UTMF 無事ゴールしました。44km 8:07で816位。

中断やレスキューなどいろいろなことがありました。

参戦記と、大会の対応の考察です。

 

 

 

参戦記

UTMFの週末は、直前に台風は過ぎたものの、秋雨前線に雨雲がなだれ込み、大荒れでした。

 

大会前日22日にスペイン人の招待選手 Daniel Perezさん(彼はSTYで結局11位になりました。)を品川でPick Upし、河口湖へ。登録会場は雨が降ったりやんだりで人はまばらです。

会場から1km先の山岸旅館というところに宿泊。

先週からの風邪が完全に回復しきれていなかったですが、経験上治りかけは走って体温あげると回復したりするのでそれを期待します。

 

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23日、大会当日。SNSが流れてきて「富士吉田市が大雨警報で中止判断を検討中」とのこと。外を見ると雨が降ったりやんだりしています。

とりあえず11:30にドロップバッグを置きに会場に行き、様子を見ていたところ、開始を15時に延期するとのこと。

近くのフランス料理屋ロマランで、レース前とは思えない優雅なランチをDanielと食べながら待機します。安くてアットホームで美味しくてお勧めです。

 

そして14:40。鏑木さんがA3まで(48km)の短縮コースに決定したことを発表。

どよめきとため息が起こります。

 

しかし、鏑木さんの「すみません!」という言葉と涙に、多くの選手が

 

「一番つらいのは鏑木さんだ」

 

と思ったことでしょう。

誠意のある、心から感情の入った言葉は胸にささります。私ももらい泣きしそうでした。

 

のちに走ってみた感想としても、あの悪コンディションではレース短縮は正しい判断だったと思います。

 

さて、大会開始直前にお手洗いに行った関係上、最後尾に。

 

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そして、15:00スタート。

 

狭いゲートと、横に鏑木さん、六花さんがいるのでハイタッチ行列も重なり、ゲートをくぐるだけでも数分かかります。

しばらく湖畔沿いの狭い歩道。クランクの度に渋滞してしまい、ほとんど抜くこともできません。

 

そして、湖畔からトレイルに入るところで噂の渋滞。

車がこないタイミングに10人くらいが徐々に道路を横断するので、ものすごく時間がかかります。20-30分くらい。写真は道路横断待ち。

 

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そして渡った後も、狭いトレイルの登りの渋滞。ここも殆ど動かないようなペースで、30分は余裕でかかります。

 

 

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ここの渋滞は、ロードをきちんとマラソン大会のように封鎖するか、Wave Startにするか、人がばらける区間をそこまでにつくるなど対策ができる部分だと思いました。

 

スタートから8km位登るとようやく走れる間隔になってきます。そして足和田山の下りに。既に雨でズルズルの斜面で多くの人がてこづっていましたが、私の好きなタイプのズルズルダウンヒルなので、一気に加速していきます。

 

1km程調子よく下ったところで、何と女性が血を流して座って泣いています。

急いで止まって、足を見たところ大きく腫れています。大きく転倒して、体中を打撲したもよう。

取り急ぎマッサージクリームを塗りつつ、固定できるテーピング(伸びるやつではなく白いもの)を持っていないか周りに声をかけたところ、運良くある女性がもっているとのこと。

さらに介護経験がある方だったのでしっかりと固定してもらっている間に、大会運営に連絡をします。

 

次の休憩所(W1鳴沢)まで約3km。すでにあたりは暗くなり始め、雨も少しずつ強くなってきています。

幸い骨は問題ないようで動ける状態になったので、ザックを持ってあげて、もう一人救護に入ってくれた男性と一緒に担いだり、肩を支えたりしながらゆっくり進みます。

 

結局3kmに1時間30分もかかり、1380番という本当の最後尾になりました。

 

緊急救護はお互いさまなのでまったく構わないのですが、このエイドで、その女性が「少し動けるようになってきたのでゴールまで行ってフィニッシャーベストがほしい」と言い出したので、「遭難して救助されたのに、また遭難するつもりですか?」と思わず怒ってしまいました。

アドレナリンで痛みが和らいでいるのでそう思ったのでしょうが、手を借りた時点で失格だということ、そして一人で動けないほど負傷した状態で夜の雨の山に入っていこうとするなんて、遭難したという自覚がなさすぎます。

 

レースだけでなく、登山家として失格です。

 

その女性のサポーターの人もW1エイドに来ていたので、あとは彼女の判断に任せることにしました。

 

