日曜は吉祥寺まで。CRESCENDO。
THE CROWNEDというメロディック・メタルの完成度が高かったので、今回も先週のFATE GEARに続いてアルバム「完全再現」であったので、足を運んだ。

まずは、OAのVELATRIA。
定刻に暗転してSEと共に登場。MCでも言っていたが、平均年齢19歳という若さ。歌謡曲的なメロディなど、80年代のジャパニーズ・へヴィ・メタル的な側面がかなり見える曲作りではあるが、基本的にはシンフォニック・メタル。
年齢にしては…と書くのはどうかとは思うが、芯のあるライヴ・サウンドであった。

http://twitter.com/VELATRIA_info

2番手は日本のシンフォニック・メタルでは既にベテランの領域に入るSchonberg(シェーンベルク)。(おそらく、あの現代音楽(調性音楽から無調へ、そして十二音技法を創始したオーストリアの作曲家で、表現主義、音列主義とも呼ばれる)のアルノルト・シェーンベルクから名前を取っているのでは?とどうしても思ってしまうけれど、どうなのだろう?)
BGMで鳴っていたクラシックが終わり、インスト"Back to the Past -前世への邂逅-"がSEが鳴ると、物語を語るナレーションが入る。ヴォーカルのナル嬢はフードを被っていたが、すぐにそれをおろして歌い始める。このトップの"Another Story"ではツーバス連打のラウド感はありながら、ギターよりもシンフォニック・サウンドが大きい感じである。ちなみに、同じくシンフォニック・メタルのCROSS VEINやANCIENT MYTHとは違い、同期でシンフォニック・サウンドを入れている。
2曲目は"ロサ・ヴェルメンティス"…こちらはツーバス多用のスピード・ナンバー。1曲目よりギター・サウンドは前に出てくる。次の"The Phantom thirsts for bloods"でもまたナレーションが入ったが、この曲ではオペラティックな唱法を披露。(ちなみに、これは自分の好みの問題なのだが、オペラティック、ベルカント唱法というのは、声楽において最も真っ当なしっかりとした声の出し方とされているのだが、これがロックのサウンド…殊、へヴィ・メタル・サウンドに乗るというのが(本当に個人的にだが)、どうしてもその2つの乖離があって、馴染めない部分ではある。)
短いMCがインスト曲、"Prophecy~コルベイユは美(は)しく、はかなく"のSEの間にあり、"St.エトワール"。こちらはかなり歌謡曲的なメロディを持っているミドル・テンポのナンバー。そこから、仮面舞踏会のマスクをつけて、"Black Masquerade"。バラード調の前半から激しくなる。さらに、かなりスローな三連の"Moonlight Blues"という小品が続き、またオペラティックなヴォーカルの"Prisoner -砂の城の物語-"へ。パイプオルガン的な音とヴォーカルのイントロから"Celestine Aria -最期のアリア-"。こちらもかなりオペラティックなヴォーカルで、ビブラートも凄い。
またナレーションの入る"Back to Now -意識の復帰-"のSEから速いツーバスの"アルス・ノーヴァ"へ。そしてラストはピアノ・サウンドをバックにした歌のイントロからバンド演奏へと入る"Find My Way -星辰のキャロル-"。こちらではオーディエンスは手を横に振ってリズムを取る。そして、カーテンコールでシメた。
前述した好みの部分以外では、音楽性の幅も大きく、かつシアトリカルな要素も含め独自の世界観をもたらすステージングなど、かなりの完成度のバンドであると思った。それまでよくCROSS VEINと比較される声などがあったのだが、本質的にSchonbergは、より(特にイタリアの)プログレッシヴ・ロックに近いというか、まさに「ロック・オペラ」の側面が大きいバンドであると思えた。
ちなみに、1曲を除いて、今回はセカンド・アルバムの再現となっており、且つアルバムは確固たるストーリーを持ったコンセプト・アルバムなので、かなり演出も凝っていた。

Schonberg@吉祥寺CRESCENDO 9/10
SET LIST:
1. SE:Back to the Past -前世への邂逅- ~Another Story
2. ロサ・ヴェルメンティス
3. The Phantom thirsts for bloods
4. SE:Prophecy~コルベイユは美(は)しく、はかなく ~St.エトワール
5. Black Masquerade
6. Moonlight Blues
7. Prisoner -砂の城の物語-
8. Celestine Aria -最期のアリア-
9. SE:Back to Now -意識の復帰- ~アルス・ノーヴァ
10.Find My Way -星辰のキャロル-
 



