茅葺き建物を殺した建築基準法22条 | 歴史ニュース総合案内

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 今現在、茅葺き建物が歴史的建築物とみなされるようになったのはなぜだろうか。それは1919年に制定された「市街地建築物法」に端を発する建築基準法が22条で、市街地等防火が必要な指定地域で新しく建物を建てる時、不燃材を使うことを義務付けて、燃えやすい植物性の屋根材(茅や杮、檜皮等)を用いることを国宝や小規模な建物を除いて禁じたためである。

 むろん、指定地域以外なら植物性の屋根材でも良いらしいが、この指定地域がとにかく広いため(一度居住市町村での指定区域を調べてみることを勧めます)、実質的に茅葺き屋根など植物性屋根材の出番は寺院などの歴史的建設物を除いてなくなってしまった。そうなれば、経済的に成り立たなくなるため、茅葺き技術は実体験をもって次世代に継承されなくなった。現代の文化財の屋根には茅葺きにみえても実際は金属製の屋根になっていることが少なくない。防火対策の名のもとで、いわゆる「日本の匠」の最重要クラスの技術が失われたのである。

 とはいえ、近年では緩和の動きもみられ、1993年には国宝や重要文化財に加えて、地方自治体クラスの文化財を修理できるようになったとのことだ。