原子力規制庁法案の審議が始まった。

 

  重視されるべき論点は、原発推進組織からの「独立性」と、高い「専門性」、そして今回のような原発の重大事故に対する「対応力」の3点だ。


 これまでの原子力安全保安院が原子力推進官庁の経産省の下にあったことに対しては、保安院制度を作った当時の政権党である自民党議員からも、反省の弁が述べられた。


  しかし、「原子力ムラ」と呼ばれる、原発に強い利害関係を有する「ムラ」からの独立をどう実現するのか。一昨日の国会事故調において、私は外国人専門家の起用を提案した。それは、「原子力ムラの掟」は明示的に存在するのではなく、掟に従わないと主流から外されるという日本的共同体体験に裏付けられた、日本的文化ともいえる、過剰な同調主義にあるからだ。こうした過剰な同調主義を破る、つまり「ムラの掟」を無視して行動できる人材として、外国人専門家を招聘することはショック療法的効果を期待できる。


  また総理の権限を含め、重大事故に対する対応力が大きな論点となっている。これも一昨日の国会事故調で述べたことだが、今回の重大原発事故にあたって、総理であった私のとった行動が、一般的に本来の姿であると言っているのではない。今回の場合、事故対応の中心となるべき原子力安全・保安院が機能せず、オフサイトセンターに置かれた現地対策本部が、地震で機能不全という状況下で、誰かが陣頭指揮をとらなくてはならなかった。原災本部長である私(総理)が事故発生の3月11日から統合対策本部を東電本店に立ち上げた3月15日までの間、直接、陣頭指揮を執ったのは、やむをえない措置であり、必要であったと考えている。


  さらに、自衛隊に原子炉建屋の中にある使用済み燃料プールへの放水を指示した今回の経験からすると、オンサイト(原発敷地内)のことはすべて民間人である専門家委員に任せるというのは、無理がある。