AO義塾のまわりがまた賑やかなようなので、これまでの経緯を一度まとめておく。

 

今年春、まさに全国高校生未来会議が開催された直後、こんな記事を書いた。

 

・「東大推薦入試が塾に攻略された」は誤解だ

・東大推薦入試の「合格実績」は誰の手柄なのか
 

AO義塾代表の斎木陽平氏は、ツイッター上では以下のように「事実誤認多数」とアピールしていたが、具体的にどこが事実誤認であり、事実は何なのかという説明は一切なかった。

 

 

無視していると、斎木氏から面会を求めるメールがあった。「さんざん取材の申し込みを無視しておいて、いまさら」とは思ったが、面会の日時場所を決めるやりとりに応じていた。しかしまさにそのやりとりと同時並行して、彼はツイッターで私への批判を連投していた。内容が見当違いであるだけでなく、私に通知されるような方法で。

 

 

これは著しく信義に反すると私は感じ、メールでのやりとりを中止し、ツイッター上での公開のやりとりを提案した。するとこういう返事。

 


ここから彼のツイッターでの暴言は止まらなくなった。原稿料はもらっているのか答えなかったら返事はしないだとか、言いがかりを付けてきた。取材の申し込みを無視していたのは自分なのに「おおたさんは直接取材に来ない」など、事実と異なることを連投していた。これがつい先ほどまで「AO義塾のことを知ってほしい。会って話をしましょう」と言っていた相手に対する態度なのかと驚いた。

 

 

 

そこでブログに斎木氏への公開書簡を掲載した。
・AO義塾代表・斎木陽平氏への公開書簡

 

これに対し、最初は「ブログなんて見ない」と言っていたのだが、こちらが定めた返信期限が迫ってくると、掌を返すように丁重なメールが来た。それに対し、私はまたブログに公開書簡を掲載した。
・AO義塾代表・斎木陽平氏への公開書簡 その2

※公開書簡その2でツイッターでの度重なる暴言について私は「水に流す」としており、実際その後は気にしていない。経緯の説明のためにのみ、上記キャプチャを貼り付けておいた。

 

その後連絡はなかったが、後日談をジャーナリストの石渡嶺司さんが書いてくれている。
・東大推薦入試・AO義塾騒動のその後~塾長本人に聞いてみた

 

1次審査に当たる書類選考の時点で8人がAO義塾で対策を行ったとされている。そのうち6人が最終的に合格したことを受けて、石渡さんは「ただ、合格実績が14人ではなく6人としても、それはそれで大したものです」と書いているが、これは「?」である。

 

「誰でも自分の意思で受験ができるAO入試」と「学校の推薦がなければどうすることもできない推薦入試」には大きな違いがあることは忘れてはいけない。

 

東大の推薦入試の枠は各高校に男女1名ずつしか与えられていない。しかも推薦の条件例として全国レベルの活躍など非常に高い条件が示されていた。そして多くの場合、出願の1カ月くらい前になるまで誰が推薦を受けられるかはわからない。それ以前には対策のしようがない。他塾が東大推薦入試対策講座を開設しないのは当たり前のことだ。

 

1次審査の書類の指導を受けた受験生たちも、もともとAO義塾の塾生だったわけではなく、高校の枠を超えて活動する優秀な高校生の一員であり、斎木氏が主宰する高校生イベント「全国高校生未来会議」や「NES」のメンバーとも直接・間接につながっており、そのルートがあったために比較的早い段階で「無料で志望理由書を見てあげるからもってきなよ」という誘いを受けたのではないか。

 

そこを確かめたかったからこそ、私は最初に斎木氏に取材を申し込んだときに、その8名がいつからAO義塾の塾生だったのかを確認しようとしたのだ。しかし「その質問には意味がないと思います」が斎木氏の回答だった。

 

ちなみに東大推薦入試合格者の1人から、私はこんな話を聞いている。彼はもともと高校の枠を超えた活動に積極的に関わっていた生徒で、他校にも全国レベルで活躍する優秀な友達がたくさんいた。自分が東大への推薦枠をもらえることがわかったころ、彼らのSNSネットワークからやたらとAO義塾の無料対策講座への誘いが回ってきたという。しかし付け焼き刃な対策講座が役に立つはずがないと感じ、参加を見送った。

