一橋大学ミスコン、性同一性障害をもつ学生への対応とメディアの報じ方について | まきむぅとレズビアンライフ.*゜* 牧村朝子オフィシャルブログ powered by Ameba

一橋大学ミスコン、性同一性障害をもつ学生への対応とメディアの報じ方について

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撮影:d1.2takaさん


彼女とのパリ新生活も、そろそろ2週間!

まきむらよ。

パリは毎日とても楽しいけれど、日本社会にもきちんと目を向けていたいと思っています。だから、日本のニュースは毎朝、チェックするようにしています。

最近気になったのが、このニュース


「一橋大の大学祭ミスコンでトラブル 性同一性障害の男子の参加拒否」

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です。

わたしは逆に嬉しくなりました。この委員会、すごくフェアな扱いをしてくれていると思わない?


あひる経緯まとめ
取材したわけではないので、6月21日現在インターネットで調べられる範囲ですが、

(1)戸籍上男性・手術前で、性同一性障害を持つ学生、ミスコンに出願

(2)委員会は「戸籍上女性であること」を求める規約を理由に参加拒否

(3)参加拒否を受け、学内の有志が構内に公開質問状を掲示

(4)公開質問状掲示に伴い、第三者が経緯ををtwitterで公開

(5)委員会は参加規約から「戸籍上女性であること」を削除、参加を認める

(6)委員会はtwitterで話題になったことを理由に、公平性の観点から「参加は認める。しかし、書類の時点で足切りする」と表明

(7)表明後も対応について協議が続き、足切りは撤廃、学生を一女性として扱うことが確定

という経緯のようです。ソースはJCASTニュースtogetter


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画像:togetterスクリーンショット


あひる委員会の対応のすばらしさ
最初の時点で、委員会は、学生が「性同一性障害であること」ではなく「戸籍上男性であること」を理由に、きちんと明文化された規約をもって参加を拒否しています。規約のフェアな運用ですから、なんら差別ではありませんね。

でも、規約やルールや法律っていうのは、いつもどうしても不完全なもの。日本の現在の法律では、性同一性障害の方が戸籍上の性別を変更するために「二十歳以上であること、性別適合手術後であること」他を求めています。

性同一性障害の方は、本質的には心の性にならって生きていきます。だから、たとえばの話し、19歳の大学生が「戸籍の性別を女性にしたいけれども、法律上できない。だからミスコンに参加できない」というのは不公平ですね。だって、本質的に女性の方が、女性としての扱いを受けられないということだもの。

委員会は規約を変更し、学生の参加を認めます。ところが、今回の件で学生自身が有名になってしまったため、公平性の観点から落選させますよ、ということを表明します。

この対応もすごくフェアですね。「あーもう、なんかうるさいからとりあえず出場させてあげようよ。別に理由いわないで落とせばいいだけの話しだし」みたいな対応をすることも委員会には可能だったわけですが、それをしなかった。

規約を撤廃したので、出場は認められます。けれども、公平性の観点から、減点せざるをえません。」これをきちんと表明した委員会の対応は、ものすごくフェアですばらしいと思う。

現在も最終的な対応については協議中のようですが、とにかく今までの経緯すべてに拍手を送りたい気分です。いい学園祭になるといいわね!




あひる「性同一性障害、だから応援します」?
今回の件で話題になったことで、「出場できてよかったね!応援するよ!」だとか「なんか話題だから投票するよ!」みたいな票が集まるのは、彼女自身にとって、嬉しいこととはいえないんじゃないかしら?

それは

「性同一性障害の人」

「なんか話題の人」

に集まった票であって、「彼女自身」の人柄や容貌や人徳や努力が集めた票ではないでしょう。今回話題になったことでそういう票が集まるであろうことは、ほぼ確実と見ていい。だから減点扱いをするのは、他の出場者はもちろん彼女自身にとっても、とてもフェアな扱いだと思います。

以前まきむぅ&こゆたんのレズビアンチャンネルでも話題にしたとおり、「日本人の友達ほしかったんだよね」「レズビアンの友達ほしかったんだよね」みたいな言い方をするのがなぜ失礼か、という話に通じることですね。

「日本人」「性同一性障害」「レズビアン」……。
こういった点は、その人のほんの一部分を表すにすぎません。

「日本人」「性同一性障害」「レズビアン」……。
こういった人たちの中にも、ある程度の傾向こそあっても、いろんな性格や考え方や個性をもった人がいます。


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画像:togetterスクリーンショット


あひるもしレズビアンがミス日本に出場したら?
おそらく、レズビアンであることをカムアウトした上でわたしがミス日本に出場していたなら、ファイナリストに選んでいただくことはできなかったでしょう。

