法学部で初めて法律を学ぶ方々が,講義の教材として指定される判例集と言えば,有斐閣から発行されている『判例百選シリーズ』が定番でした。私も学生の時,さらには司法試験を受験している際に,『判例百選シリーズ』で法律を学んだ1人です。

 

 

 

ところが,その『判例百選シリーズ』は,時代の流れと重要判例の増加により,各法律につき『百選』ではなく『二百選』,つまり200個を超える判例が掲載されるようになっています。法律実務家からしますと200個の重要判例が掲載されていることは大変ありがたい存在なのですが,初めて法律を学ばれる方々にとっては,各法律につき判例を200個ずつ学ぶ,ということはとても大変なことではないか,と思っていたところです。

 

 

 

おそらくそのような声を受けて,有斐閣から新しい判例シリーズが発行されることになりました。それが『判例50!』シリーズです。

 

 

 

第一弾として発行されたのが『憲法』と『刑法』でして,それぞれの法律につき「最重要判例50件を厳選」した内容となっています。

 

 

 

そして,その『憲法判例50!』に,私が担当させていただいた女性の再婚禁止期間訴訟の最高裁判所大法廷平成27年12月16日判決が掲載していただきました(『同書』29頁)。

 

 

 

早速私も『憲法判例50!』を購入させていただき,一読いたしました。学生時代や司法試験の受験時代に何度も繰り返し読んだ有斐閣の判例シリーズの中に,自分が担当させていただいた事件の最高裁判所大法廷判決が掲載されているのを拝見し,憲法を学び始めたばかりの頃や,序々に憲法の重要性と難しさが理解できるようになってきた頃のことを,懐かしく思い出しました。

 

 

 

また,『憲法判例50!』に掲載されている判例は,その名のとおり憲法制定後70年の歴史の中で出された判例の中で,重要であると考えられた50個が選ばれたものです。その50個はまさに,紙に書かれた活字である憲法に,自らの人生をかけて社会の正義と公平にふさわしい意味を与えようとされた方々の活動の歴史の結晶です。

 

 

 

そんなきらきらと輝く憲法判例の歴史の1つに,私が担当させていただいた判例を選んでいただいたことを,とても光栄に感じています。そしてそのことにふさわしい弁護士としての活動を,今後も継続していきたいと考えています。

 

 

 

この判例は,原告の女性と私との二人三脚で最高裁判所大法廷まで少しずつ歩んで得たものです。判例そのものも紙に書かれた存在ですが,そこには原告の女性の心が込められています。原告の女性に『憲法判例50!』に掲載された話を伝えて,苦労を共にした時間と,感激を分かち合った時間の話を久しぶりにしたいな,と思っています。