ロングウッド森林 大島伸洋コーチ スペシャルインタビュー ① | kyonta♡tennis きょんたテニス

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大島伸洋コーチ ロングウッド森林テニスクラブ 

ーーロングウッドが設立されてからどのぐらい経ちますか?

「もう35年ぐらい経つんですけど、ジュニアテニスアカデミーが出来てからは18年ですね。僕が作ったんですけど。たまたまここのクラブのオーナーさんに頼まれてやることになりまして」

ーークラブハウスの1Fにウエイトルームがあるんですね

「たぶん東海地区では唯一だと思います。テニスクラブにウエイトルームがあるのは。もしかしたらあるかもしれないけど、あったとしても少ないと思います。僕は元々ウエイトトレーニングの指導が専門なんですよ。だから最初はテニスコーチになるつもりは全くなくて。トレーナーになろうと思っていて」

ーーコートは全部で何面ありますか?

「アウトドアは9面で、インドアは4面なので、合わせて13面ですね」

ーーサーフェイスの種類は

「うちはインドアもアウトドアも、全部オムニコートです」

ーージュニアのコースについて

「まず、一般クラスと選手コースと大きく2つに分かれています。

一般クラスというのは、下は幼稚園児から中学校、高校ぐらいまでで、テニスを楽しんでやりたいっていう子たちのクラスで、選手コースとは全く違う組織でやっているんです。

僕は選手コースの統括責任者をやらせてもらっているんですけど、まず選抜クラスがあって、あとはだんだんとレベル別に6階級ぐらいに分かれていて、全部で7クラスに分かれています」

ーー選手コースの生徒数は

「60人から65人ぐらいですね。小さい子たちがちょこちょこ増えていくので、正式には何人か分からないんですけど笑、だいたいそのくらいです」

ーー選抜クラスはかなり本格的にやっているクラスなんですか?

「そうですね。全国大会に行くような子たちです」

ーー選抜クラスはいま何人くらいですか?

「いま選抜は25人ぐらいですね」

ーー何年生が対象ですか?

「メインは中学生ですね。高校に入ると部活動が大変で。日本は主に部活動を中心にやっている子たちが多いので、どうしても人数が減っていきますね。他のテニススクールも中学生の方が多いと思います」

ーー高校のテニス部に入ると、今までと同じようにテニススクールに通ったり、他の大会に出づらくなるというのは正直ありますか? 

「ありますね」

ーーやっぱり高校のテニス部としては自分の学校に勝ってもらいたいから、強い生徒に出てもらわないと困るというのがあるんでしょうね

「そうなんです。日本ていうのはすごく特殊な環境なんですよ」

ーー以前、45日間ルールというのがあるっていう話を聞いた事があるんですけど、今はもう無くなったそうですね

「それが実は、ちょうどここにトレーニングに来ていた選手に対して作られたルールで、最初は45日間じゃなくて60日間だったんですよ。

彼が出ると、ある高校が勝てなくなる。彼が出なければその高校が有利だと。だから、彼を出場させないために、年間60日間以上学校を休んで遠征に出た選手はインターハイに出てはいけませんっていうルールを高校体育連盟が勝手に作ってしまったんです。それで、その選手は南米に遠征に行っていたので、インターハイに出られなかったんですよ。

でも、年度をまたがって60日っていうのはおかしいだろう、1月からじゃなくて4月からの適用が妥当だろうという話になったんですね。ところが、4月からの適用だとフレンチオープンとウィンブルドンの間にいったん日本に帰ってくれば60日には引っかからないからまずいと。実はもう一人そういう選手がいて、その選手も4月からの適用だと引っかからないから、じゃあ、45日間に短縮しようっていう事になって」

ーー何なんですかそれ笑

「笑えるでしょ?後づけでそんなルールを作るって卑怯じゃないですか?学校の部活動だから、教育の一環だからと。それなのにインターハイの開会式で「この大会を通じて世界へ…」って言っていたりする訳ですよ。矛盾してますよね。で、今はどうしているかと言うと、団体戦ていうのを増やしたんですよ。団体戦を多くして選手を拘束する時間を増やしたんです」

ーー考えましたね 一人だけ抜けるとか簡単に出来ないようにしちゃったんですね

「しちゃったんです。ひょっとしたら今後、中学生もそういう大会になるかもしれない。実は学校の部活動を指導している先生は初心者が多いんですよ。テニスの経験も無い、コーチの経験も無い、そういう経験が浅い人たちが全ての実権を握るんです。ダブルスのパートナーを決める事だったり、団体戦で勝たせるために2ヶ月間ダブルス以外練習させないとか。おかしくないですか?それで個人の能力を伸ばすって不可能ですよね。

だけど子供たちからすれば、全国選抜に出るとか、インターハイに出るっていうことが進学にも直接影響する事をみんな認識しているので従わざるを得ないという状況なんです。ですから、民間のテニスクラブで高校生を引き受けてちゃんと指導するっていうのはなかなか難しいんですよね。結局上手くいかないんですよ。でも、学校の大会に部活動無しで個人の名前だけで出るっていうのもおかしな話で。要するに日本でテニスをやろうと思ったら、2つに1つ、結局どちらかを選ばなきゃいけないんです」

