水道水中の放射性セシウム濃度の推移 | 三浦半島における放射線情報 (tokokのブログ)

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横須賀を中心とした三浦半島における放射能汚染状況を話題したブログです。3月に起きた原発事故以降、ひたすら環境放射線の計測を続けています。三浦半島だけに限るなら、公園・幼稚園の空間線量、土壌放射能、農作物など、誰よりも手広く測定を行っているかも。

 家庭で毎日使用する水道水。原発事故後それなりに時間が経過しましたが、今現在、どの程度の放射性セシウムが水道水に含まれているのか、気になる人も多いかと思います。

 ここ最近の蛇口水中に含まれるセシウム濃度の精密な検査結果が文科省の資料にまとめられています。
 平成24年4月~6月(3ヶ月間採取)→ こちら
 平成24年1月~3月(3ヶ月間採取)→ こちら

 この検査では、毎日1.5リットルほどを蛇口から採取し、蒸発させて得られた残留物を3か月分まとめてゲルマニウム半導体検出器で測定しています。こうすることで、約100L分の水を測定したことに相当しますので、2Lのマリネリ容器に水道水を直接入れて測定する場合に比べ、検出限界値をぐっと引き下げることができます。
したがって、今まで検出できなかったようなミリベクレル/kg オーダーの微量放射性セシウムも検出可能になります。
(例えば千葉県の検査なら、検出下限値は0.5~0.6 mBq/kgぐらい)

 資料を見ると、放射性セシウムが検出されているのは東日本の都県です。例えば福島市における今年4~6月の水道水中の放射性セシウム濃度は、
 セシウム137: 4.8 mBq/kg
 セシウム134: 3.2 mBq/kg
となっており、半減期の比較的短いセシウム134が検出されていますので、過去の大気圏内核実験のせいではなく、今回の原発事故由来のセシウムと考えられます。
また、東京新宿区における今年4~6月の放射性セシウム濃度は、
 セシウム137: 2.9 mBq/kg
 セシウム134: 
2.0 mBq/kg
です。

 一方、最も汚染の激しかった昨年3月におけるセシウム濃度は、最大値で
 福島市 
  セシウム137: 33000 mBq/kg
  セシウム134: 25000 mBq/kg 
 新宿区 
  セシウム137:  1400 mBq/kg
  セシウム134:  1000 mBq/kg 
でした。さすがにこれに比べれば現在の水道水はかなり低い濃度であり、この1年で3桁ぐらいセシウム濃度が下がったことが分かります。
(この時期は、うちもミネラルウォーター生活でした)

 現在検出されている数mBq/kgのセシウムがどの程度の量なのかを理解するために、過去の水道水の測定データと一緒にセシウム137の濃度をグラフにしてみました。(縦軸が対数表示になっていることに注意)
昨年夏頃のセシウム検出データがなかなか見当たらないのですが、横須賀市のデータがありましたのでそれもプロットしています。

蛇口水


 グラフから言えそうなことは、 
「この1年でセシウム濃度は急激に減少し、大気圏内核実験が盛んだった時代(1960年代)に検出されていたセシウム濃度程度にまで戻った。しかし、この3ヵ月の推移をみると濃度が下げ止まったようにも見えるので、今後は今の濃度を保ったまま、事故前と同じ程度の低下率で徐々に減衰して行きそうな感じである」 ということでしょうか。
いずれにせよ、今後も3ヶ月ごとに検査結果が公表されることでしょうから、どのように濃度が推移していくのか見守りたいと思います。
 
 ちなみに、数mBq/kgという量は、事故前の海水に含まれていたセシウム濃度とほぼ同じです。( 日本分析センターの報告書 PDF:880 kByte)

 念のため、現在の東京の水道水を一年間摂取した時の放射性セシウムによる内部被ばく線量(預託実効線量)を計算すると、
  大人 0.046 μSv (年間605 L摂取)
  幼児 0.020 μSv (年間365 L摂取)
と見積もられ、自然放射線被ばくによるリスクに比べれば十分低い量です。
(水の摂取量は原子力安全委員会の資料を参考にし、実効線量換算係数はICRP Pub.72の係数を使用)

以上、水道水摂取による被ばくリスクを考える際に、これらの情報が役に立てば幸いです。