小泉政権以前の増税論議から | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

小泉政権以前の増税論議から

秘書です。
かつて、小泉政権以前の増税論議ではどんな論争がされていたのでしょうか。

「財政再建は、増税しなければできないんだという認識を卒業することがまた日本経済の将来に対する明るい展望をもたらすのじゃないか」

というのはとてもいい指摘だと思うのですが。


衆 - 予算委員会 -平成08年12月06日

○野田(毅)委員 もう、これから経済構造改革、財政構造改革、本題のところに実は入りたいんだけれども、大分前のところで時間をとってしまったのであれなのですが、ただ、五つの改革の中で、総理は本年を財政構造改革元年という位置づけを……(橋本内閣総理大臣「来年度予算」と呼ぶ)来年度予算の中でね、それの初年度だこういう位置づけをしておられる。それはそれで僕は結構だと思います。しかし、内容を見ると、財政構造改革とは何を指すのかということが大変気になります。それは歳出削減の第一歩にどうもなっていないように見える。歳出削減なんです。財政再建ということは、ただ単に国債を減らせばいいという話じゃないんです。国債を減らすんなら増税でもできるんです。そうでしょう。歳出削減を優先するという発想がないととんでもない増税路線になりますよ
 財政構造改革元年と来年の予算を位置づけていろんなら、その中で消費税の引き上げで五兆円でしょう。特別減税打ち切りでしょう。そうでしょう、大蔵大臣。二兆円でしょう。これで七兆円なんです。そのほかに国民健康保険の保険料引き上げたとか国民年金、そっちの方を二兆円余りまたふやすんでしょう。言うなら事実上の税金と同じじゃないですか。十兆円近いんじゃないんですか。
 この国民負担増が財政構造改革なのか。もし財政再建イコール国民負担増であるということになると、私は、とんでもない誤りをすることになる。それに先立って歳出削減ということを優先して考えるという発想がなぜ出てこないんだ。ポイントはそこなんですよ。私はそのことをぜひやってもらいたい。その歳出削減の計画をつくる気持ちがあるのかどうか、大蔵大臣

○三塚国務大臣 それは野田さん御質問のとおりです。今そのために来年度予算編成、聖域を設けることなく、待ったなしの見直しをする、諸制度の見直しをする、実行率がどうであったかを確かめる等々、歳出のカットに全力を尽くす、こういうことであります。

