

「彼女の世界」はよく分からないところもあったけれど新鮮ではあった。アニメに、コミケに、フィギュアに、ドール。オタクで腐女子と言えばそれはそうだけど、今を時めく日本のコンテンツ産業、「カワイイ文化」とも言える。親指姫が描いたキャラクターはめっぽう「萌え~」だった。友達が作っているという同人誌のエロさは、男の僕から見ても赤面モノだったが、隣町の秋葉原がオタクの聖地になる素地は浅草橋界隈と無縁ではないことを伺わせた。


$GIPSY☆TOSHI ♭\(∂_∂)/♯ の「る・る・る♪」 (笑える・学べる・タメになる)-萌え


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今回の総選挙の争点は分かりにくい。
・景気・雇用(K)
・憲法・領土・外交・基地・安全保障(K)
・原発・エネルギー・震災復興(G)
・消費税・社会保障(S)
・TPP(T)。
僕自身は親方日の丸で一般大衆から金を巻き上げる、
「株式会社一般売上税(Kabushiki Kaisha General Sales Tax)」
にひっかけて、
「KKGST」
と呼んでいる。官僚・公務員・国会・行政改革・地方分権(K)も入れると「KKK」だけど。もちろん、これらは互いに絡み合っている。比較的関心の薄いTPPは国民皆保険と関係しているし、そもそも選挙で民意が示されても結局は官僚が国を動かすんじゃないのという政治不信もある。これらの争点の中で乱立した14党の共通項は何なのだろうか。



親指姫と僕の共通項は「貧乏」。僕の貧乏話は他所に譲るとして、彼女もまた貧乏育ちだった。内風呂はあるけど基本は銭湯。
「雨漏りがひどくなっちゃって、福島のおじさんが直しに来るの。母の兄で左官屋さんしてるんだけど、狭い家がますます狭くなっちゃう。イヤなのよね~。」
非正規雇用でお母さんとの二人暮らしはそれなりに大変のようだった。

彼女の家には行ったことがない。
「送ってくれてありがと。じゃ、ここでバイバイ。*゚v゚*」
「うん、元気でね。(*^-^)ノ」
彼女の家の近くの交差点で手を振るのがいつものパターンだった。小学校の時、お金持ちの友達のお父さんに送ってもらい、家を見られるのが恥ずかしくて隣町で車を降ろしてもらった経験のある僕には、彼女の気持ちを察することは十分できた。



貧困は人間を極端に走らせる。親指姫は右翼、僕は左翼…とまで言わないがリベラル。共産党や社民党のシステムは新たな官僚主義に過ぎないと思っているから僕は左翼ではない。分かりやすく言えば、アメリカ大統領選で金持ちロムニーに対抗するオバマがリベラル。対する彼女は僕から見れば筋金入りの右翼だった。天皇のことを「陛下」と呼び、支持政党は「たちあがれ日本」。右と左(リベラル)がネットを通じて知り合った。


$GIPSY☆TOSHI ♭\(∂_∂)/♯ の「る・る・る♪」 (笑える・学べる・タメになる)-二重橋


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同じ貧乏でも右翼的な考えは、
「金持ちはお大尽としての能力・義務があるからそれでいいじゃない。庶民はそのおこぼれで生きて行く」
というもののようである。機会均等はOKでも、結果平等は悪平等。そもそも人間には能力差があり、そんな人間社会をまとめるのは象徴としての天皇、いや「陛下」であり、実務としては強いリーダーである。僕にはほとんど宗教としか思えないが、宗教だから否定はできない。

リベラルの僕は、
「金持ちのおこぼれで生きて行くのはまっぴらごめん、弱肉強食・本能剥き出しの極端な資本主義で、貧乏人は死ねと言うのか」
そんなふうに思える。賢い人たちが一生懸命働いて高給をもらうのは正しいように見えるけれど、お金をグルグル回すだけの人たちは努力の方向性が間違っていると思う。名だたる経済研究所の「頭脳」が、生活者の幸福を軽んじているように見えて、ついため息をつく。



浅草橋から人形町を抜けると銀座は案外近かったりするから、銀座もまた親指姫のテリトリーだった。浅草橋の「シモジマ」は下町のソニプラ(銀座ソニープラザ)。銀座で彼女を待つ間、タバコを吸い、マウスウォッシュの捨て場所に困って植え込みに吐いたら、きっちり見られてた。
「トシさん、具合悪いの?(´・_・`)」
きったな~い、と言わずに気遣ってくれる彼女の優しさが嬉しかった。資生堂の地下売場で高そうな化粧品を見てる彼女を残して30分ほど表で空気を吸って戻ると、彼女は一歩も動いていなかった。何だか意地らしくて思わず化粧品をまとめ買いした。文具の「五十音」に入る路地裏で僕らはファーストキスをした。


