『日本の未来について話そう』  ―日本再生への提言―

マッキンゼー・アンド・カンパニー責任編集  小学館   2011/7/1

 

 

 

 

<「日本のロードマップーこれから20年の道筋」 エアン・ショー>

・日本の財政は、先進工業国のなかでも最大規模の債務を背負っている。震災から復興のための支出は、さらに財政を逼迫させることになるだろう。これまで、発展途上国への多額の資金援助を行ってきた日本だが、これからは援助額が見直される可能性もある。

 

<日本が次第に衰退していく>

・なぜ20年なのかというと、日本は根本的に変わる必要があり、それにはそれなりの時間がかかるからである。

 

<「引き裂かれた社会」-格差の広がり>

・まずは問題点から挙げてみたい。日本の公的債務残高は、そう遠くない未来に国内総生産(GDP)の3倍に達するだろう。年金と健康保険による赤字も拡大している。

 

・消費は減り、主要業界での競争力は衰え、経済は1990年代から3度目の「失われた10年」に入りつつある。

 

・こうして見えてくる「引き裂かれた社会」は、団結力と平等を長く誇ってきた日本社会の価値観とはまったく相反するものである。

 

<日本のロードマップーこれから20年の道筋>

<日本企業の変革><「オーバーキャパシティ(余剰能力)」の削減>

・多くの場合、日本企業は、縮小する国内市場での競争や、そのためのリソースに対する投資に忙殺され、本来であれば向かうべき「イノベーション」と「グローバル化」という2つの重要なチャンスに力を注げないでいる。

 

<グローバル・チャンピオンの創出>

・グローバル・チャンピオンとは、高い収益性を上げ、雇用を多く創出し、業界を牽引してイノベーションを起こすことができ、最も優れた人材を引き付けることができる企業だ。キャノン、コマツ、トヨタはグローバル・チャンピオンの一員である。

 

・日本企業がグローバル・チャンピオンになるスピードを速めるうえで有効なのがM&Aである。

 

<より高い目標をめざし成果主義の実現>

・年功序列、終身雇用といった日本ならではの企業文化は、1980年代~1990年代には日本企業の競争優位性の源泉として称賛された。だが、現在はその一部が、明らかに成長と高い成果を達成する上での阻害要因になっている。

 

<「起業家精神」を解き放つ>

・やがて日本では、最も優秀な人材の多くは、大企業での終身雇用による安定や、官庁に勤めるといった肩書を得ることを目指すようになった。

 

<抜本的な教育改革の必要性>

・日本の将来の繁栄は、教育改革にかかっている。現在の教育制度は、世界で競争しようと苦闘している日本企業のニーズに合う学生を必ずしも育成できていない。

 

<自立志向の強い学生の育成>

・教育改革によって、人間として成熟し、自分で物事を考える力を持ち、リーダーとなる意志を持つ学生を育てなければならない。

 

<グローバル・シチズンの育成>

・外国で学ぶ日本人留学生は、他国と比較して少ないばかりか、その数は減少してきている。

 

・具体的なアイデアがある。例えば、毎年10万人の学生、または企業の従業員を最低1年間海外に送る、国のプログラムを策定する。

 

・もうひとつ、困難かもしれないが大胆な提案としては、小学校低学年から英語を必修科目として、英語を第2公用語にすることだ。英語を普及させるべく、思い切って行動を起こすことは、大きな構造変化につながる。

 

<大学と企業の提携の強化>

・日本は、企業が求めるスキルを持つ学生をもっと輩出する必要がある。大学生は本来、卒業する前にできるだけ多くの仕事経験を積んでおいた方がいい。これは例えば、インターンシップを必修化することで実現可能である。

 

<一流大学をアジアにおける研究・教育の中心にする>

・指導言語を英語とし、アジアおよび世界中の優秀な頭脳を持つ学生や教員を魅了するような、アジアにおける中心的な研究・教育機関を目指すのだ。

 

<少子高齢化社会に潜むチャンス>

・日本では少子高齢化が進みつつある。2005年には65歳以上が人口の20%を占めていたが、2030年までには人口の3分お1にまで増えると予測されている。

 

<高齢者関連ビジネスの開発>

・まず国内でビジネスモデルを試行錯誤し、今後高齢化が進む多くの国に展開可能なビジネスに育てていくこともできる。

 

<世界の高齢化社会の先進事例、研究の中心となる>

・だが、日本は、世界で最初にこうした変化に対応することになる国である。だからこそ、日本は、高齢者の介護、医療の提供や年金の管理など、高齢化や人口減少問題に対する解決策を打ち出し、知見を蓄積し、他国が手本とするような立場を確立することができるはずだ。

 

<高学歴女性の労働力の活用>

・日本は人口減少が進んでいる。女性を労働力として積極的に活用していくことが不可欠だ。だがいまは、結婚後も働き続ける女性は70%にとどまり、第1子(かつ多くの場合唯一の子供)の出産後には就業率は50%にまで落ちてしまっている。

 