けれど、わたしはそれが差別であるとは思いません

ミス日本は、もともと太平洋戦争終結直後、アメリカから送られてきた救援物資に感謝を伝える目的で、女性親善使節を選ぶために始まったコンテストです。

ミス日本に選出された女性は、キリスト教国や未成年の多くいる施設を含むさまざまな場所に、日本女性の代表としてボランティアに行きます。そういう場にもし、レズビアンであることをカミングアウトしている女性が日本女性の代表として向かったら、宗教・思想上のトラブルが起こる事が予想されますね。

ですので、レズビアンであることをカミングアウトした女性は、ミス日本として不適切であり選考から除外されるべきだといわざるをえません。また、もしこういったケースが起こった場合、抗議すべきなのはこういった対応に対してではありません。

レズビアンをとりまく現状に対してです。

「ふしだらだ」「未成年が同性愛に感化される」こういう誤解があるから、差別も起こっている。声高に抗議をすることがわたしには、かならずしも正解だと思えないのです。

なにか差別的と思える対応を受けたら、それをその人にさせたのは誰なのか? それをその人にさせたのは何なのか? ということを、常に考えるべきなのではないでしょうか。


あひる「差別差別、権利権利って、いちいちうるせーよ」?
現状、日本社会において、同性愛者や性同一性障害の患者さんといった性的少数者は、不公平な扱いを受けていると言わざるをえません。例えば、同じように納税という義務を果たしているのに、男女カップルは夫婦として税制面において優遇され、女性同士のカップルは他人扱いで優遇されません。

そういう不公平に対して声をあげる人たちに対し、「日陰者は日陰者らしく生きろよ。差別差別、権利権利って、いちいちうるせーよ。」というようなことをおっしゃる方々がいらっしゃいますね。これは性的少数者当事者の方からも、そうでない方からも聴かれる意見です。

だけれど、一度うるさくしないと、誰にも聞こえないの

日本の政治家は票を得ないと活動ができませんから、票を得るために、できるだけ多数の人たちに喜ばれるようなことをしますね。そういう制度の下、レズビアンが「日陰者らしくこっそり」自分のことを隠して生きたら、どうなるでしょうか?

「レズビアンなんて別に、ニューヨークか新宿二丁目かAVにしかいないんでしょ? いない人たちのための法律なんて作ってどうするの?」と言うような誤解のもと、政治家がレズビアンのために動く事ができなくなりますね。

だから、いまの日本は一度うるさくするべきときです。だからわたしもレズビアンタレントって名乗ってるの。自分の身に危険が及ばない範囲で、わたしはここにいるんだよって、声をあげないと何も動かない。

そして、多数派と同等と思える権利を、きちんとオフィシャルな文章になった形で手に入れられたなら、今度はもううるさくしなくていいときね。

"少数者"全般に言える事ですが、「私達かわいそう!だから権利を!」の段階にいつまでも甘えたい人っていますからね。その怒鳴り声の下、本当に出てこられない人が縮こまる。なんでも「差別だ!差別だ!」といって言うことを聞かせる、いわゆる「差別利権」は、多数派が少数派に対してはたらいてきた暴力とまったくおなじこと、恥ずべきことです。


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ルールは守られるべきですが、同時に、ルールは完璧なものではないと言うことを自覚することも大事です。ルールのもとに不公平な思いをしている人がいたなら、それはその人自身が声をあげるべきです。そしてルールが変わったなら、みんなでお祝いしておだやかに暮らしていきましょう。引き続き、ルールについて考え続けることも大事にしながら。

今回の一橋大学の件は、みごとにそれを体現していると思います。少数者であるという被害意識のようなものから、ちょっと声が大きくなりすぎてしまうこともあるけれど……声をあげる。ルールが変わる。これを繰り返して人間社会は、間違いながらも発達していくものなんじゃない?

一橋大学のみなさんには敬意を表します。そして、この件を機にまた、

性同一性障害=男の娘」とか

男性同性愛者=全部オネエ」とか

心の性が女性である性同一性障害の人=みんな男が好きで女は愛さない

とか

そういう残念な誤解がとけていきますように!

長い文章、読んでくださってありがとうございました。

次は、「日本社会とフランス社会、それぞれの中でレズビアンがどういうふうに生活しているか」について、もうちょっと短く(笑)レポートしたいと思います!