$GIPSY☆TOSHI ♭\(∂_∂)/♯ の「る・る・る♪」 (笑える・学べる・タメになる)-五十音


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親指姫が求めるのは「陛下」に象徴される絶対的存在、白黒はっきりつけてくれる強いリーダー。生活に追われ、今の生活を何とかして欲しい人にとって、
「決められない政治」
は我慢できない。だから強いリーダー待望論を叫ぶ。自分が苦しいのは甘い汁を吸っている悪者がいるからで、それをバッサリ切ってくれるヒーローを欲しがる。そんなヒーローに全権を委譲する。

けれど僕はそれはとっても恐いことだと思っている。悪者というのはあれでいてなかなかの知恵者であり、切られないように先手を打っている。それに何よりもこの、
「不利益配分の時代」(萱野稔人)
巨悪は虚像かも知れない。そうすると切られるのは普通の生活者になる。もっと言えば弱い人から切られていく。デフレスパイラルを断ち切るために、金融緩和で銀行にお金を流すのが良いのか、本当にそのおこぼれが庶民に回って来るのか、投機マネーに化けない保証はあるのか。政治が目を向けているのは生活者でないように思えてしょうがない。

「決められない政治」はもどかしいけれど、そもそも、
「民主主義は面倒で疲れるもの」(湯浅誠)
かも知れない。



親指姫は小さくて、腕枕をしても彼女の頭で僕の腕がしびれることはなかった。文字通り、同床異夢だったのかも知れないが、とにかく僕らはうまくやっていた。僕の家で年末年始を過ごし―年越しの買い出しに行き、一緒に紅白を見て、初詣に行き―楽しい時間が流れた。穏やかな日々はずっと続くものと思っていた。


$GIPSY☆TOSHI ♭\(∂_∂)/♯ の「る・る・る♪」 (笑える・学べる・タメになる)-紅白


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あの日、僕は大阪出張からの帰り、新幹線に閉じ込められていた。未曾有の大震災で彼女のことが気が気じゃなかったけれど、連絡は取れなかった。一週間ほどしてようやくメールで安否確認ができた。けれど、震災後のゴタゴタでお互いてんやわんやしていた。
「GWになったら、落ち着くと思うから。(ノ_・。)」
結局、それが彼女からの最後のメールになった。何があったか分からないが、連絡は取れなくなった。福島のおじさんがらみかも知れない。あまり仲のよくないお母さんに加えて、おじさんを引き取ったとしたら彼女のストレスは並大抵のものではなくなっただろう。



今回の衆議院選挙ではどこに投票して良いか分かりにくい。分かりにくいから、口あたりの良いキャッチフレーズに飛びつく。党の顔だけで選びたくなる。
「橋下さん、石原さんは何か変えてくれそう。」
「安倍さんなら強く中国に言ってくれるよね。」
「渡辺さんは人情オヤジだけど泣き虫だからなぁ。」
「小沢は悪でしょ。無罪って言っても何か悪いことやってる。」
「河村って言うのこのヒト? とってつけた名古屋弁がイヤ。」
「おーい、山田クン。TPPはテーピーピーじゃないよ。」


$GIPSY☆TOSHI ♭\(∂_∂)/♯ の「る・る・る♪」 (笑える・学べる・タメになる)-小党乱立


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イメージだけで決めると手痛いしっぺ返しを受けるのは巨悪でなくて庶民である。小泉劇場政治が救ったのは、結局、大手銀行だったし、そのおこぼれは庶民に回って来なかった。それどころか、日本の「失われた10年」は「失われた20年」になった。ヒーローを待つのはもうやめた方がよいと思う。誰が何をしようとしているのか、選挙後、どことどこが連立するのか考えて投票すべきだろう。


「姫はやっぱり維新だよね。」
「え゛ー、橋下さん、キライなんだけどー。石原さんがくっついちゃったからしょうがないか。」
「安倍総理、石原副総理って、姫にとっちゃ理想的でしょ。」
「トシさんは、『やさしい第3極』よね。私から見たら軟弱な第4極だけど。」
「うーん、政治が総右傾化してる中で、ほんとの中道・リベラルがどこなのか…。」
「じゃ、ここでバイバイ。*゚v゚*」
野田自爆解散、石原新党・維新の会合流のニュースを見ると、親指姫とそんな会話をしていただろうなと、ふと思う。政権交代から3年、震災からは1年半。時が過ぎて傷が癒えたから言える。
「元気でね。(*^-^)ノ」



あらすじキーワード: 衆議院選挙 第3極 大同小異 14党乱立 争点 リベラル 決められない政治 強いリーダー待望論 失われた20年




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