中国海軍、「本音を暴露」潜水艦の隠密性悪く「最新鋭艦」も鉄くず | 勝又壽良の経済時評

中国海軍、「本音を暴露」潜水艦の隠密性悪く「最新鋭艦」も鉄くず

放たれた多数の中国スパイ
潜水艦の用をなさない鉄屑
出生率では日本に接近する

「張り子の虎」という言葉がある。見かけ倒しで、実際には強くも偉くもないものの喩えだ。中国海軍の誇る最新鋭潜水艦が、生命線である「隠密性」で著しく劣っており、日米海軍に簡単に潜行地点を補足される、というのだ。この問題は、4月20日のブログでも取り上げたがその後、中国海軍当局がそれを認める発言をしていることが確認できた。

改めて、基礎技術の未熟な中国の軍拡がいかに無謀であるか。財源の無駄遣いであるかを論じたい。強がりを止めて周辺国と協調したほうが、どれだけ中国国民の福祉向上になるのか。それを真面目に考えるべきである。このまま、中国は「軍拡路線」を続けて、保守派と人民解放軍が結託した「産軍複合体」だけが潤っても、国民は疲弊するだけなのだ。

中国海軍当局者の「悩める声」を先ず紹介したい。『大紀元』(5月17日付け)は次のように伝えている。

放たれた多数の中国スパイ
①「近年、海軍力の増強に取り組んできた中国は、深い悩みがあるようだ。中国海軍は現在、約200隻の近代的潜水艦を有し、原子力空母の建設も予定している。しかし、中国人民解放軍総参謀部の情報筋によると、潜水艦の命である隠密性の低さに軍幹部は悩まされているという。同情報筋が『大紀元』に伝えたことによると、軍上層部は潜水艦が内海を離れると、すぐに日米の対潜センサーに捕捉されてしまうため、公海に進入できないことに頭を抱えているという。『通常動力型潜水艦か、原子力潜水艦かまで正確に判別されてしまうので、 日米の探知方法を探るため数年前、総参謀部から多数のスパイが派遣された』と同情報筋は語る」。

②「中国の潜水艦はロシアの製造技術を導入しているが、時代遅れのものが多い。核攻撃を受けた際、米国本土にまで核による報復を加えることができる最新鋭の戦略ミサイル原子力潜水艦『094』型も、設計上の問題が原因で潜行時の騒音が大きく内海から出られない、とカナダの軍事専門誌は報じている。『中国の潜水艦は鉄屑同然。戦闘力がなく、すべての動きが日米に捉えられている。公海にはまったく出られない』と、ある潜水艦基地の幹部が語ったと、他の情報筋も伝えている」。

実に生々しく、中国海軍当局者の苦悩ぶりが語られている。まさに「張り子の虎」なのだ。役立たずの最新潜水艦を保有しても、公海での訓練がままならないのである。情報源の「大紀元」とは、中国政府から弾圧されている宗教団体「法輪功」サイトである。弾圧されている法輪功への同情も手伝い、中国政府上層部からトップ・シークレットが漏れ伝わってくる貴重なニュース・ソースである。中国は予想されているほど一枚岩ではないのだ。

①では、「潜水艦が内海を離れると、すぐに日米の対潜センサーに捕捉されてしまうので、公海に進入できないことに頭を抱えている」という。4月20日の私のブログでは、次のように報じた。「094型SSBNは現在5隻ほど実戦配備され、渤海湾に近い大連海軍基地などに停泊しているという。中国の軍事消息筋は、騒音問題を解決するため、次世代原潜『096』型の開発に入ったようだと語った」。ここで取り上げた点は、完全な事実であったのだ。

さらに、「『通常動力型潜水艦か、原子力潜水艦かまで正確に判別されてしまうので、 日米の探知方法を探るために、数年前、総参謀部から多数のスパイが派遣された』」とスパイを放っている点まで明かされている。数年前であったか、中国海軍の潜水艦が米軍基地のあるグアム島を一周したが、その情報すべてを米海軍によって捕捉されていたことがあった。中国海軍は内心「してやった」と思っていたが、すべては米海軍に筒抜けであったのだ。これも、中国潜水艦の「隠密性」が劣っていた結果である。

