「株式会社武雄市」との商号の登記は可能か?/地域創生と会社法・商業登記法 | なか2656のブログ

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1.「株式会社武雄市」?
KBC九州朝日放送の11月16日付のニュースサイトにつぎのような記事がありました。

「自治体の名前を社名に使って地方創生に取り組む地域商社が、年内にも佐賀県武雄市に設立される見通しとなりました。松田元社長は、地元の物産や観光を売り込んだり、ビジネスを生み出すためのコールセンターを使われていない市の施設に開設したい方針です。」

他のネットのニュースとあわせて読むと、松田氏は「株式会社武雄市」という商号で株式会社の設立登記を行う方針であるようです。しかしそれは可能なのでしょうか。


(武雄市図書館)

2.会社法から考える
まず、株式会社ということで、会社法から考えると、仮に松田氏らが自分達が公的団体であると偽装するなどの不正の目的で「武雄市」という単語を用いて「株式会社武雄市」との商号で登記申請したら会社法8条1項違反です。

また、「株式会社武雄市」が今後、仮に何か問題を起こしたら、名前を使うことを許した武雄市は「株式会社武雄市」の問題について責任を負うことになります(同9条)。
(神田秀樹『会社法15版』13頁)

3.商業登記法から考える
地方自治法1条の3、3条等に照らすと、市町村や都道府県は地方公共団体という公的な団体が使う名称であることが前提となっています。一方、商業登記法24条14号は、「法令により使用が禁止された商号は登記できない」と定めており、「株式会社武雄市」の登記申請は却下されるのではないかと思われます。
(神崎満治郎『新商業登記法 改訂版』165頁)

この点、専門書を調べると、「公安調査機関」という公の機関に類似する商号の新設の登記申請は公序良俗に反し商業登記法24条10号により却下すべきという昭和53年7月14日付の法務省民事局第四課回答などがあるので、「株式会社武雄市」という商号の登記申請はやはり無理のように思われます。
(神崎満治郎『商業登記・法人登記重要先例集』24頁)

4.まとめ
このように、この株式会社武雄市は商号一つをとっても無理筋です。そもそも、町おこしのために武雄市がコールセンター業務等を行うとしても、まず競争入札などを行い業者の選定を行うべきです。随意契約とするにはそれ相応の理由が必要なはずですが、コールセンター業務など一般的な事業が競争入札になじまないとは思えません。

事業の始まる前から市長と事業を行う社長とが親密な関係では、それは癒着や汚職が疑われます。武雄市は「ツタヤ図書館」たる武雄市図書館の頃から少しも反省していないのではと思われます。

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会社法 第18版 (法律学講座双書)



商業登記・法人登記重要先例集



図書館と法―図書館の諸問題への法的アプローチ (JLA図書館実践シリーズ 12)





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