ーー子どもたちの方に選択肢が無いですよね

「ここに来ていた高校生なんですけど、試合が終わった後、まず学校のテニス部の監督にアドバイスを聞きに行きますよね?そのあと学校のコーチに聞きに行って、それが終わってからクラブのコーチに聞きに来ますから、3人のアドバイスを聞かなきゃいけないわけですよ」

ーーそれはちょっと頭が混乱しますよね

「こんがらがっちゃいますよね。彼女のコーチは誰なんですか?って聞かれるんですよ。そりゃそうですよね。その子が順番に話を聞きに行くから。下手するとアドバイスを聞き終わるのに1時間ぐらいかかったりする時もあるし。試合に負けて、泣きそうなのを我慢して、僕のところに来たら一気に大泣きして、泣き止むまで待たなきゃならないとか、そういう状況になったりするわけです。

ちょっと厳しい言い方ですけど、子どもたちから見れば、指導者として信頼がおけるかというと難しいと思います。でも、学校の先生だからということでプライオリティーが変わってしまうんですね。まあ、いろんな不満があります」

ーーもどかしいですね わかっていてもシステムを改善出来ないというのが

「例えば、愛知県だけでもインターハイに2000人出るんですよ。2000人ですよ?1つの県だけで。それで、ルールもよく知らないような子たちからプロを目指している子たちまで同じ大会に出たりしているんです。ですから、育成という視点から考えると無駄に使っている時間が非常に多いということですね。

太郎のお父さんのポールさんには、なんでインターハイがあるの?何のためにあるの?って聞かれましたけど、彼からするとアメリカには全米高校選手権なんて無いですし、ITFという世界基準で、それしか無いわけです。ITFに出て、ポイントを取って、強い子はランキングがどんどん上がるし、基本的にはITFの大会に出るのが普通ですよね」

ーー日本にはITFのジュニアの大会って無いんですか?

「ありますよ。ありますけど、日本はインターハイの方が圧倒的にネームバリューが上なんです。日本でやっているITFのジュニアの大会は、いま6大会あります。グレード5というのが4大会、それから名古屋のジャパンオープンと大阪のメイヤーズカップですね。でも、インターハイに出ている8割~9割ぐらいの子は、おそらくそういうITFの大会を日本でやっている事すら知らないと思います。

とにかく目標はインターハイに出ることだけなんです。そのための大会が年に2大会から3大会あって、そのために部活動をやっている。僕らの時代からやっているシステムが今もずっとそのまま残っているんです。いくら日本でITFの大会をやっても、ITFの大会に出る子たちには、じゃあそっちを頑張りなさい、でもそのあとの事は知らないよって言われたりするわけですよ。だからインターハイを選ばざるを得ないというか。

本当は高校生ぐらいが一番力をつける時期なんですけど、下手すれば2面しかなくて、ラインもよくわからないようなコートで、部員が40人も50人もいるような環境と、専門的に選手を育てようという環境を比べて、それでも高校を選ばざるを得ないという不思議な状況にあるんですよ日本は。それは地方に行けば行くほどそうです。ほとんどの高校生は民間のテニスクラブじゃなくて部活動をやって、それがテニスだという風に思い違いをしているんですね」

ーーそういう環境だとせっかく才能があっても外に出て行かれないですよね 

「はい。僕は今、高校のテニス部のコーチもやってますけど、モチベーションを持てって言っても無理なんですよね。レギュラーになれなかった子たちはもう諦めてしまって、だいたい大学に入るとテニスを辞めちゃうんです。続けられないんです。

アメリカの大学だと、スカラーシップ(奨学金)を貰ってテニスを頑張るっていう、ステイタスも高いですけど、日本はそれが非常に低いものですから」

ーー全く違いますよね。アメリカだと高校卒業後にプロ登録するか、大学に行って卒業と同時にプロに転向するというのが主な流れですけど、学生リーグ出身の選手はフューチャーズもチャレンジャーでも充分戦えると思います

「それはもう、ジュニアの段階から世界基準の環境でやっているんだろうし、高校でテニス頑張ろうと思えば当然テニス専門のコーチが教えるし、自分でそういう環境を選べるじゃないですか?でも、日本の子たちはそれが選べないっていうことです。選ぼうと思っても選択肢が無いから。

僕らコーチが目指しているのは、小学校1年生から、まだまだ未熟だけれども、ちっちゃい頃から育成していって、なんとか世界というものを経験してもらって、あわよくば高校進学する時にそういう道へ進んでくれないかなと思ってやっているんです。テニスを出来るだけ長く教えたい。

でも、僕らの方がはるかにテニスの経験や知識を持っていても、それを指導に結びつけるチャンスがだんだん減っていくわけです。それは正直言って非常に残念なことです。僕は以前、それをなんとかして変えようと思ったんだけど、これは日本の教育システムのこともあるので難しいですね」