 

また、西日本にある私立高校の教員からは、2015年秋にAO義塾から東大推薦二次試験対策講座の案内が郵送されてきたことを、後日教えてもらった。AO義塾のホームページには、秋田高校出身の東大推薦入試合格者が、学校の先生に勧められてAO義塾の対策講座に参加したとコメントしている。全国の高校の進路指導担当教員宛に対策講座の案内が郵送されたのだろう。

 

こうして、希少な推薦枠を獲得できるほど優秀で、しかも1次審査を通過した受験生を全国から集める。東大推薦入試2次試験のなんと前日に実施された対策講座にたった1回顔を出しただけでも「AO義塾の合格実績」にカウントされるという仕組みだ。

 

他媒体の記事をコピペして最後に「みなさんはどう思いますか?」と書くだけでオリジナルコンテンツとしてしまいページビューを稼ぐ最近流行の悪質サイトの手口に似ていると感じるのは私だけだろうか。

 

AO義塾が掲げる、東大推薦入試以外の合格実績も、同様のロジックでカウントされている可能性がある。息子をAO義塾に通わせていたというある保護者からは次のような情報がもたらされた。

 

「AO義塾には、100人以上FIT入試志願者が集まったと聞きました。息子によると、1次試験の出願書類の段階から、2次の最終合格まで勝ち取ったのは、100人以上の塾生からたった40人だったそうです。しかしAO義塾は、HPやSNSなどで80人以上と明記しています。これは1次試験で受かった人たちを無料で受け入れて1、2回模試を受けさせてということだと思いますが、これは倫理的に大丈夫なのでしょうか?」

 

これが本当なら、倫理的には許されないと私は思う。

 

さらに、今回の週刊新潮2016年12月15日号の記事「「安倍総理」親族だから文科省がエコヒイキするAO義塾代表のペテン」とやまもといちろうさんの記事である。2つの記事を合わせて読むと相互補完的で、問題の全体像が見えやすい。

 

「安倍総理」親族だから文科省がエコヒイキするAO義塾代表のペテン
・「首相夫人はバックドア」安倍昭恵女史の懸念と「AO義塾」の後始末

 

 

週刊新潮には斎木氏に便宜を図ったとされる昭恵夫人のコメントが掲載されている。熱意をもって政治にビジネスに取り組む若者はたくさんいる中で、首相の遠戚であるからと中央省庁までもが依怙贔屓するのはまずいと思うが、それはおいておいたとしても、昭恵夫人のコメントには非常にひっかかる部分がある。

 

意欲のある若者に自分の知名度を利用してもらうことはいいことだと主張しているようだが、その発想自体が危険であることを指摘しておきたい。若者が信用を得るのが大変なのは当たり前で、だからがむしゃらに頑張ってその過程で実力も付けていく。最初から手を貸していたら育つものも育たない。過保護で子供を潰してしまう親と同じ。また、やる気のある若者を応援するのはいいが、その若者が間違ったことをしたときにはしっかり叱ることもセットにしなければいけない。それが大人の責任だと私は思う。

 

といって斎木氏も、年齢的にはもう十分大人なんだが。

 

斎木氏も昭恵夫人もたぶん本当に悪気はないのだと思う。ただ、やっていいことと悪いことの判断が付かないのだろう。似たもの同士で気が合うのかもしれない。

 

ちなみに最近は、小池塾を舞台にこんなこともやらかしたみたいである。

 

・音喜多駿さま・斎木陽平さま 騒動から考える民主主義とは何か。
・【お詫びとご説明】音喜多駿さま・斎木陽平さまとの騒動について

 

ウソがばれそうになると、自分がお世話になった塾を陥れたり、自塾の生徒である高校生のせいにしようとしたり、お世話になっているはずの議員の名前を使ったり、なんかもう・・・。

 

いろいろなことがごちゃごちゃに噴出しているので、整理しようと思ったら、これだけの文字数を使ってしまった。でも結局のところ、斎木氏個人のことはどうでもいいし、AO義塾のこともどうでもいいのである。こういうことが行われてしまうと、受験生およびその保護者が何を信じていいかわからなくなったり、AO入試や大学入試改革に対する健全な議論が阻害されたりという社会的損失があることが問題なのだ。

 

以上。