「家路」の試写会に行ってきました。
ストーリーは、
東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所事故によって、先祖代々受け継いできた土地を失ってしまった一家。そこを離れて、未来を想像することすらできない毎日を送っていた彼らの前に、20年ほど前に故郷を飛び出したまま連絡すらしてこなかった次男が現れる。戸惑う家族を尻目に、彼は一人で苗を育てては、誰もいない田んぼにそれを植えていく。その姿に長男と母親は故郷で生きていく彼の決意を感じ取り、バラバラであった彼らの心と絆が少しずつ再生されていく。
というお話です。
この映画は、とても欲張りな映画で、訴えている事が沢山あって、軽く映画を楽しみたい人には、ちょっと好かれないかも知れません。でも、とても大切な事をたくさん描いています。私は、観た後、何度も思い返し、考えました。
まず、震災のこととは別に、親子の愛、兄弟の愛、夫婦の愛、を描いています。震災前に、この家族で起こったことが、その後の人生にとても影響していて、バラバラになってしまっていた家族が、震災を期に、また、家族の愛を確認していくんです。
長男と次男は腹違いの兄弟で、厳格な父親は、落ち着いていて判断力のある次男を可愛がっていて、長男は、父親に気に入られる為に努力をするけど上手く行かないんです。父親を挟んで、長男と次男の間には、しこりがあり、そのせいで問題が起こり、二郎は家を出て行く事になります。それから20年、震災が起こります。
家族って難しいモノで、ちょっとした事でも、すごく心に傷を負ったり、気持ちが離れたりってありますよね。家族だから、改めて詫びるのも変な感じだし、一緒に生活しているからこそ、謝れない。難しいものです。直ぐには無理でも、時間が解決してくれる事もあるし、何か大きな事件によって絆が戻る事もある。震災は、とても悲しい出来事だったけど、その後、少しでも救われる人が出てきたら、未来が見えてくるんじゃないかと思うんです。未来を観て欲しいな。
震災があって、人々の心が空洞化し、自殺者が出たり、仕事が無くてボーっとしてしまったりと、気力が無くなった人が多く居るということが、描かれていました。実際に、本当に、こんな風なんでしょうね。だって、今まで住んでいた家から離れて、突然、プレハブの長屋に住んで、落ち着いて下さいって言われても、無理ですよね。このままどうなるんだろうって、不安が消えないし、自分の居る場所が無くなって、恐怖もあると思います。
この家族の長男は、義母と妻、娘と仮設住宅に住んでいるのですが、仕事も無く、妻がホテトルのような事をしてお金を稼いでいます。長男は、妻の仕事を嫌がっているのだろうと思いますが、仕事も無く、仕方なく容認している状態です。母親は、突然生活が変わり、戸惑い、痴呆が出てきてしまいます。家族が、何かをガマンして、悶々と生活している時に、20年も音信不通だった次男が、自宅に戻ってきているということを警察から聞きます。
次男の二郎は、東京で細々と働いていましたが、震災を期に、人が居なくなった故郷に帰り、昔のように生活をしたいと思い、戻ってきました。人が居なければ、何のしがらみも無く、自分の母親と一緒に、静かに生活を続けて行けると思ったのです。私、この姿を見て、これ、国も許してあげれば良いのにって思いました。たとえ、放射能があろうとも、高齢者は、それ程長い時間が残されている訳では無いし、自分の家で最後まで生活をさせてあげるのが、人間としては正しいのではないかと思いました。
無責任な考え方だと言われるかも知れませんが、放射能汚染区域であっても、高齢者や、今後、子供を作らない人など、どうしても戻りたいというなら、戻してあげれば良いと思うんです。全く知らない土地で、苦しみながら死んでいくより、放射能があろうとも、今まで暮らしていた土地で、命を全うすれば良いでしょ。その方が、悔いが残らないと思うんです。だって、放射能の影響だって、科学的に完璧に証明されている訳では無いでしょ。それなら、戻るという方達に、申し訳ないけど、影響が出るかどうか、毎月、データを取らせてもらえば良いじゃないですか。そのデータは、これからの未来の為になる訳だし、キレイ事ばかり言っているのではなく、色々考える事も大切なんじゃないかと思います。
また、そんな事言ったら、野党の政治家たちが文句を言うんだろうと思うけど、彼らは、何をやっても文句を言うんだから、相手にしてられません。いくら道理に合っていなくても、人間が生きると言う事を考えたら、色々な選択をする事も必要なのです。全てが法律で片づけられるものではありません。
人間が生きるということを、考えて、描いているのが、この映画です。生きていれば、どこででも生きていけると言いますが、確かに生きれるけど、自分の家で家族と生きられたら、それが一番だと思いませんか?特に、お年寄りに、無理に新しい環境を慣れさせるのは難しいと思います。それなら、戻してあげましょうよ、家に。本当に、考えてあげて欲しい。私だって、もし、彼らの立場だったら、戻りたいもん。もう、子供も産むつもりはないし、別に、今まで通り、生活が出来るなら、自給自足でやっていくもん。好きな人と家で暮らせるなら、それで十分でしょ。しあわせって、そういうものだと思う。
震災で汚染されてしまった土地と、ボロボロになった人々の心、完璧に元に戻すことは無理だけど、年寄は、故郷に返してあげて、若い人には、新しい土地を与えてあげることが、まず、第一歩なんじゃないかしら。うだうだ言ってないで、東電は、ダメにしちゃった土地に代わる土地を被災者に渡せば良いだけでしょ。土地の評価額で簡単に価値は判るんだから、それに代わる分を渡せばイイじゃん。難しい事は何も無いんだけど、誰が儲けて、裏金をどこに流してとかやってるから出来ないんでしょ。
もう、進んでいく道を決める時期なんじゃないですか?今、出来なければ、未来永劫、復興なんて出来ませんよ。バシッと方向を決めて、動き出してくださいよ。大切な時期に来ていると思います。そろそろ、震災の事も、人々の頭から消え始めているし、記憶が薄くなると、予算も出てこなくなる。危機を感じて下さい。
あまりにも、思う事が多くて、感想が増えてしまいました。ゴメンナサイ。だって、この映画で描いたことって、私が思っていた事なんですもん。老人は返してあげようよ。子供も産まないし、放射能の影響が出る時には死んでるんだから。お願いします。
私は、この映画、とってもお勧めしたいです。日本人の土地に対する愛や、家族の絆、色々なものが、この震災によって、基本を思い返すきっかけになったような気がするんです。本当に大切なものって、なんだったのかという事を、この映画で気が付いて欲しいんです。でも、楽しい映画ではないので、それを判って観に行ってくださいね。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
・家路@ぴあ映画生活