http://schonberg.heavy.jp/

3番手はAmiliyah。
前回7/30は、上手のギタリスト、魔女Blagoが旅立つ日であったが、今回から上手にはAmbiiという小柄な女性吸血鬼が出現し、今回が初ライヴである。
いつものように、執事のイムフェン・アク・オティアスさんがスクリーンに登場し、「森の中へようこそ」とナレーションし、バンド名のロゴが出て、SEで"prologue"が流れる。メンバー登場。そして、"innocence"だが、かなり弦楽器陣は暴れまわる。そしてスクリーンにはこの曲のPVが映し出される。
物語のナレーションがあって、"pendulum"。さらにまたナレーションがあり、頭打ちのリズムとメロディアスなヴォーカルの"lost"。次のナレーションは短く終わり、音源化されていない速い"dress"へ。ツインのハモリがサビのバックで奏でられる。続く"serpent"は、途中でワルツのリズムになるのが印象的である。ツインの場面では、Gacci氏、Ambii嬢、Kimi姫という形で並んだ。
また短いナレーションがあり、"lament"、イントロでオーディエンスが手拍子をする"moon"と続く。さらにナレーションの後、へヴィなAメロの"pray"、そして最後のナレーションの後、ドラムのイントロから"ever"だが、遂に小さい範囲だったが、高速サークルが出現!ステージ前方には楽器隊3人が並ぶ。「NEXT SONG IS THE LAST...」とスクリーンに表示されて"fall"。ベースのWester#312氏とGacci氏はそれぞれギターのヘッドからレーザーを発光!
演奏が終わり、執事のイムフェンさんが再び登場して、新メンバーである吸血鬼Ambii嬢を紹介。「みなさん、どこか噛まれてないですか?」と問う。Ambii嬢のギターは、既にバンド・サウンドの中に溶け込んでいるという感じであった。そして、Amiliyahとしては11/4にニュー・アルバムを発売と告知があった。そしてその発売日にこのCRESCENDOでレコ発ワンマンが行なわれる予定であるらしい。

Amiliyah@吉祥寺CRESCENDO 9/10
SET LIST:
1. SE:prologue~innocence
2. pendulum
3. lost
4. dress
5. serpent
6. lament
7. moon
8. pray
9. ever
10.fall

http://amiliyah.com/

トリは、THE UNCROWNED。
昨年末にアルバムを出した新人バンドではあるが、ギターのTakeshiさんは元(と書いて良いのかな?活動停止中なので…。)ACTROIDのメンバーである。ACTROIDというバンドは、2012年の2月にCROSS VEINやFAIRY MIRRORと対バンした時に一度だけ見た事があるが、その時はあまり印象に残っていなかったのだが、今回のこのバンドが始動してアルバムが出た途端、物凄い反響があり、どんなものだろうと聴いてみたところ、90年代的なメロディの歌モノの部分とテクニカルなへヴィ・メタルが絶妙な、いや、奇跡的なバランスでミックスされており、本当に驚いた。新たな形の正統派とも言えるメロディック・メタルであった。
今回はそのファースト・アルバムである「REVIVE」の完全再現ということで、彼らにとって4回目のライヴ(ライヴ回数はまだ少ない。)に駆け付けたのである。ちなみに、現在、ベースのNaokiさん(Takeshiさんの実弟)は脱退し、ElupiAのMatsさんがサポート、ドラムはBALFLAREの松崎さんがサポートである。

BGMには何故か(というのは後でわかったのであるが。)中森明菜の"北ウィング"、"スローモーション"、"TATTOO"、"少女A"とかかっていて(THE UNCROWNEDの新曲もかかっていたということだが記憶にない…。)、"少女A"の途中でフェイド・アウト、SEがかかり、メンバー登場。Shal嬢が現れると大歓声である。
アルバム1曲目の"Shiver"のイントロの短いソロとアーム・ダウンが炸裂し、リズムへ入るところで、「行くよ!」と言って力強く走り出す。アルバム・トップにこの曲を持ってきている事は大正解なのだが、最初に聴いた時、一瞬、普通のメロディック・スピード・メタルなのか?と思ったが、これがさにあらず。独特のアレンジが仕掛けてある。演奏は松崎さんのツーバスがこれでもかというばかりに安定しまくっており、Takeshiさんのギター・ソロ時のポージングもキマっている。もちろん演奏は指板を見つめながら必死という感じではなく、リズムに乗ってリフとソロの境目がほとんどないぐらいに自然にスムーズである。ライヴとしてはかなりリハーサルを積んだようにも見えたが、それは個々のレベルが高いからこそのものがあるだろうと思える。また、音源を聴いていた時には、ライヴでもCDの音源通りにカッチリと完璧に演奏するのかと思っていたが、リズム隊のガッチリした重さはありながら、ライヴならではのエネルギーが物凄い。この部分でも凄く意外で、「おお!ロックンロールしてる!」という思いがあった。
2曲目はPVにもなったタイトル・トラックだが、イントロのベースはただの歌モノではない部分を敢えてアピールするような速弾きがフィーチャーされている。(最初に聴いた時は、「やり過ぎでは?」と思ったが。)Shal嬢のヴォーカルは音源でも少しハスキーな声質を感じていたが、ライヴではよりそれが感じられた…とは言っても、音源と全く違うというほどではない。ただ、多少の音程のふらつきはあるのだが…。このバンドが彼女にとって初めてのバンド経験で、このバンドでのライヴがそのまま今のShal嬢のライヴ経験という事になっているというほど、まだ駆け出しではあるのだが、Takeshiさんが彼女のヴォーカルに惚れ込んだというのは凄く良く分かる。凄く個性的な声なのである。
「皆さんの上に無限の光が降り注ぎますように」と次の"Infinite"をタイトル・コールする。これも速い曲だが、ともかくもメロディの乗せ方が流石である。ソロ後のベースとの高速ユニゾンも素晴らしい。フラッシーなギター・プレイだけでなく、ビブラートなどの表情の付け方もバッチリである。次は重いリズムの"Blu Moon"だが、こちらでは少々ベース・サウンドが大きすぎたような気もした。

