予備試験合格者の、司法試験択一合格率の高さが意味するもの | 向原総合法律事務所/福岡の家電弁護士のブログ

向原総合法律事務所/福岡の家電弁護士のブログ

福岡の中心部・天神駅真上の場所にある法律事務所の弁護士です!
日常の法律問題や、弁護士業界のネタ、その他をつらつらと書こうと思います。

平成24年6月7日、今年の司法試験のうち択一試験の合否結果が発表されました。
以下の法務省HPをごらん下さい。
http://www.moj.go.jp/content/
000098843.pdf

ここで「合格最低点」を下回ると、いわば予選落ち、つまり最終合格の可能性は無くなるのです。
今年の合格最低点は215点(350点満点)でした。

さて、本題はここからです。

択一式の全体合格率は、72.94%でした。

一方で、法務省は親切で、法科大学院別の合格者数も掲載してくれています。

すると、たとえば、「定評のある法科大学院」の一つである一橋大学法科大学院
の場合、受験者数は135名で、うち114名が択一に合格しています。
受験者数ベースで見た場合の合格率は、じつに84%。
私の出た某法科大学院は、調べると、57%だったので(それも受験者数ベース
であり、出願者ベースでいえば42%しかいません)、法科大学院によってかなり
の格差があるようです。

ところで、さらに目を引くデータがあります。
法科大学院別の合格者数欄の、一番下に、ひっそりと掲載されている
「予備試験合格者」の欄。
これを見ると、受験者ベースで、
85名中84名が合格。98.8%が合格
という、驚くべき数字が出ています。

択一だけで全てが決まるわけではありません。
しかしながら、択一というフィールドにおいては、予備試験から上がってきた人が
これだけの結果を出している事実は、軽視できません。

このことが意味することはなんでしょうか。

司法試験は、しょせん、試験です。
きちんと、試験で要求されている知識や考え方を、きっちりと身に着けているか
どうかが試されているのです。

それを、人生という限られた期間のなかで、効率良く身に着けていく術を、法科
大学院では教えてくれないのが普通です。

要するに、自学自習が大切なのです。

この試験結果は、そのことを、如実に意味しているといえます。

もっといえば
一番優れている法科大学院は、予備試験受験者が通っていたであろう予
備校
ないしは自学自習だった
ということですね。

もう一点。

司法試験法5条1項によると、予備試験は、法科大学院出身者と同程度の学力を
有しているかを試す試験である旨が明記されています。

とすると、択一試験の結果において、法科大学院出身者と予備試験出身者で
これだけの格差が出てくることは、司法試験法5条1項の考え方とは明らかにズ
レが生じています。
つまり、予備試験のレベルが、むやみに高すぎるか、もしくは、法科大学院
レベルがむやみに低すぎることのいずれかを示しています。

もし前者だとすると、あたら有能な人材を、予備試験を難しくしすぎていることに
よって、司法試験を受けさせる前に排除していることになり、人材登用という観点
から大きな損失です。

ただ、いずれにせよ、法科大学院は教育方法を根本的に見直すべきといえます。
具体的には、
法科大学院は、下手に授業をするよりも、学生の自学自習時間を最大限
にとっ
てあげること。
これが最大の良策ではないでしょうか。