世界チャンピオンだけの経験だけでは開発ライダーにはなれない。

 

僕は、多くの世界チャンピオンのマシーンを開発をしてきた。世界チャンピオンで誰一人として開発できるライダーとは出会うことが無かった。しかし抜群のセンサーとマシンを操る力を持ってはいる。チャンピオンマシーンは個性がある中で上手く仕上がっている。

 

現役と開発ライダーの違いを例えれば、ワインを試飲するソムリエとワインを作るワイナリーとは違う知識が必要であるように,バイク作りも全く違った知識が必要になる。両者には共通点は多くはあるが求める物が違う。

 

ソムリエと世界チャンピオンは、繊細なセンサーを持ち、瞬時に判断ができる事を磨き上げた人。

ワイナリーと開発ライダーは、繊細なセンサーを持ちながら資質を読み取り先を読める事を磨き上げた人。

 

レースを参戦しているライダーは、メカニックから毎回どうしたいと向上を求めて聞かれると、自分の好みに突き進む事になる。すると個性的なマシーンになる。その個性的なマシーンを毎回レースとテスト走行で向上を求められ個性が突き進みずぎてバランスが壊こわれるて行く。前のブログで書いた料理と同で片寄った物になり世界チャンピオンのマシーンが壊れていく場面を何度も見た。

 

片寄り過ぎたマシーンはどうなるか。片寄った料理と同じで少々の変更では変わらないので、コース別の問題に微調整では対応が出来ずに、コース別に違うフレームにしなくてはいけなくなる。

 

逆に上手くバランスが取れているマシンは、コースが変わっても各部分(旋回、グリップ、ブレーキ、接地感、他)が変更した数値にリニアに変わるので微調整で対応ができる。

 

昔、昔の話しですが、世界選手権で一人はブレーキング重視で、もう一人はコーナリングスピード重視。同じマシーンで、この二人の開発をした事がある。これは、全く逆の開発になる。僕が重視したのは、二人に好みに突き進ませない事。二人がお互いに乗り換えてもベストタイムから0.6から0.7秒落ちで走らせる事が出来き、なおかつお互いの意見が乗れないとは言わないマシーンの範囲で納める。片寄り過ぎた長所は偏り過ぎや短所を持っている。

結果は世界チャンピオンと2位でした。それも最終戦で決まる接戦。これぞハンドリングのマシーンである。二台のセットアップの違いは数ミリ。どこのサーキットに行っても、すぐにサスペンションセッティングが出せて走りに集中できた。