<移民がもたらし得る機会の検証>

・現状では、日本の人口に占める外国人は2%未満であり、これは経済協力開発機構(OECD)諸国中、最低の数字だ。移民の受け入れについては、多くの国と同様、日本でも議論が繰り広げられている。しかし、移民を無差別に受け入れることと選択的に受け入れるのとでは大きく異なる。政府と産業界は、日本のニーズに合った海外の才能を引きつける計画を練らなければならない。

 

<アジア諸国との協力関係を強化する>

・アジア最大の先進工業国であり、地域内で第2位の経済大国である日本は、通信やヘルスケアなど、様々なビジネスチャンスを見いだすことが可能だ。

 

<新時代のリーダーシップ>

・当時の日本のリーダーたちは、まさに適切なリーダーシップの資質、つまり、高い志と創造性、リスクに立ち向かう姿勢と、柔軟で開かれた思考、そして、物事を変える力を発揮していた。同時に、彼らが大胆かつきめ細やかな戦略構築力、実行力、国際感覚をも併せ持つことで、日本企業は大きな成功を収めたのだ。

 

<リーダーシップと成果を最優先する>

・現在、いくつかの日本企業については、従業員の能力育成スピードが遅すぎるという問題が挙げられる。

 

<企業経営のグローバル化>

・日本の企業幹部は、優秀な外国人を迎え入れるために、思い切って使用言語からビジネス慣習、報酬制度や昇進制度など、企業経営を大胆に変えていく必要がある。よりグローバルなリーダーシップ体制が会社を強化することは、日本においても明らかなのだ。

 

<リーダーシップスキルの開発>

・リーダーシップスキルの開発こそが、本稿で提案しているロードマップの主たる成功要因なのだ。

 

・「日本株式会社」は、いま、思い切って日本企業の経営の仕方を現状に適応させていくことができるはずだ。

 

・つまり、日本のリーダーたちが、日本を再定義し、再構築しなければならない。なぜならば、若い世代の運命がそこにかかっているからである。

 

・目的地に到達するための道は多く見いだせる。市井の個々人の小さな選択で、優秀さで名高い日本の官僚が決定するマクロ経済政策で、あるいは幾千もの会社の中間管理職の日々の行動で、目的地を目指すことができる。

 地図は結局、地図でしかない。「旅」を進めていくのは、日本と日本国民なのである。

 


私が思うこと、聞いたこと、考えること

・東日本大震災以来、日本のシナリオが再検討を迫られています。3月11日で3年になる東日本大震災の復興も必ずしも軌道にのっているとはいえないそうです。日本のほとんどの人々が、様々なことを考え、工夫し行動を模索しています。

 

・国の司令塔も未来のシナリオをいろいろと検討しているようです。国際的な経営コンサルタントからは「グローバリゼーション」について、強化していくシナリオが提案されているようです。経営コンサルタントからの国政への提案も増えているようです。多くの「改革」が必要のようです。

 

・英語教育についても将来は全国の学校をインターナショナル・スクール化していくことも必要になるようです。大学でも英語化が50%以上を目指すようになるのかもしれません。英語教育についても有識者がさまざまな案を検討しているようです。厳しい条件ですと「ネィティブ・スピーカー・コンプリート・バイリンガルでないと使い者にならない」といわれているそうです。英語ショックはまだ一部の企業だけですが、今後増加していくことでしょうか。移民については米国人ですら、「日本の特殊性から移民は無理だ」と主張する人が多いそうです。

 

・オピニオン・リーダーが未来のシナリオを描き、様々な段階で検討され、実行されていくものとおもわれます。シンクタンクや経済研究所、行政全体が経済のシナリオを考え、東日本大震災以後の難局を乗り切らなければなりません。行政機構がシンクタンク機能を果たしているそうです。首都直下地震津波や南海トラフ巨大地震津波も近未来の発生の確率が高いという予測です。また、国の多くの研究機関から警告がなされております。最悪の被害で200兆円ですから、破壊の影響力は私たち一般人には、想像できません。ある意味で「国家危機は続いている」のかもしれません。

 

・日本経済も異次元の金融緩和でデフレ基調を脱出しようとしていますが、世界経済の不調が再生を大きく妨害しているようです。「日本の失われた20年」が「失われた40年」になる懸念も有識者間ではつぶやかれています。そして隣国からは「ドバイショックの1千倍、リーマンショックの2倍以上の衝撃がまもなく中国からやってくる」そうですので、エコノミストたちの懸念が増幅されます。ある意味では世界的に経済危機なのかもしれません。経済がうまくいっていない国が多いようです。

 

・「失われた20年」といわれますが、本当に優れた政治家や官僚が登用されてこなかった結果だそうです。確かに先進国と比較すると女性は登用されてこなかったようです。「日本は先進国だろうか」という声が街中では増えているそうです。遅れている面、頭の古い点、非近代性、後進性が予想以上に増えているそうです。子供と大人の難病や奇病も増えてきており、医療のテクノロジー自体も遅れているそうですので、驚きです。

 

・「肝心の政治が遅れている」そうで、たまりません。「国民が政治を嘲笑している間は嘲笑に価する政治しか行われない」「「民主主義国家においては国民はその程度に応じた政府しか持ちえない」そうですので、私たち一般人も政治意識を高めていかなければならないようです。