子宮頸がんワクチンによる死亡事故 | 臨遥亭の跡で働く医系技官の独り言

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心に移り行くよしなしごとをそこはかとなく書き連ねています。

 今年7月、子宮頸がんワクチン「サーバリックス」の接種を受けた14歳の女子中学生が2日後に死亡するという事例が9月12日に開催された「子宮頸がん等ワクチン予防接種後副反応検討会」で報告された。
 死亡した女児には、もともと心室頻拍の発作があり、「心室頻拍から心室細動に移行し、致死性不整脈で死亡した」と推定されている。また、ワクチン接種と死亡との因果関係は不明とされている。

 もともと心室頻拍の発作がある小児が「心室頻拍から心室細動に移行し、致死性不整脈で死亡」することは、あり得ることである。ワクチンを接種しなくても、この女児が死亡していた可能性はある。しかし、ワクチン接種が引き金となって、発作が起きたという可能性を否定することも難しい。

 普通、医薬品の副作用の有無を調べるときは、動物実験にしろ、臨床治験(人体実験)にしろ、治療目的の疾患以外には、特に病気のない、比較的健康な動物・人を対象として実験・治験を行う。
 いつ死んでも不思議ではないような持病を持つ人を対象に、治験を行うことは、まず、ない。

 特にワクチンの場合は、健康な人を対象として、有効性と安全性を確認するための治験が行われるのが普通である。例えば、心室頻拍の発作を起こしているボランティアを1000人募って、ワクチン接種を行うというような治験は、まず行われることはない。
 実用化され、市販されているワクチンの安全性は、生来、健康な人を対象として、確認したものに過ぎないことを再度、認識した方が良いだろう。

 そもそもワクチンは何でも無闇矢鱈に打てば良いというものではない。ワクチン接種によるメリットを見極めた上で、デメリット・リスクと比較し、必要性を考えることが重要である。
 今回の事例のように、心室頻拍の発作がある女児に、子宮頸がんワクチンを接種する必要性がどれだけあったのか、もっと真摯に真剣に考え直した方が良いのではなかろうか。

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平成23年度第5回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会
及び第2回子宮頸がん等ワクチン予防接種後副反応検討会(合同開催)資料

【厚生労働省 平成23年9月12日】
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001ohxu.html
資料1-1 子宮頸がん予防ワクチンの副反応報告状況(PDF:1,456KB)
資料1-2 子宮頸がん予防ワクチンに関する死亡報告(PDF:95KB)
資料1-3 子宮頸がん予防ワクチンについての関連資料(PDF:1,328KB)
資料1-4 Hib(ヒブ)ワクチンの副反応報告状況(PDF:909KB)
資料1-5 小児用肺炎球菌ワクチンの副反応報告状況(PDF:1,104KB)
資料1-6 ヒブワクチン及び小児用肺炎球菌ワクチンに関する死亡報告(PDF:136KB)
参考資料1-1 子宮頸がん等ワクチン接種緊急促進事業における副反応報告と薬事法における報告の違い(PDF:153KB)
参考資料1-2 各ワクチンの添付文書(PDF:1,770KB)
資料2 今シーズンのインフルエンザワクチン副反応報告実施体制について(PDF:507KB)

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子宮頸がんワクチン接種後に14歳死亡、「因果関係なし」
【2011/9/13 日本経済新聞】

 7月下旬に子宮頸(けい)がんワクチンを接種した女子中学生(14)が2日後に亡くなっていたことが13日までに、分かった。心臓の持病(心室頻拍の発作)から心室細動となり、致死性不整脈で亡くなったとみられ、同日に開催された厚生労働省の専門家委員会は「接種と直接の因果関係はない」と判断した。
 同ワクチンは国内で2009年12月に販売開始。昨年11月から国が接種費用を補助しており、推定350万回接種を受けたが、接種後の死亡報告は初めて。

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子宮けいがんワクチン 死亡例報告
【2011年9月13日 NHK】

 ことし7月、子宮けいがんを予防するワクチンを接種した女子中学生が死亡していたことが分かりました。しかし、接種との因果関係が認められないことから、厚生労働省は、ワクチンの接種を行っても問題はないとしています。
 これは12日、厚生労働省で開かれたワクチンの調査会で報告されたものです。それによりますと、7月28日に子宮けいがんワクチン「サーバリックス」の接種を受けた14歳の女子中学生が、2日後に不整脈とみられる症状で死亡したということです。接種後に死亡したケースは初めてですが、女子中学生は心臓に重い持病があったうえ、死亡するまでに時間が経過していることから、厚生労働省は、ワクチンの接種と死亡との因果関係は認められず、ワクチンの接種を行っても問題はないとしています。 「サーバリックス」は、おととし12月に販売が始まってからこれまでにおよそ240万人が接種を受けています。子宮頸がんは、主に性交渉によるウイルス感染が原因とされていますが、10代前半でワクチンを接種し、定期的な検診を受けることで、ほぼ100%予防できるとされています。国は、去年から市町村が負担したワクチンの接種費用の半額を助成しており、現在はほとんどの市町村で接種事業を行っています。