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12月30日松下幸之助一日一話(松下幸之助.COM)

静思の時

 何事も合理的でスピーディなものが尊ばれる昨今、それがスピーディであればあるほど、一方で静思の時というか、ゆったりしたものがほしくなる、これが人情というか、人間の本能的とも言える一つの姿でしよう。だから、これを押さえることは人間の身体や生活を、とんでもなくゆがんだものにしかねないと思います。

 ですから、夜やすむ前、床の上に坐って静かに一日を反省する。やり方はどうあれ、そういう時を持って、一日のケジメをきちんとつけてこそはじめて、そこに安らぎが生まれ、明日ヘの新たな意欲が湧いてくるのではないか。世の中が騒々しくなるほど、そういう静思の時が必要になると思うのです。


【コラム】筆洗

2013年12月29日東京新聞TOKYOWeb
 
▼昨日は門松を飾る人をよく見かけた。門松を立てるのは十三日から二十八日までの間が望ましく、二十九日は、「苦を待つ」「苦立て」につながるので、見合わせた方がいいという

▼三十一日も一夜飾りで望ましくない。三十日も二十九日と三十一日の間で良くないそうで、となると、二十八日が門松を立てるのに適した最後の日ということになる

▼縁起が良いに越したことはないが、忙しい中、本寸法にはいかぬ。<門松を三十日(みそか)の夜に立てしかな>。高浜虚子の句もある。「私の家では、正月の設けというものも、とかく大三十日の晩ぐらいにする…」(『俳句の作りよう』)

▼「紙の門松」。門松の絵を印刷した紙を玄関先に張る。岐阜出身の筆者は子どもの時、門松といえばあれだったが、全国共通ではない。東京では見かけぬ。名古屋、大阪出身者も知らぬという。逆に千葉では「今もある」。高知や岡山では紙の方が一般的と聞く。不思議な分布である

▼高知のある印刷所は昭和二十九年から紙の門松を製作している。松林の保護が目的と説明するが、あの頃、本物はぜいたくだったのか。紙の門松に豊かになりたいと願う、かつての日本人の前向きな熱を思う。しかもあの時の方が幸せだったような気さえする

▼破れやすい紙。気にしない。二十九日でも「苦を絶つ」と読めば、それほど後ろめたくないだろう。


【社説】東京新聞TOKYOWeb

年のおわりに考える 国民生活支える企業に

2013年12月29日

 二〇一三年は賃上げをめぐり政府と経済界が攻防を繰り広げた一年でもありました。そこから見えてきたのは勤労者を物質と見る企業の倫理欠如です。

 政府と経済界、労働界による政労使会議が、企業収益の拡大を賃金上昇につなげていくとの合意文書をまとめました。

 安倍政権の経済政策は金融緩和や公共事業、成長戦略の「三本の矢」で、勤労者の所得増を実現しないと完結しません。目標に近づく合意だけに、安倍晋三首相は「経済の好循環に向けた確固たる土台を築けた」と総括しました。
◆発言ぶれる経団連

 その一方で、主要企業千三百社が加盟する経団連の米倉弘昌会長の発言はぶれています。政労使会議後には「経済拡大の成果を従業員に配分するよう企業に訴えたい」と語ったのに、その後の記者会見では「各社それぞれが判断すべき」と後退してしまいました。

 賃上げの仕掛け人は安倍政権であり、物価が下がり続けるデフレからの脱却が狙いです。賃金が上昇すれば家庭の財布のひもが緩くなるので、企業のもうけも増え、景気がよくなって物価も上がり、デフレから抜け出せる。首相のいう経済の好循環です。

 賃金水準は労使が決めるべきもので、政府が口を出す話ではない。こう主張してきた経済界は、なぜ折れたのでしょう。そこにはからくりがあるのです。法人税額に10%上乗せしている東日本大震災の復興特別法人税を一年前倒しで一三年度末に廃止するという税制の見直しです。

 政府は経団連の求めに応じて企業の税負担を六千五百億円ほど軽くする代わりに、賃上げの実現を迫りました。ここに、自ら負担すべき費用を国などに押しつける企業の性癖がにじみ出ています。
◆危うい「人間尊重」

 かつて経済同友会の終身幹事を務めた故品川正治さんは、早くから「近ごろの経済界はおねだりが多い」と企業経営者に自省を求めていました。米倉会長の一貫性を欠く発言の背景には、おねだりしたがゆえに政府に押し切られたという敗北感があるのでしょうか。

 経団連の企業行動憲章は「安全で働きやすい環境を確保し、ゆとりと豊かさを実現する」と、人間尊重の経営を加盟企業に促しています。それは、企業は生活者と共存共栄の関係にあるという信頼を得られるよう努力することが求められる-との意味でもあります。

 しかし、現実は人間尊重どころではありません。その象徴が労働力を鉄や電力などの原材料と同じように扱い始めたことです。

 明治時代から、企業と従業員は企業のもうけをほぼ等しく分かってきたのに、一九九八年を境に従業員の賃金を削減し、企業さえよければとばかりに、もうけの大半を奪い取るようになりました。日大教授の水野和夫さんは、資本と労働との暗黙の契約を破る「企業の暴走」と言い切っています。

 給与所得者の平均年収は九七年の四百六十七万円をピークに二〇一一年は四百九万円まで減りました。〇四年には当時の自民党政権が経済界の要請を受け、専門職に限られていた労働者派遣を製造業にまで広げる法改正に応じたことで、「人間らしい生活を営める所得層」、いわゆる購買力をつけた中間層を衰退させています。

 非正規労働者は一二年に二千万人を超え、雇用者全体の38%に達しました。四人に一人は年収二百万円以下に抑えられ、消費減退に加えて未婚者増や少子化を加速させました。人として守るべき道からの逸脱であり、倫理の欠如と言わざるを得ません。

 企業は内部留保を三百兆円規模にまで積み上げ、従業員への配分増をためらっています。人件費や電力コストが高すぎるなどを理由に「日本を出ていくしかない」と語る経営トップも少なくなく、残ってほしければ法人税の負担軽減を-などとおねだりもします。

 しかし、悲観してばかりでは将来が暗くなります。建設機械世界第二位のコマツは、海外に進出した生産拠点の一部を国内に戻し、今や生産額の半分近くを日本で稼いでいます。材料費などを海外と総合比較すると国内のコストは必ずしも高くはないといいます。
◆経営者の自負示せ

 国の経済安定には外貨獲得も欠かせません。生産拠点が国内に舞い戻れば雇用も増えるでしょう。

 年約五百兆円の日本の国内総生産の約半分を企業が生み出し、その企業では全就業者の七割が働いています。四千万人を超える従業員と家族を、どうすれば食べさせていけるかという国民生活に資する経営モデルに改めるべきです。

 減税要求など、政府への安易なおねだりを慎み、国民生活を安定させることこそが「経済の主役は民間」と誇らしげに語る経営者の自負というものです。


☆ 今日も寒いですが、皆様にとって良い一日でありますように ☆