上記の私のブログでは、「中国潜水艦は最も重要な能力とも言える静音性(注:隠密性)が低いことだ。技術的にはロシアより10年、米国より20年遅れた水準にある」と指摘した。科学技術力の劣る中国が、逆立ちをしても米海軍に追いつけるわけがない。中国得意のスパイを放ったところで、簡単に「ノウハウ」が分るものでもあるまい。「サイバー・スパイ」も中国の仕業であることを問わず語りに語っている。

潜水艦の用をなさない鉄屑
②では、「中国の潜水艦は鉄屑同然。戦闘力がなく、すべての動きが日米に捉えられている。公海にはまったく出られない」とは、なんともお気の毒である。しかも、核攻撃を受けた際、米国本土にまで核報復できる最新鋭の戦略ミサイル原子力潜水艦「094」型が、渤海湾から公海へ出られないのである。あほらしいことをしているものだと「感心」するのだ。一昨年4月、中国の艦載ヘリコプターが日本の護衛艦に異常接近する事件があった。今から考えると、日本の対潜センサーの情報を得たくて異常接近したに違いない。こうなると、最新鋭の戦略ミサイル原子力潜水艦「094」型は役立たずであり、実戦訓練が不可能であるから「図上演習」にならざるを得まい。これでは「練度」が上がらないのだ。

こんな状況下で、どうやって米艦戦の「接近拒否」戦略を発動できるのだろうか。米海軍によって中国潜水艦の潜水地点を捕捉されるので、米艦戦「接近拒否」戦略は事実上、発動不可能に近いのではないか。2008年、米国とイスラエルが共同でイラン核開発を阻止すべく、サイバー攻撃を仕掛けたと報じられた(米紙『ニューヨーク・タイムズ』6月1日付け)。イスラエルは世界最強の「サイバー戦力」を擁していると言われる。このイスラエルと米国の共同作戦は、中国の「サイバー戦力」にとって恐怖の的になろう。中国が軍事覇権を狙っても、それを阻止する科学技術力を米国は保持している。無駄な小細工を止めて軍拡戦略の大転換が賢明なのである。中国にとっては内政充実が最優先課題である。

ここで、中国海軍の最新戦略を見ておきたい。日米の防衛当局が特に注目するのが中国海軍の遠海機動作戦能力の向上だ。中国海軍は長年、主権・領土の保全と台湾統一を目的とした近海防御戦略をとってきたが、最近は徐々に遠海防衛型への転換を図っている。遠海防衛型への転換になると、潜水艦の果たす役割はきわめて大きくなるに違いない。潜水艦は機動力があって「神出鬼没」そのものである。「神出鬼没」とは、鬼神のようにたちまち現れたり隠れたりして、所在が容易に知れないことを生命とする。最近、各国が潜水艦の機能に注目しているのは、こうした理由からである。

問題の中国海軍の潜水艦では、簡単に相手国側の手で潜行地点が探索されてしまうのだ。これでは「袋の鼠」と化して、わざわざ攻撃してくださいと言うようなもの。中国が近海防御の作戦海域は、沖縄、台湾、フィリピンを結ぶ第一列島線から、小笠原諸島、グアム、インドネシアを結ぶ第二列島線にまで拡張している。利害関係が及ぶ海域での権益確保や戦略物資の輸送ルートの安全確保につなげる狙いでもある。その際、絶大な力を発揮するはずなのが潜水艦である。その隠密性が悪いのでは、全くの無防備に等しいのである。米海軍は口先で中国海軍を警戒する素振りを見せるが、腹の中では笑っているに違いあるまい。目下、中国海軍はとんだ「ピエロ役」を演じているのだ。

米海軍は第一次世界大戦(1914~18年)の途中からドイツ海軍と戦ってきた経験を持っている。その後、第二次世界大戦(1939~45年)では、ドイツや日本と死闘を繰り広げてきた。こうした戦争経験をもつ米海軍を相手にして、全くの近代海軍戦の経験を持たない中国海軍が、メンツだけでの「軍拡」をするのは危険この上ないことである。日米海軍が合同で戦略を立てたならば、総合技術力の差から言っても中国海軍はとうてい敵うはずがあるまい。そうした現実を無視して、中国が「第一列島線」とか「第二列島線」など、太平洋を勝手に自国領海に繰り入れがごとき戦略は自殺行為である。