そこからA1 精進湖エイドまでは下りのロード 7km。このことで気持ちがモヤモヤしたまま進みました。

 

エイドは既に多くの方が出発した後で、少し寂しい雰囲気。

 

エイドのおもてなしトン汁は美味しい!思わず3杯も食べました。ここでさらにレースが短縮されてA3より3km手前のあさぎり高原道の駅になったことを知ります。(一部の人はSNSを受け取ったようですが、私には来ていませんでした)

 

エイドを出発して少しロードを行くと、またトレイルに入ります。トレイルの登りはかなり渋滞していました。

雨はかなり強くなり、視界も悪い状態。抜こうにも斜面がズルズルしているので、あまり横に出ることもできず、仕方なくずっとついていきます。

 

そして下りになると、大雨で完璧に崩れた斜面になっています。一歩歩くごとに1m位ズルズルっといく場所もあります。多くの人が動けなくなっていたり、しりもちをついたり転んでいました。一部は頭から転んでたりします。

このくらいで戸惑っている人たちの多さとスキルなどを考えると、天子山脈の手前でレースを中断したのはよい判断だと思いました。

 

ここの区間で150人以上抜いたようです。

 

しかし、ここでも倒れた人がテーピングを借りていたりしていました。

借りたら失格なんだけど、自覚はあるのだろうか。。。登山をしているということ、そしてルールに対して意識が低い人が多くなっている気がします。

 

21:40 A2の本栖湖エイドに到着。

 

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A2エイドでは湯葉丼を3杯食べます。本当に美味しい。

全部のエイドのおもてなし、食べたかったなぁ、、、と思います。A4など、選手たちが来ることのないエイドのボランティアのことを考えると、なんだか涙が出そうになりました。

 

A2エイドを出るときには雨はさらに激しくなります。iPhoneでメッセージを打とうにも、雨が激しすぎて画面が一瞬でびちょびちょになり反応しませんでした。

ロードを数キロ進むと最後のトレイルに。もう泥んこ祭りです。どうせ靴の中までびちゃびちゃなので水たまりの中を走っていきます。

少し体調が悪い人が出てきているのか、フラットでも歩いている人が多く、ここでも抜いていきます。

 

そして最後は下りのロード。まだまだ足が残っているのでキロ5分くらいで突っ込みました。

 

朝霧高原 道の駅に入ると、なんとFinishゲートがあります。いや、素晴らしい。

鏑木さんの決断と対応は迅速だったと思います。

 

23:07 ゴール。8:07で順位は816。W1では1380番だったので、30kmで600人近く抜いたようです。

 

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ゴール会場にはなんと富士宮焼きそばまであります! ありがたくいただき、そのまま送迎バスへ。スタート会場の大池公園まで40分くらいかけて戻ります。

 

STY出場するか悩みましたが、このトレイルの状態とまた雨が降った時のことを考えてあきらめました。

 

大池公園でフィニッシャーベストとデポを受け取り、目の前のロイヤルホテルのお風呂へ。正直、更衣室はドロドロ状態で、あまり洗った気はしませんでした(笑

洗い場待ち渋滞はまさにカイジのモコモコ状態でした。

 

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一番のネックは、そのあと泊まる場所は予約していなかったので、車の中で震えながら寝たこと。寝袋持ってくればよかったなぁ、と思いながらサバイバルブランケットにくるまりました。

 夜中は晴れて月が見えました。

 

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翌朝、DanielのSTY出場を見届けて、ふじやま温泉に入りました。

13時を過ぎたあたりで、雨足がまた強くなり、遠くに雷雨が見えたことで、あ、STYも中止だな、と感じます。

 

結局、Danielは11位と早かったので40km地点まで行けて、トレイルもそこまで悪くなかったようですが、ほかの出場選手の話を聞くと膝まで水につかったなど、UTMFよりもひどい状況だったようです。

 

 

大会の対応について

 

全体的に、大会運営の判断(UTMF短縮、STY途中中止)は正しかったと思います。そして対応もよかった。

運営者だけでなくボランティアの皆さまの対応に頭が下がります。

 

唯一問題があるとしたら、そもそも代替ルートをUTMBのように設定していないことだと思います。

 

UTMBではそもそもトレイルルート自体が普段からトレッキングルートとして成り立っているので全体的に整備されています。それでも、10kmおき位に代替ルートが設定してあり、一区間のトレイルがだめでもロードで次の街に行って続行できます。このアプローチは、2010のレース中断を受けて、さらに改善されています。

 

