夏休みの宿題 | 大山格のブログ

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おもに歴史について綴っていきます。
実証を重んじます。妄想で歴史を論じようとする人はサヨウナラ。

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 世田谷区下馬の世田谷山観音寺に特攻観音が奉安されている特攻観音堂がある。そのお堂は、桜の木の近くに建てられた。桜が先で、お堂があとなのだが、その桜は"特攻桜"と呼ばれるようになった。

 特攻桜は観賞用のソメイヨシノだから、ほとんどの花は実を付けることなく散ってしまう。自分では実を結ばずに散った花が、やがて土になって他の生き物を育んでいく。吾輩にとっては、子を残すことなく戦死した若き特攻隊員たちの姿と重なって見える光景なのだ。

 文章を書くのが本業ではあるが、その情景は言葉で表すより写真に撮るほうが伝わりやすいかと考えて、十年も撮り続けてきた。

 桜の開花期間は短い。蕾から撮り始めて散り際まで、せいぜい十日間だ。毎日通い詰めても、たった十日間でしかないし、本業を放り出すわけにも行かないので三日しか通えない年もあった。

 ようやく撮りためたストックが充実してきたので、そろそろ発表したいと思って、ギャラリーの公募に出してはみたが落選となった。戦争に関わるテーマだから難しいのかとも思ったが、名の知れたベテラン写真家に評価を問うてみると、「心に伝わるものがない」といわれてしまった。

――咲き始めた、綺麗に咲いた、はかなく散った

 そこまでは伝わるが、その光景を通して心に伝わるものがないというのだ。厳しいとは思ったが、率直にいってもらえたのは有り難いことだ。

 しかし、それでも発表したい。ブログに載せて"発表しました"ではすませたくない。なにせ、ここ十年の総決算だ。

 特攻を賛美したいわけではない。本来は戦争に際して守られるべき存在であった少年まで特攻に駆り出したのだから、日本人として恥ずべき歴史的事実である。さりとて戦没隊員の尊い犠牲を貶めたいわけでもない。まして、彼らのことが忘れさられるのは耐えがたい。

 そろそろ特攻も歴史として語られる時期だ。そのことを言葉でなく写真を通して伝えたい。そのために、いつ、何処で写真展が出来るか。それが今年の夏休みの宿題になっている。

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