ここで、メンバー紹介を兼ねながらのそれぞれのソロ・タイム。まずは松崎さんのソロで、高速のツーバスが炸裂。Matsさんは中間でイングヴェイの"Prophet Of Doom"のソロでも有名な、パガニーニの「24の奇想曲(カプリース)」の最終24曲のメインテーマを超速弾きで披露。これも物凄い。ラストはTakeshiさんのソロだが、そのまま下降するカッティングの5曲目、"Relume"へ。(もちろん、Shal嬢は自己紹介もする。)やはりこの曲でもTakeshiさんは、リズム隊のリズムの上でしっかりとそれを感じて弾いている。
次のMCはTakeshiさんが取ったのだが、結構、そのカッコいいステージングとはギャップのある側面が出て、逆に親しみがわいた。次のシングル「TEARS」のレコ発の日をしっかり覚えておらず、松崎さんに「メモとっとけ!」などと突っ込まれるわ、今回、THE UNCROWNEDで予約した人への特典を自宅に忘れて、リハの後取りに行ったが、結局、入場時には配布出来ず、ライヴ後に物販で配布することになるなど…。(でも、その特典はすばらしく心のこもったものでありましたが。)
アルペジオから始まるへヴィな"Brave My Heart"でも、ソロの後にはベースとの高速ユニゾンがあり、さらにエンディングはベース・ソロになっている。そして、次の"Toward You"!これがまさに90年代のJ-POPを思わせるアレンジとテンポで、個人的には懐かしい雰囲気ではあるが、これをハードなバッキングでやる事でここまでの成功例を見た事がない。そこにはこのShalというヴォーカルの声あってのものであるという事実があると思える。音域は広いとは思えないが、それはハイトーンを要求されるバンドではないであろうし、速弾きもそうだが、より速く、より高くと勝負するのも面白いかもしれないが、それはこのバンドで必要としているものではないだろう。オーディエンスはエンディングで手を横に振る。
ラス前、「あと2曲、行けますか!」とShal嬢。実際、MCがうまいというわけでもない(素が出過ぎている)のだが、演奏中のアクションや客に対する煽り的な部分はすでに板についている感じがある。イントロの高速ユニゾンが強烈なスピード・ナンバー、"Duello"が始まる。歌の前と間奏とラストにハーモニック・マイナーの上昇下降の連続フレーズが入っているのも、またソロの前半の部分で三連のリズムになるのも、ニクいアレンジである。ラスト、"Unwavering"。イントロではタオル回しを促すShal嬢。どことなくだが、VOLCANOの曲を想起させるイントロのコード進行が印象的なのだが、正統派のメタル・ナンバーである。ソロの前にあるツーバス絡みの16分のキメフレーズがこの曲のポイントだと思う。

アンコールはすぐに出て来て、松崎さんがMC。「もうアルバムからは完全再現という事で全部やってしまいました。曲はありません。次に出す新曲もまだ用意出来てません。でも、アンコールはやります。」ということで、Shal嬢がフェイヴァリットである中森明菜さんの"Desire -情熱-"のメタル・カヴァーを演奏。そう、つまり、最初にBGMでかかっていたのはそのせいだったのである。低いトーンの声質がとても合っていた。

まだバンドとしては始まったばかりで、色々と改善点はあると思うし、Shal嬢もアンコール前のMCでも反省点はあるとは述べてしまっていたが、これだけのファースト・アルバムを作ったバンドである。今後はライヴでの課題をクリアすれば、この音楽性には色々な可能性があるように思える。期待大な新人バンドだと思う。

THE UNCROWNED@吉祥寺CRESCENDO 9/10
SET LIST:
1. SE~Shiver
2. Revive
3. Infinite
4. Blue Moon
5. Drum Solo~Bass Solo(inc:パガニーニ「24の奇想曲」24曲・クワジ・プレスト)~Guitar Solo~Relume
6. Brave My Heart
7. Toward You
8. Duello
9. Unwavering
-Encore-
1. Desire -情熱-(中森明菜のカヴァー)
 



http://uncrownedband.wixsite.com/uncrowned