捉えられたペンギン星人はその身柄の引き渡しの保護者として、リョウタ少年を指名した、ペンギン星人には地球に他の知人などおらず、水族館の飼育員を保護者とすれば、再び、水族館に戻ることになる。
地球にたったひとりの友人よ、侵略者である私をあたたかく迎えてくれたまえ……。恩義には誠心誠意、応えるつもりだ。
「ブツブツ言わないで早く歩くっ‼」
同行する警察官の容赦ない檄を浴びせられる、使者として来訪した彼には、この扱いは不本意だった、だが、仕方がない。
いましばらくの我慢だ、我々ペンギン星人がこの知的水準が低く暴力に満ちた星を手に入れたそのとき、治安を司るこの星の警察官たちは然るべき刑を持って対処せざるを得ないだろう……。
もはや歩行する意思をなくしたペンギン星人はずるずると引き摺られながら、リョウタ少年の元へ向かう。
「なんだありゃ?」
警察官がずるずると着ぐるみを引き摺っていた、その着ぐるみは中にヒトが入っているのか、不満めいた独り言をつぶやいている。
男たちは旅の最中だった、あまりの暑さにエンジントラブルを起こして停止してしまったバンを押し、不慣れな地でスタンドを探し回っている。
「そんなこといいから押せ押せ、陽がくれちまったら面倒だ」
運転席からヒラサワくんが掠れた声で叫ぶ。
「……んなこと言ってもなぁ……もう限界だよ、なあ、ジョニー?」
天野くんは隣にいるはずのジョニーに愚痴をこぼす、意外にヒラサワくんは人使いが荒かった、最年長であることを言い分に、押す側になる気は最初からなかったのだ。
「ちょ……休憩しよう、なあ、ジョニー……あれ、ジョニー?」
ジョニーは隣にはいなかった、左右に振り替える、彼の姿が視界に入る。
「……君、ひょっとしてペンギン?」
「分かるのか……?」
「うん、有名だからね、ペンギンって」
なんと……ペンギン星人は思う。私のようなペンギン星人を既に知る者が……? この若者……どこかで見たような……あ、あれはサイヤ人か、こいつとは違うな……。
「で、ペンギンなのに喋るのはなぜだい?」
「君は私を着ぐるみだとは言わないのか……?」
ジョニーはクールに唇を尖らせ、人差し指をその前で振る。
「こんな暑い時期に着ぐるみなんて着ないよ、当たり前じゃん」
「そうか……私を他星人だと理解してくれたのは、君ともう一人しかいない……私のことは口外しないでいただきたい」
「いいよ、ナイショってことだね」
ふたりは絆の証に固く手を握り合う。ここにひとつ、未知との交流が生まれたのだ。
「……最後に君の名を聞いても……?」
「おれはジョニー‼ パンクロッカーだ‼」
「ありがとう、ジョニー……」
一瞬のすれ違いが魂の交歓を生むこともある。疑うことのない純粋な生命と生命は、互いの差など気にならなかった、ふたりは手を振り、再会すらも心に誓う。
「おい、ジョニー‼ 着ぐるみと遊んでないでクルマ押せ‼」
遥か前方にて叫ぶ声が聞こえた。
〈双方の迷走はつづく……〉
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イケメン・ジョニーはスーパースター⁈ (おまとめ篇。)
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the sunshine underground(改訂版)
⇒the sunshine underground #13
⇒the sunshine underground #14
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performed by billy.