○野田(毅)委員 もうそういうことを毎年毎年言い続けてきた。そしてその結果が今日なんですよ。
 実は、今までそんな努力をしていなかったんじゃないのです。つまり、七月に概算要求で集めた要求を数カ月間大蔵省の役所が中心になって査定して、構造的な問題にメスが入ると思いますか。そうでしょう。いつも大事な問題は全部先送りじゃないですか。そういった目先のつじつま合わせを卒業しなければだめなんです。そこをやるのが財政構造改革なんです。中期的な、やるやると言ったって、全然案も出ていない、今財政審で何かそんな話が出ているらしいが、全部国債をいかに減らすかという話ばかりだ。まさに歳出削減計画というのは全然どこの発想にも出ていない。今一番やるべきことはそこなんです。
 我々はこの前いろいろな公約をした中で、やはり本当に歳出削減ということに行革の中心を置かないと、中央省庁の再編、大事ですよ、だけれども、それによって、じゃ行政経費が幾ら節減できるんだ、今一番大事なことの一つは、財政再建と言うなら、何で歳出削減計画が入らないんだ。私は、そこのところがどうもちょっとずれているんじゃないか、本当にそう思いますよ。そうでなければ、これからの財政再建路線というのは、言葉はいいが結果的には国民負担増加路線ということになってしまう
 そして、その結果どういうことになるんだというと、もう時間がないからあれだけれども、せっかくつくったからちょっとだけ。余りパネルはあれだと思うんだけれども、言葉で言うのはちょっと言いにくいからあれですが、今やろうとしているのは、財政が悪いから増税をしようという話だ、十兆円ほど、来年度予算で。
 そうするとどうなるかというと、明らかに景気は悪くなる。午前中の自民党の質問でもみんなそう言っているでしょう。二%程度、民間の経済予測では、来年の成長率。しかし、その中には国保の、健康保険の引き上げたとかは入ってないんですよ、あれもしそれまでカウントされていろんなら、もっと下になりますよ。そうなるとどうなるんだ。結果的には、一つは景気が悪くなれば税収は落ち込むのですよ。そして同時に、景気が悪くなればどうなるか、雇用の問題にだってみんな影響するから何をやるんだ、必ず景気対策を必要とするのです。その結果何をやるかというと、公共事業を借金でやるのです。
 そうすると、片っ方で増税したって片っ方で借金をふやしちゃうわけですから、全然財政再建になっていないじゃないですか。そして、景気が悪いから超低金利をずうっと続けているじゃないですか。その結果がどれだけまた消費に悪影響を及ぼしているか、どれだけ年金生活者を直撃しているんだ。年金基金の運用益だっておかしいから、みんなおかしなところへいっているじゃないですか。この悪循環を何年続けてきたか
それは我々も反省がありますよ。マクロの中で、マクロ政策を重視した余り、そして目先の財政のそろばん勘定を一生懸命優先した余りに、結果的にこの呪縛の中に落ち込んでしまっている。これをどうやって脱却するかという話なんですよ。
 今ここで増税から始まると、また同じことをやるんじゃないですか。予言者じゃないからなんですが、見ていてごらん。ことし、本当に今度の予算で、今考えておられるとおり、十兆円近い増税効果をやってごらんなさい。多分株価は二万円を切るでしょう。恐らくまた大変な騒ぎが起きて、大幅な景気対策をやれという議論が春ごろから必ず噴出する。そうすると、そのときにまた借金をして、結局景気対策をやることに追い込まれるだろうと思いますよ。そうならぬことを願いますが
 そうなるなら、何のために増税したのですかという話になるのです。むしろやるべきは、減税をこそ優先するという発想が出てこなければだめなんですよ、この悪い呪縛からいくならば。ここが大事なポイントなんですよ我々の五つの契約、もう時間がないからそこまで言えませんが、我々の発想はここなんですよ。
 財政再建にしても、やはり一つは、行政経費をいかに削減するかということに一つの中心軸を置かなければだめだ。だから、今世紀いっぱい消費税を据え置こうというのは、たかを緩めたら行政経費削減に入らないですよ。もし仮に、来年四月から消費税の引き上げをしない、相変わらず三%のままだよという閣議決定のもとでやったら、今回の予算編成はうんと質が変わっていると思いますよ。やはり子供の小遣い銭と同じで、小遣い銭をふやしておいてむだ遣いするなと言ったってなかなか締まらないのです。やはりそこのたがを締めていくという一つの効果がある。
 いま一つは、何といってもこれは経済再建なくして財政再建はあり得ないのですよこれは一番の根本なんだ。だから、その経済構造をどうやって、低金利と公共事業に依存するような経済構造から、もっと民間が、民間部門が主体になって実質で三%から四%の潜在成長力を発揮させて、そういう中期的な経済展望をしっかりとつくり上げることなんだ。それに対する民間の確信をいかに抱かせるかという話なんです。これがないと、ただ単に規制緩和だけじゃ動かない。
 それからいま一つは、本気で行政経費を削減しようとするのなら、それはGDPに対する効果からいえばマイナス効果ですよ。当たり前の話だ。だからこそ、一方で減税効果が必要なんですよ。減税すればその分だけ財源が必要だという話をみんなよく言うのです、今度の選挙でも。しかし、ああいうばかみたいな議論をするからだめなんです
 例えばかつて、これは三塚さん御存じだと思う。昭和五十九年税制改正で酒税の増税をしたのですよ。酒税の増税。あのころは一兆円減税の話があって、その財源づくりのために法人税の話だとか酒税の引き上げたとかやった。結果的に一年後の税収、酒税はどうなったか。増税したけれども減収になったのですよ。経済とはそういうものでしょう。税収だってそうですよ
 法人税だってみんなそうじゃないですか。税率は変わらないけれども、景気がよければたくさん入っているけれども、今景気が落ち込んでいるから、同じ税率でももう五兆円もピークに比べて落ちているじゃないですか。それをただ単に、はい、消費税何%上げればこれだけ入りますよなんて、そんなばかみたいな計算するからだめなんですよ。そのことによる景気に対するマイナス効果があったら、消費税だけじゃなくて、ほかの税収だってみんな落ち込むじゃないですか。そうでしょう。消費税五%にしたら五兆円ほど税収は入るともくろんでいるかもしれないが、実際ふたをあけてみたら入らないじゃないですか。私は、そういったことをトータルとしてぜひ考えてもらいたい
 もう時間がないですから次の質問に譲りますけれども、私たちはそういった。この二つの柱、経済再建なくして財政再建はないんだよということ、それから歳出削減計画のない財政再建計画はないよということ、このことだけは指摘しておきたい
・・・