私は、中国の「軍拡」が中国の運命を狂わせることになると見ている。社会的にも経済的にも「イノベーション力」に著しく欠けているのが中国なのだ。過去のしきたりを後生大事に抱え込んで、改革にはきわめて消極的な民族である。大言壮語(ほら吹き)する割には、現実がそれに追いつかないのである。こうした国家が、軍事的に西太平洋へ割り込む野望を持つのは非現実的なのだ。内部矛盾を抱えたまま「軍拡」を続けたならばどうなるのか。その悲劇的な将来を暗示するデータを、次に紹介しておきたい。

出生率では日本に接近
『北京日報』(5月5日付け)は、「一人っ子政策」をこのまま続ければ、100年後には現在の約3分の1に人口が減り、深刻な高齢化社会に突入する、と専門家の警鐘を伝えている。

③「米スタンフォード大学のジェームズ・リアン(梁建章)博士と米ミシンガン大学の客員研究員、李建新(リー・ジエンシン)北京大学教授が共同でまとめた報告『中国人は多すぎるのか?』で指摘されている問題点である。中国で2010年に10年ぶりに実施した国勢調査によると、合計特殊出生率は1.5を割り込み、人口増加を維持するために必要な合計特殊出生率(女性が一生の間に生む子どもの数)2.1(注:正しくは2.08)を下回っている。 合計特殊出生率が1.5以下ということは、次の世代の人口は今より約30%も減ることになり、長期にわたる人口のマイナス成長期に入ったことを意味する。実際、過去20年間で若者の人口は約30%減少し、人口構成が激変している」。

④「高度経済成長を達成した国では、合計特殊出生率の低下はよくあることだ。例えば、日本も1.2~1.3(注:昨年は1.39)にまで落ち込んでいる。こうした国では自らの危機的状況を自覚し、出生率上昇のための様々な施策を打ち出している。中国は一人っ子同士の夫婦に第2子出産を認めている。こうした夫婦が多いとみられる上海の出生率は、すでに0.7にまで低下している。このままでは高齢化はかなり深刻な状況となり、中国の国際競争力が著しく低下するのは必至だ。報告では、『一人っ子政策を緩和すれば、人口が爆発的に増えるという懸念はない』との見方を示し、政策緩和を訴えている」。

⑤「報告はまた、国連が2011年に発表した『人口予測報告』を引用し、中国が出生率を1.8程度に維持すれば100年後の人口は9億人だが、出生率が1.5を割り込めばこれが5億人にまで減少すると指摘。15歳以下が占める割合は10%を下回り、65歳以上の高齢者が40%以上を占めるという深刻な少子高齢化を迎えると警鐘を鳴らしている」。

通読して感じることは、中国の人口動態がこれから危機的な状態に入る点である。むろん、日本も他人事ではないが、中国の人口が合計特殊出生率1,5を割り込めば100年後の総人口は5億人へ低下するというのだ。当然、インドの総人口を下回る。この時点でなお、「軍拡」をやれる経済的なゆとりなどあるはずがない。今から軍拡資金を社会福祉に回すことが不可欠な選択になるのだ。ここで注意すべき点は、合計特殊出生率で日本(1.39)と中国(1.4台)が大差なくなったことである。中国がいつまでも「人口大国」であり続けることは不可能になったのだ。

中国の社会構造は、私がいつも指摘しているように「環節型社会」である。家族や宗法一族だけを大事にして、それ以外には無関心である冷淡な社会である。いはば「連帯意識」の存在しない社会であるだけに、富裕層は人口減少社会からいち早く他の先進国へ脱出してしまうだろう。後に残された人々は、国家の社会保障に頼らざるを得ない貧民層になるに違いない。

こうしたリスクを避けるには、所得再分配政策を行って一部の突出する富裕階級へ、しかるべき課税する以外に道はないのだ。この分りきったことすら実現できない。それが中国である。既得権益層は、手にした既得権益を絶対に手放さない。共産党政権を精算しない限り、中国の未来が開けないという私の根拠はここにある。共産党政権の抱える本質的な弱点は、人治主義に基づく「差別性」にある。決して農民や工員など働く庶民の側に立つ政権ではないのだ。

(2012年6月12日)


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