あすぺさん190

「生きるために必要な応用力をつける」のシリーズです。
生きるための応用力をつける(1)-特徴を抽出する-

高校時代の話を中心に進めるつもりでしたが、小学校のころにおもしろいエピソードがあったのを思い出したので、今日はそのお話をします。

私が小学校3・4年生のころだったと思います。
母が、「大どろぼうホッツェンプロッツ」という本を買ってくれました。

本を読むのは好きだったので、とりあえず読み始めたのですが、なんだかどろぼうの話が書いてあります。ふむふむ。そうか、コーヒー曳きとかいうものを盗むのか。ふーん。

もくもくと読んでいると、その様子を見た母が、私にこう説明したのです。
「しーた。この本の面白いところは、コーヒー曳きっていう、ぜんぜんたいしたことのないものを盗むだけやのに、大どろぼうとかおおげさに、騒いでるところやねんで。」と。

私は、このときに、はじめて
「たいしたことのないこと、大げさに表現することが、おもしろくて笑えることなんだ」
と、わかったのです。

「そういうことがおもしろいのだ」と思って読むと、この本はすごくおもしろい本だとわかって、楽しく読むことができました。

実は、同じようなことが、小学校6年生のころにもありました。
やはり、母から「これ面白いで」といって、夏目漱石の「我輩は猫である」を渡されました。

そして、やはり、「これの何がおもろいんやろー?」と思いながら、もくもくと読んでいると、母が説明してくれました。

「あのな、これの面白いところはな、どうでもいいようなしょーもないことを、やたらに大げさに詳細に表現してるところなんやで。たとえば、ここの細君の鼻の表現のところな…(云々)な、おもしろいやろ。」

説明されて、初めて、なるほどー!
たしかに、こんなたいしたことでもないものを、やたらに細かく大げさに説明するのって、おもしろいかも。なるほど、こういう「おもしろさ」っていうのがあるんやー!

と、理解できました。おかげで、「我輩は猫である」をおもしろーい!と読みきることができました。

実は、こういう本だけでなく、みんなが笑っていて、私がきょとんとしていると、ときどき「何がおもしろいのか」ということを、母が説明してくれました。

おそらく、これも発達障害の特徴だったのかな、と思います。
同じような年齢の子供が、自然におもしろみを感じるものでも、私にはさっぱりおもしろさがわからず、きょとんとしていることが多くありました。

母が気づいたときだけですが、面白い理由を説明してくれたことで、「こういうことは、おもしろいことなんだ」と頭で理解ができて、次から「これはおもしろいことなんだ」と考えながら、それがだんだんと定着して、自然に「おもしろい」と思えるようになる。そんな、一連の流れがあったように思います。

「しょーもないことを大げさに詳細に表現して、少しちがう方面のことと繋げて笑いをとる」というパターンとして身につけたわけです。

パターンとして身につけたものは、いろいろな場面で応用がききます。

たとえば、この場合なら、本を読むときの面白さをだけでなく、逆に、自分が文章を書く時にこのパターンを意識して使うことで、おもしろい文章が書けるようになりました。

このことがきっかけで、その後の私は、文章を読むときに、こういう展開のパターンで書くとおもしろいという、パターンを意識して読むようになったように思います。
特に、夏目漱石と司馬遼太郎が好きで、高校・大学のころの文章は、「堅い表現ややたらに難しい単語をつかって大真面目にしょーもないことを語って笑いを取る」パターンの文章を好んで書いていました。(今とは、かなり違うタイプの文章でした。)

特に、発達障害の人にとって大切なのは、「パターン」として説明して、「パターン」を身につけることだと思います。

発達障害の人は、個々の事例から自力でパターンを抜き出すことが難しいため、(普通の人から見て)同じパターンの事柄に応用することが苦手です。

ですから、個々のパターンの説明の後に、汎用的な「パターン」に置き換えて説明し、「パターン」を理解させることが大切なのだと思います。
私の場合は、以前の記事「生きるための応用力をつける(1)-特徴を抽出する-」でお話したように、数学で「パターン」を抽出することで、応用が効くということを学び、今も、常に「パターン」の抽出を意識して物事を見て考えるようにしています。

ところが、普通の人は日々の出来事のレベルで「パターン」化を意識しなくても、なんとなくできているため、あらためて「パターン」を明確に言語化して説明することが苦手だったりします。
普通の人が「パターン」として認識していることが、私の感覚では、まだまだ個々の事例にちかいレベルであったり。

つまり、これは発達障害の支援をする人(特に教育や指導する人)は、
・「パターン」化する思考力
・「パターン」の内容を言語化して的確に伝える
という2つの技術が必要であるということになります。

「そこは、適当にしたら…」を排除して、共通のパターンを見出す。
おそらく、普通の人が日々の事柄にできるだけ汎用的な「パターン」を見出そうと考えて意識をして「言語化」しようとすると、想像以上に個々の事柄に共通するものが少なく、パターン化することが難しいと感じると思います。

実は、その混沌としてパターン化が困難な世界こそが、ネイティブ(当事者)が感じている世界そのものなのかもしれません。

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【おしらせ】今週末は、「ラジオ de あすぺさん」ですよん!
6月10日(日) 11:30-12:00
かわさきFM(79.1MHz)  DreamKingdom 堀川ひとみの歌の国から
☆毎月第2週目に「がんばれあすぺさん」のコーナーで出演中です☆
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