書評「ブラック・プロパガンダ―謀略のラジオ」米国というより”コミンテルンのブラック・ラジオ”か | ScorpionsUFOMSGのブログ

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前回、『チャンネル桜とコミンテルンのブラック・ラジオと田母神事務所問題』
http://amba.to/2auZXY5 
という記事の中で本書「ブラック・プロパガンダ-謀略のラジオ」を紹介したが、今回は純粋な書評として。
本書の内容はいろんな意味で大変興味深かったのでご紹介したい。
「革命のインテリジェンス」を読んでいたので、さらに面白さが倍増した。
 
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ブラック・プロパガンダ―謀略のラジオ 山本 武利
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(本書書評より)
オーディエンスがソース(情報の山所)を確認でき、メッセージも正確性、真実性が比較的高いものをホワイト・プロパガンダというのに対して、本書の題名であるブラック・プロパガンダとは、非公然のソースから出た作りごと、にせのメッセージを敵国のオーディエンスに伝える活動のことである。
本書は、CIA(Central Intelligence Agency:アメリカ中央諜報局)がアメリカ国立公文書館で公開してきたOSS(Office of Strategic Service:戦略諜報局)の資料を丹念に収集、駆使して、第二次世界大戦期におけるアメリカの対日謀略のブラック・プロパガンダ、特にブラック・ラジオ活動の足跡を明らかにしようとしたものである。
(終わり)
 
ちなみに、このアメリカの“ブラック・ラジオ”には日系一世の“アメリカ共産党員元幹部”や日本共産党の“野坂参三”らが深く関与していたそうで、“アメリカの”というよりは、むしろ個人的には“コミンテルンのブラック・ラジオ”という趣の方が強いのではないかとすら思える。
実際に、当時の描写としてアメリカ白人には日本人の心理が理解できないことが多く、少なくとも放送内容については、アメリカ共産党員元幹部の日系人や野坂参三ら現場の発言権が強かった様子が窺える。
 
■アメリカよりも進んでいた日本の謀略放送
さらに目を引いたのは第2章の「日本に刺激されたアメリカのブラック・ラジオ」というタイトルだ。
タイトルから想像されるとおり、戦時中のある一時期までは日本の方がプロパガンダ戦において、アメリカよりも「進んでいた」というのだ。
少なくとも、今の感覚で言えば「日本は謀略戦、情報戦に弱い」というのが当たり前になっていると思うが、戦前・戦時中は決してそうではなかったというのは驚きを禁じ得ない。
とはいえ、日露戦争のときには日本も「明石工作」を成し遂げていたわけだから、昭和初期の段階でも一定のレベルを有していたとしても不思議ではない気がするし、アメリカ共産党元幹部の日系人や野坂参三らが、そもそも「プロパガンディスト」として高い能力を有していたがために、イデオロギーは黙認され(当時ソ連は同盟国だったので、共産主義に関する縛りが”緩かった”というのもあると思うが)、米国に”徴募(リクルート)”されたというもの辻褄が合う気がする。
  
■ブラック・ラジオは影響力行使者か
最近の個人的なオススメ書の一冊は「革命のインテリジェンス(佐々木太郎)」なのだが
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「革命のインテリジェンス」では基本的には「個人単位」での影響力行使者について考察がなされている。
これはこれで、大変有意義な分析・考察なのだが、今回のブラック・ラジオの製作者集団のような「アメリカに徴募され、アメリカの指令を受けて対日謀略放送を行う、コミンテルン出身者の日本人(日系人)集団」などはどのような扱いになるのだろうか。
 
いわゆる直接的にソ連から指令を受けているわけではないが、主義主張は共産主義そのもの、もしくは近いものを有しており、自ら望んで参加した者だけではなく、やむに止まれず強制されて参加した者もいるとはいえ、日本に対して謀略放送を仕掛けている点では、「影響力行使者」の範疇にいれてもおかしくない気がするが。
 
色々な本を読むと点と点がつながり、さらに疑問が湧くと言う点で興味が尽きない。
 
PS:日本の謀略放送については筆者の別の著書「特務機関の謀略-諜報とインパール作戦」で触れられているらしく、本書ではほんの触り程度しか触れていないが、機会があれば、「特務機関の謀略」も読んでみたいものだ。
 
ちなみに「明石工作」についてはこちらの記事に詳しい
(以下参考)
もう一つの見えない戦争ー世界は情報戦の中にあるー
http://asread.info/archives/1551
 
もう一つの見えない戦争ー間接侵略とはなにかー
http://asread.info/archives/1666
 
もう一つの見えない戦争ーインテリジェンスで盛衰した日本ー
http://asread.info/archives/1665
 
もう一つの見えない戦争-日露戦争の英雄・明石元二郎-
http://asread.info/archives/1822
 
もう一つの見えない戦争-間接侵略の金字塔・明石工作に迫る-
http://asread.info/archives/1824