去年のちょうど今ぐらいだ。小川は構成で入らせていただている「エレ片コントライブ コントの人7」のネタ作りや稽古の真っ只中にいた(※もうすぐ「コントの人8」があります。チケット好評発売中!)。
 笑いと向き合い、生み出す時間の裏で、小川は深い苦悩と葛藤に喘ぎ、約二年に及んだ結婚生活に幕をおろした。離婚しちゃったのだ。
 早いものであれから一年が過ぎた。話せる範囲で面白いエピソードもあったので、本当はすぐにブログやツイッター等で触れたかったのだが、わざわざ言うことでもないっちゃないし、痛々しく見えたら嫌だし、そもそも誰が興味あんねん的なことでもあり、離婚したことはよきタイミングが来たときでいいだろうと特に触れずにいた。

 触れなかった理由は他にもある。小川は親戚にまだ報告が済んでいなかった。これまた無理に報告するものでもないのだが、小川は父方母方ともに親戚との交流が結構ある。いつまでもしらばっくれるわけにはいかない。それに小川の親戚の中には小川のブログを読んでくれている者もいる。ブログで知ることになるのはさすがに失礼だ。そんな肩肘張らなくてもいいでしょうよ、とも思うが、小川がこのような考えになるのも無理はない。小川は幼い頃から長渕剛が好きで、小川の血には長渕イズムが流れている。先にブログに書こうものなら、

「てめえのちっぽけな自己満足のために、義理を欠いちゃいけねえだろうが!」
 きっと英二さんにそう怒鳴りつけられてしまう。(※英二さん……ドラマ「とんぼ」で長渕剛が演じたヤクザの名前)

 親戚の方々は祝ってくれた。遠いところわざわざ来てくれた。ある親戚は新幹線で、ある親戚はマイクロバスを借りて。

 小川のためにお手数をおかけした人たちだ。生まれてから今日に至るまで、犬みたいな顔をした小川を、犬以上に可愛がってくれた人たちだ。ブログ等で書くのはちゃんと親戚への報告が済んでからが筋じゃねえのか?
「そうっすよね英二さん!」
小川は宙を見つめた。

 離婚したのは2012年の年末だ。すぐそこにはお正月が控えている。父方の親戚で恒例となっている新年の集まりがある。まずは父方の親戚に、離婚からそれほど時間を空けずいっぺんに報告ができるまたとないチャンスだ。にも関わらず小川は揺らいだ。自らが望んでいた機会だったはずだ。
「英二さんすいません! さすがに正月は無理っす! 新年の門出に『離婚しました』なんて言えねえっす!」
 小川は複雑な心境を正直に英二さんにぶつけた。
「ヤスてめえコノヤロー! てめえの親戚がそんな心せめえはずねえだろうこのくそったれ!」

 想像上の英二さんのおっしゃるとおりだ。正月のお祝いの席で言ったとしても、親戚たちは優しく受け入れてくれるはずだ。けどすみません英二さん。

「正月に言うのはなかなかなことっす、なかなかなことっす英二さん……」
 んーとりあえずこの正月は見送ろう。 小川の中でひとまず結論が出た。

 などとあれこれ考えて機会を伺っているなか、この下半期にようやく親戚に報告を済ませることができた。結局、父方の親戚への報告は、新横浜プリンスホテルで行われた、地元の消防団在籍50年を迎えた叔父の地域貢献を称える祝いの席でタイミングが訪れてしまい、正月以上におめでたい席での報告になってしまった。

 親戚への報告もやや難儀だったが、日頃お世話になっている身近な人への報告もまた悩ましい。小川の前に立ちはだかったのは、エレキコミックのお二人だった。

(※「小川、お前去年アレ~・中」につづく)



(叔父を祝う会のパンフレット)