しかし、UTMFのトレイルは登山ルートとしてもマイナーで狭いところも多い。必然的に渋滞が起きたり、落石や崩落で通れなくなる可能性がたかくなります。日本の山のトレイルの特徴を考えても、ハセツネなど1000人を超える人数では渋滞が起きるケースが殆どです。

 

そういった事情を考えると、「悪条件でもつなげられるロードベースのルート」を最初に設計し、それにオプションとしてトレイルを足していく。という発想でルートを作り直す必要があると思います。

 

その結果、ロードだけだと150km、トレイル含めると200kmのようになるかもしれない。(逆もしかり)

 

しかし、トレイルベースかつ100マイルという距離ありきで設計してしまうと、やはり天子山脈など天候に弱い場所を組み込まざるをえなくなり、中断などのリスクが高くなってしまいます。

そして中断・中止は、直前の判断になりやすいので混乱が起きたり、やはり参加者のがっかり度合は高い。

 

ウルトラトレイルシリーズは、海外からの参加者も多いので、やはり中断することは避けたいところ。外国の方とかなり話しましたが、誰も大会の対応を責めないものの、やはりがっかり具合がものすごいです。

まずはレースとして中断する可能性を少なくするためにも、今回の教訓として、ロードでの代替ルートをぜひ検討してほしいです。

 

また、そのためにも、もっと多くの自治体と道路の使用許可をきちんととってほしいです。

最初の河口湖畔の歩道渋滞と、道路横断のための30分待ちはさすがに興ざめです。

ロードを開放できれば、かなり走力に応じて分散できます。富士登山競争はかなりロードが長いですし、WSでは最初のゲレンデ登り10kmをしてから、細いトレイルになります。UTMBでも最初にロードを走る区間があり、やはり細いトレイルに入る前に結構分散されます。渋滞箇所を見極めて、そこまでに分散する仕組みはコース設計に必要です。
 

富士吉田市長も大会挨拶にきていましたが、ぜひもっと大きなロード使用許可をUTMFに与えてあげてください。事故防止にもつながります。

 

そして、最初の河口湖周辺のロードだけでなく、「超長距離マラソン大会」として代替ルートを全体的に使用許可をとっておければ、柔軟に対応できるのではと考えてます。

 

ロードの使用許可(歩道の場合どうなるか、など)についてあまり詳しくないですが、この辺りの調整に私も協力して、来年をよりよい大会にしたいなと思うところです。

 

また分散という面では、ウェーブスタートも有効です。エリート選手、100マイル完走経験者、完走経験なしで分けるだけでも大きく変わります。より細分化するならフルマラソンのベストタイムもいい目安です。

 

代替ルートの設計、道路の使用許可、ウェーブスタートなど分散させる仕組みの導入により、より良いレースになると思っています。

 

参加者の反応について

 

最後に、諸々の参加者の反応について。

 

STYをなぜスタートさせたのか?というクレームもあるようですが、こどもの国が雷の危険が高かったためスタートさせたとのこと。想像以上の悪条件ですね。

 

また、進む、戻るの判断についても意見が色々あるようですが、私の考えは、どれも自己責任だと思います。

大会が「行け!」と軍隊みたいに強制しているわけではないわけですからね。

危ないかな?と思ったら、現場にいる自分が、自分の能力と環境から自分で判断するしかない。(津波の話と似ていますね。。)

また、周りが先に進んでいても、自分の能力を超えていたら素直に認めて離脱する。そういった柔軟さが登山では必須ですし、レースでも常に考えるべきだと思います。

 

レースだからとはいえ、無謀過ぎる人もいた気がします。雨の泥道レースだからといい頭から転ぶようなことは登山として問題ありです。それで大けがしたら遭難につながりますから。今回たまたま救助した女性も、遭難した、という自覚が少ないように思えました。

 

トレイルレースも登山です。

 

「まずは遭難しない」、「自己責任・自己対応」という登山の鉄則を、レース参加者はもう一度考えるべきだと思います。

 

ごみを捨てるような輩はほとんどいないと思うので、次はぜひこの辺りの啓蒙活動をしていくフェーズなのではないかな、と思いました。

 

 

色々と考えさせられることの多い今年のUTMFでしたが、まさしくトレイルレースが揺籃期から成長期に移りつつあるからこその問題かと思います。

 

UTMFは日本を象徴するビッグトレイルレースです。

 

UTMBをただコピーしようとするのではなく、ぜひ日本らしい、そして日本で実現可能なトレイルレースとはなにか、という視点から、よりよいレースとなっていくことを心から願っています。