豊洲市場の地下水位分布の変動マップ-3日間で地下水がどのように低下したのか | マスメディア報道のメソドロジー

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豊洲地下水位マップ20161006



豊洲市場の地下環境を正常に保つためにも、今夏の多雨によって上昇した地下水位を早期に低下させることが重要です[記事「豊洲市場の地下空間問題の最大の問題点」参照]。豊洲の地下水位観測結果が公表されて以来、3日が経過しました。現在データとしては10/3から10/6までが公表されています。

東京都地下水測定結果

ただし、この表データでは、実際にどのような地下水分布であるのかをイメージすることは非常に困難であると言えます。そこで、[前記事]では【地球統計学 geostatistics】という空間統計学のメインストリームに位置づけられる方法を用いて、10/3の地下水位の空間分布を推定しました。本記事では、この続きとして、3日間で地下水位がどのように変化したのかということについて見て行きたいと思います。

さて、前回記事においては、地球統計学による地下水位の推定結果をそのまま表示したため、遮水壁外の外挿部分まで図に含まれていて、少しばかり見づらかったと思います(逆にこの図を見ることによって、遮水壁が効果的に機能していることがわかることも事実ですが・・・)。

豊洲地下水位分布の推定マップ20161003

そこで、下図に示す遮水壁の外部をマスキングすることで、必要部分のみヴィジュアライザイションしました。

豊洲遮水壁

また、測定不能だった7-6孔について、周辺孔の地下水位の変動の傾向を参考にして、10/3段階で水位5.1mであったと仮定して下図のように10月3日分の地下水位の推定マップを新たに作成しました。

豊洲地下水位マップ20161003

そして、同様の方法で2016年10月6日分の地下水位を推定したものが次の図です。

豊洲地下水位マップ20161006

この2つの図を見比べると、地下水位は低下する傾向にあることがわかりますが、実際にどの部分が低下しているのかを見極めることは困難です。そこで、2つのマップの地下水位の差をマッピングしてみました。

豊洲地下水位変動マップ20161003-06

このマップにおいて色の薄い部分が地下水位の低下量が大きかった部分、すなわち揚水による水抜きが機能した部分です。その一方で色が濃い部分は地下水低下が少ない部分であり、特に5街区の東側と7街区の西側ではほとんど地下水低下が認められていません。

現在、地下水管理システムが本格稼働していないので、どの場所でどのような揚水が行われたかは不明です。ただし、各所で地下水位の低下が認められることから、地下水位管理システムを本格稼働させれば、所定の地下水位(A.P.1.8m)に早期に低下できる可能性は十分にあるものと考えられます。

なお、アニメーションで表現すると現在の地下水位と変動の状況がよくわかるかと思います。

豊洲地下水位変動マップ20161003-1006

今回の豊洲のケースについては、一部マスメディアが不確定要因に対して最悪のケースを理不尽に想定して風評被害を造りました。このような悪意ある第三者に対しては、情報公開を通して不確定要因を明らかにすることが重要です。今回の地下水位についても、単なる表だけではなく、都民が平易に理解できるような表現での情報公開を期待するところです。

10月中旬からの地下水管理システムの本格稼働によって早期に地下水位が低下することを期待しています。