大阪府の公立高校の入試を元に戻してほしい | 作家・土居豊の批評 その他の文章

大阪府の公立高校の入試を元に戻してほしい

大阪府の公立高校の入試を元に戻してほしい

最近、自分の子が通う中学の進路説明会に行って、近年導入された大阪府の公立中学チャレンジテスト結果について、進路担当の先生から直に聞いた。
結果に、暗澹たる思いがした。

※新聞紙面に掲載された説明図


新聞紙面に報じられた上記の図でわかるように、中学校間格差がますます露骨に開く仕組みだからだ。
つまり、自分の子が通う中学校の(全員の)チャレンジテスト平均点が高くないと、自分の子の内申点(五段階)が実際より下がることになる。
というより、チャレンジテストの平均が低い中学の先生は、自分のクラスの生徒がいくらがんばっても、五段階の5や4をつけにくい仕組みだということらしい。
これは、数年前から大阪府が導入した絶対評価による内申点について、学校間の不公平を調整する制度なのだが、これでは中学校間格差が明白になる制度だというほかない。
これなら、元の相対評価の方がよほどましだ。
なぜなら、
つまり、元来の相対評価なら、学校間の学力差は一応公平になる仕組みだ。自分の中学の中でがんばれば、内申点が高くなる可能性がある。
だが今回の絶対評価とチャレンジテストの仕組みでは、チャレンジテストの平均点が低い中学に入ったら、いくら生徒ががんばっても、5がつかないことになる。
最初から、中学の学力格差によって内申点の上限が決まってしまいかねない。個人のがんばりで挽回できない仕組みなのだ。
自分の子がいくらがんばっても5がつかないとわかれば、親としては、チャレンジテストの平均点の高い中学に転校したくなるのも道理だ。これではまるで、越境通学を勧めるような制度だ。
ここ数年間の、橋下氏と大阪維新の会肝いりの、大阪府の教育改革の結果がこれなのだ。学校間格差を広げて子供を競争に駆り立てる政策だ。
ちなみに、公にはされていないが、今回のチャレンジテストで平均点が高いとおぼしき中学校区は、元々地価の高い場所が多い。この差は、これからますます露骨になるだろう。経済格差が子供の進路選択を狭める結果になるのは目に見えている。
ついでに、大阪府の塾は、中学生の生徒を集めたければ、チャレンジテスト対策を充実すると効果てきめんだ。いまの中学生の保護者が、一番悩ましいのは、チャレンジテストの結果に子供の内申点が左右される理不尽さだからだ。学校全体のテスト平均が、その学校の生徒全体の内心点の上限を決めてしまうのであれば、個人の努力ではいかんともしがたい。それでも、少しでもチャレンジテストで点数を稼げれば、その方が有利かもしれない、と誤解している保護者が多いだろう。
実際には、個人でいくらチャレンジテスト対策をがんばっても無駄だ。中学校全体の平均点が上がらなければ、その中学にいる限り、内申点がいくらあっても、高校入試の時の調査書の5段階は、5がつかないかもしれないのだ。簡単にいえば、中学3年間、オール90点以上の成績をキープしていて、部活動や生徒会をがんばっていたとしても、その中学のチャレンジテストの平均点が府内で中の下だったりすると、その生徒は5がつかないかもしれない。
これに対し、元来の相対評価は、その中学校の中で、個人ががんばって好成績をキープし続ければ、10段階の10がつく可能性が高まる。個人の努力で、内申点を上げる可能性がちゃんとあるのだから、がんばるモチベーションになる。
今回の大阪府の教育改革は、一見公正な制度のようで、実は学校間の格差を明確にし、中学生が個人の努力ではなく所属する中学校の差で判断されることになる、ひどい改悪なのだというほかない。
お願いだから、大阪府は高校入試制度を元に戻してほしい。

※参考
http://www.pref.osaka.lg.jp/kotogakko/tyugakusei/

http://www.pref.osaka.lg.jp/attach/6221/00000000/01_housin.pdf
《3-2 調査書
(1) 目標に準拠した評価(いわゆる絶対評価)を平成 28 年度入学者選抜から導入し、各教科の評定に ついては、5 段階評価とする。
(2) 評価対象学年を第1学年~第3学年に拡大する。》

※調査書における目標に準拠した評価(いわゆる絶対評価)について
http://www.pref.osaka.lg.jp/attach/6221/00186834/bessi.pdf
《4月21日に行われる、平成27年度全国学力・学習状況調査の正答率のみを各中学校の評定平均の目安を定めることに用いますが、個人の結果が、生徒一人ひとりの調査書の評定に直接結びつくものではありません。
また、別紙に記載されている評定分布については、府内統一の評定平均を算出するためだけに用いたもので、各中学校の評定の割合を、これで確定させるものではありません。》


(注記)上記にそうあるのとは違って、中学校の進路説明会では、上記の評定分布によって各中学校の評定の割合が決められる、というニュアンスで説明されていた。