柴田哲考 「下山事件 ー最後の証言」 | 七転び八転び!? 15分で1冊 

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人生、いいことの方が少ない。

「薬害エイズ訴訟」の体験とそれまでの過程、読書の感想と要約をを綴ります。

・ストーリー


戦後のミステリー事件として名高い「下山事件」に著者が迫る。

「下山事件」とは戦後間もない頃、初代国鉄総裁が線路で轢死体として発見される。

自殺説・他殺説が入り乱れ、また他殺説でも沢山の犯人が浮かび上がる。

警察としては自殺と言うことで決着しているが他殺説が根強い。


そして著者の祖父が下山事件の犯人ではという疑いが生じる。

そして著者がいろいろな人から証言を得てジグソーパズルのようにだんだん犯人を絞る。

そして重要関係者の一人で著者の祖父の盟友でもある戦後裏社会の大物「亜細亜産業」の総裁・矢板玄と念願の対面をし

首謀者のヒントを与えられる。

最後に著者の考えに基づく説を述べる。

        


本書には沢山の人物・事例があり、ごちゃごちゃしており頭の中で整理しづらい。

そこで小生なりに感じたところ・理解できたところを以下、区分け・分析してみた。

従ってどれほど正確にできたかは分からないがその辺は考慮していただきたい。




・主犯


水野成夫(田中清玄同様共産党からの転向組。二人を結びつけたのは白洲次郎)



・実行犯


林武(下山総裁の替え玉)、ビクター松井(キャノン機関)、真木一秀(殺し屋)、731部隊

・共犯(間接に又は隠蔽工作に協力):


吉田茂、白洲次郎、佐藤栄作、シャグノン、キャノン、ウィロビー、斉藤昇(国警長官)、田中栄一(警視総監)、 矢板玄(クロシ、「亜細亜産業」の総帥)、汽車の運転手二人、大西運転手(下山総裁を最後に乗せる)、CIA


・動機


水野成夫は事件当時は電気事業を指揮する団体である「鉄道電化期成同盟」の委員長。

任命者は白洲次郎で二人で利権を仕切っていた。

水野は下山総裁が土木事業をストップし続けたため利権を失っており恨みを持っていた(過去「国策パルプ社」副社長時代、小千谷発電所建設に絡みで東芝が落札し利権を得る予定だったが当時事務次官だった下山により日立が落札し会社が倒産したという経緯があった)。
     

→利権が得られない国鉄関連会社

→日本の共産化を恐れる右翼

→国鉄合理化・民営化後の乗っ取りを狙うアメリカ

→利権団体から賄賂がほしい政治家

→下山総裁の人員整理案をつぶしたい国鉄職員

             ↓

→利害が一致→水野に協力する。



・殺害方法


①事件当日、下山総裁に労働組合の裏情報を伝えたいから三越デパートへ来るように誘い出す(当時三越デパート6階にはGHQの秘密のアジトがあった。下山はタレコミ屋をよく利用していた)。

②三越デパート内で3人(?)の男に拘束される。

③林武(矢板玄の部下。「亜細亜産業」の社員)が下山総裁の替え玉として三越デパート内を目立つように歩き回りアリバイ作りをする。

④下山総裁を三越デパートの近くの亜細亜産業があるビルに連行し、731部隊の残党の力を借り殺しのプロ、真木一英(矢板玄と親交あり。一時期沢田美香の私設秘書を勤める)により殺害。

⑤亜細亜産業と繋がりの深い東武伊勢崎線(矢板玄の父が作る)に死体を運ぶ。

⑥運転士二人が予定通り死体を轢く(その後二人は口封じのため殺害される)。


・アメリカの事情


「ロックフェラー財団」「J.Pモルガン社」等のユダヤ資本の大富豪

→第一次世界も大戦で軍需産業が大儲けする

→一機・一台の単価が高い

→一つ売れるとそれだけで莫大な利益が得られる

→さらにお金を儲けたい

→世界征服をしたい

→ユダヤ大富豪がスポンサーとなり「ジャパン・ロビー」を作る

→主宰者:ハリー・カーン(ニューズ・ウィーク外信部長。沢田美喜夫妻と親交。サンダースホームの資金援助とする傍らサンダースホームをGHQの秘密のアジトとして利用)

→「ジャパン・ロビー」が「ディロン・リード社」という投資銀行を作る。

→社長:フォルスター(投資銀行出身。後に国防長官)、副社長:トレバー(投資銀行出身。後に陸軍次官へ)

→日本を反共の砦にしたい

→軍需品を売り込みたい

→鉄道は当時軍の生命線

→国鉄をスリム化(合理化)後、民営化の際、アメリカが鉄道を乗っ取ることを計画

→安く買いたいためドッジ・ラインの1ドル=360円をゴリ押しする(戦前のレートの1/72で済むため)

→下山の合理化案は手ぬるい

→下山は邪魔

→殺害を容認及び協力

→日米安保に繋がる



・日本の事情


・大陸残党組(国鉄関連会社)

→資源のない狭い日本を脱出し資源豊富な中国を目指す

→下山もそのうちの一人

→経済の生命線は「満鉄」

→敗戦により夢破れその夢を「国鉄」に託す

→設備の発注が利権の温床となり賄賂などが役人・政界に流れる

→下山総裁は金を受け取らないし「赤字を出すな」というGHQの指令を忠実に守り設備の発注をしない

→利権屋に恨まれる


・大陸残党組(反共・右翼)

→共産主義の台頭は許さない

→合理化をなかなか進めない下山殺害はやもなし


・政治家


佐藤栄作

→満鉄副総裁の松岡洋介の口利きで入社

→兄、岸信介のA級戦犯免除のため矢板玄の懇願

→吉田茂により当選1年目にして党幹事長に抜擢

⇒頭が上がらない、義理がある、断れない


・吉田茂

→合理化後の民営化は同郷の岩崎弥太郎の三菱にやらせたい

→政治に介入してくる軍人が嫌い

→軍は米軍に任せてお金は軍ではなく経済に回したい

→共産主義の台頭は許さない

⇒下山総裁の殺害を容認・協力

⇒日米安保に繋がる