衆 - 財政構造改革の推進等に関する特別委員会 平成09年10月20日

○野田(毅)委員 ・・・
 そういう意味で、財政再建ということも、これは総理、歳出カットと増税で、それだけで財政再建、本当にできると思いますか。やはり経済がしっかりと立ち直って、そこから生み出されてくるのが、その成果が税金じゃないですか。そこのところを履き違えて、経済の体力がまだないうちに、増税すれば財政再建だとか、歳出カットすれば財政再建だとか、そういう世界じゃ私はないと思う。どうでしょう。

参 - 地方行政・警察委員会 - 平成11年03月11日

○国務大臣(野田毅君) ・・・
 そういう点で、先ほど先生から御指摘ございましたが、小渕内閣になって、特に今回の経済戦略会議の方で、十年間について三つのステージに分けて経済再建戦略、当然それに伴って財政再建戦略が出てくるわけですが、非常に私が高く評価するのは、そういう視点も実はございます。
 そういう中から、まず日本の潜在成長率はどの程度かといういろんな話がありますが、私は、個人的には三%のノミナルな成長は十分に余力があるんだと。よく限界論がありますけれども、日本よりもアメリカの方がはるかに経済は成熟しているとみんな思っていたわけで、私はそういう点から、今の日本がゼロ成長時代に入るんだなどと言って自分で自分の能力を過小評価するということが決していいことではない、そのようにも思うわけであります
 そういった点で、今いろいろ先生から御指摘ございましたが、税制を抜本改革して増税しなければ財政の再建ができないと私は実は思っておりません。むしろ、アメリカの例を見ましても、アメリカの経済、特に双子の赤字から財政赤字が脱却できた最大の一つは、軍事費削減といいますか歳出削減効果があったと思います。しかし同時に、景気の回復による税の自然増収、この二つが車の両輪であることは今や常識であると思っております。そういう点で、財政再建は、増税しなければできないんだという認識を卒業することがまた日本経済の将来に対する明るい展望をもたらすのじゃないか、そのようにも感じております。
 そういう点で、いろいろ御指摘ございましたが、我々は過大評価をしてもいけません、自信過剰はいけないと思いますが、多少日本人全体がみずからの国の問題について国力について少し過小評価し過ぎているのではないか、そのように感じられてなりません。

衆 - 本会議 - 23号
平成12年04月11日
・・・
ところが、最近、経済回復のめどが立ったから急いで財政再建に着手すべきだという議論がふえてきました。もちろん、財政再建そのものは常に心がけるべき大切な事柄であります。ただ、過去においてこの言葉を用いて行われたことは、当面の財政収支の帳じりをよくすることに力点があって、最も大切な財政の構造を改革することとはほど遠いことであったということには注意を要すると思います。
 本来、財政再建とは、単に目先の歳出規模を減らすことや、単純に公共事業性悪説に加担することではなく、いわんや、単純な増税路線でもありません。歳出歳入の構造を抜本的に改革することによって、財政赤字の拡大を防ぐ仕組みをビルトインすることであります。もちろん、国と地方を通ずる改革の大業をなし遂げなければなりません。内閣をかけるだけの大仕事になると思います。総理の御決意を伺います。
・・・
 財政構造改革と社会保障構造改革は、まさに一体不可分のものであります。英国では、社会保険庁と国税庁が統合されたそうです。国民から見れば、税であれ社会保険料であれ、本人の意思にかかわりなく強制的に徴収されることに変わりはないのです。消費税の使途を基礎年金、老人医療、介護という基礎的な老後の生活安全保障に限定するという消費税の福祉目的税の議論も、そういう脈絡の中で私たちは問題提起をしているのであります。消費税を消費の大きさを基準とする社会保険料ととらえれば理解は早いと思います。そして、名称も社会保障税と改めるべきだと思います。総理の見解を伺います。(拍手)