◎前回のお話



旅行から帰ってきた私と息子はまたいつもの日常に戻った。


それでもいつか一緒に暮らせるだろう…


そう思いスイッチを切り替える。


息子も一緒に撮った旅行の写真を見ながら


『コレ楽しかったね!』


と、思い出話をしてくる。


息子にとって彼といる事が一番幸せだろう…


だからちゃんとご両親にも認めてもらえるようにしっかりしなきゃ!


息子の事も仕事のことも

いつか3人で暮らす日まで…



学校生活は変わらず。


2年生になり定規などを使うようになると

上手く手でおさえて線を引くことが出来なかった。


テストに引いてある線はガタガタだった。


図工の作品もいつも最後まで終わらず


貼り出されることもなかった。


中途半端で終わった理科の実験の道具が鞄から出てくることもあった。


こんなに中途半端で理解は出来ているのか…

このままでいいのか…


何をしてあげたらいいのか相変わらず答えが出ない。



どうしてこの時期に支援学級を使えなかったのか…


どうして誰も理解してくれない環境にいなければいけないのか…


毎日が違和感。



ある日、親子で標語を考える宿題が出た。


『お母さん、これお母さんと考えていいんだって!』


『見せてごらん?』


人権の標語だった。


『じんけんて分かる?』


と聞くと考える息子。


『どんな病気の人もどんなに体が動かない人も肌の色が違う人もみんな同じ人間ですよー、だから分けちゃいけないよってこと。

分かる?』


と言うと


『うん!』


と答える。


プリントには親が中心になって考えても良いと書いてあった。


『じゃぁお母さんが考えてみるか!』


その時に思った私の人権に対する気持ちを標語にした。


息子のように困っている子が増えないように…


子どもたちがみんな同じように生きていけるように…




次の日息子はその宿題を大切に鞄に入れて持っていった。

いつもは終わらないプリントを落ち込んだ顔をして入れる息子とは違う。


私は仕事に行きながら嬉しそうに提出する息子の顔を思い浮かべた。


それから1ヶ月。



その標語は賞をもらった。


私がその知らせを聞いたのは学童のお迎えの時だった。


最初にヨダレのことを指摘した先生がやたら笑顔で話しかけてきた。

今までたいして目も合わせない先生が


『すごいですね!息子くん!

標語で賞もらいましたよ!』


と。


確かに褒められることは嬉しいことだ。


でも…何かが違う気がした。


じゃあ毎日小さなことを褒めてくれたのだろうか…


賞を取るということでこんなにも表情を変えて

今までの息子はなんだったんだろう…



『その標語、私が考えたんです。

人権の標語。

ボーダーラインのない世の中になって欲しいって気持ちを込めて。

ありがとうございました。』


とても違和感を感じた。



いい子って何だろう。


勉強の出来る子?



『いい子は心の優しい子だよな?』


車の中で息子に言うと


『うん!』


と笑顔で頷いた。