●能のシテ方の流派【喜多流】
★しゃか【釈迦】
《(梵)kyaの音写》
1.古代インド、現在のネパール地方に住んでいた種族。釈迦の出た種族。シャーキャ族。釈迦族。
2.能面の一。仏を表す金泥塗りの大きな面。喜多流の「大会(だいえ)」で、大見(おおべしみ)の上に重ねて用いる。
★きた‐りゅう〔‐リウ〕【喜多流】
能のシテ方の流派の一。喜多七大夫が興したもので、江戸初期、元和5年(1619)ごろに幕府から認められた新興の流派。
★して‐かた【仕手方】
能楽師のうち、シテ・シテヅレ・子方・地謡・後見などを専門に務める者。また、その家柄。観世・宝生・金春(こんぱる)・金剛・喜多の五流がある。→ワキ方
★わき‐かた【脇方】
能楽師のうち、ワキ・ワキヅレを専門に務める者。また、その家柄。進藤・春藤・福王・高安・宝生の五流があったが、進藤・春藤は廃絶した。→シテ方
★わき‐く【脇句】
連歌・連句で、発句(ほっく)の次に七・七と付ける第2句。ふつう、発句と同季。脇。
★ほっ‐く【発句】
1.短歌の最初の句。初5文字、または第1・2句。のちには上の句。
2.連歌・連句の第1句。五・七・五の17音からなる句。立句(たてく)。→挙句(あげく)
3.2が独立した短詩形として単独で作られたもの。俳句。
4.せり市で、最初の付け値。
「八十両といふ―から安ければ、負けぬ負けぬ」〈浄・浪花鑑〉
★あげ‐く【挙(げ)句/揚(げ)句】
1.連歌・連句の最後の七・七の句。→発句(ほっく)
2.終わり。結果。末(すえ)。「苦労した―が失敗とは情けない」
3.(副詞的に用いて)結局のところ。その結果として。現在では、連体修飾語を上に付けて用いることが多い。「さんざん迷った―買ってしまった」
★し‐て【仕手/▽為手】
《「し」はサ変動詞「する」の連用形。「仕」は当て字》
1.あることをする人。やりて。「世話の―がない」
2.(ふつう「シテ」と書く)能・狂言の主人公の役。また、その演者。中入りのあるときは前ジテと後(のち)ジテとがあるが、同一役者が演じる。→ワキ →ツレ →アド
3.(仕手)株式市場などで、投機によって大きな利益を得ることを目的として、大量の売買をする人。「―戦」
★のう【能】
1.ある物事をなしとげる力。はたらき。能力。「人を動かす―にたける」
2.ききめ。効能。「薬の―書き」
3.技能。また、誇ったり取り立てていったりするのにふさわしい事柄。「机に向かうだけが―ではない」
4.日本の古典芸能の一。中世に猿楽から発展した歌舞劇。能は歌舞劇の一般名称で、田楽・延年などの能もあったが、猿楽の能がもっぱら盛行したため、それを単に能と称した。室町時代に観阿弥・世阿弥父子が大成、江戸中期にほぼ現在の様式となった。役に扮する立方(たちかた)と声楽をうたう地謡方(じうたいかた)、器楽を奏する囃子方(はやしかた)があり、立方はシテ方・ワキ方・狂言方、地謡方はシテ方、囃子方は笛方・小鼓方・大鼓方・太鼓方がつとめる。現在、その流派はシテ方に五流、ワキ方に三流、狂言方に二流、囃子方に一四流がある。能の詞章を謡曲といい、ふつう脇能物・修羅(しゅら)物・鬘(かずら)物・雑物・切能(きりのう)物の五つに分類し、現在約240曲が上演可能である。
★きょうげん‐かた〔キヤウゲン‐〕【狂言方】
1.演能の際に、狂言を演じる人。本狂言・間(あい)狂言・三番叟(さんばそう)などをつとめる。狂言師。
2.歌舞伎の狂言作者のこと。江戸後期には特に四、五枚目の下級作者をいい、立作者の下でせりふの書き抜き、幕の開閉などの仕事をした。
★きょう‐げん〔キヤウ‐〕【狂言】
1.日本の古典芸能の一。猿楽のこっけいな物真似(ものまね)の要素が洗練されて、室町時代に成立したせりふ劇。同じ猿楽から生まれた能に対する。江戸時代には大蔵・和泉(いずみ)・鷺(さぎ)の三流があったが、鷺流は明治末期に廃絶した。本狂言と間(あい)狂言に大別される。能狂言。
2.歌舞伎。また、その出し物。歌舞伎狂言。
3.人をだますために仕組んだ作り事。「―強盗」
4.道理にはずれた言葉や動作。
 「仏法を知らざる痴人(ちじん)の―なり」〈正法眼蔵・礼拝得髄〉
5.戯れの言葉。ざれごと。冗談。また、ふざけて、おもしろおかしく言うこと。
 「正直にては良き馬はまうくまじかりけりと―して」〈盛衰記・三四〉
★さる‐がく【猿楽/▽申楽/▽散楽】
1.平安時代の芸能で、一種のこっけいな物まねや言葉芸。唐から伝来した散楽(さんがく)に日本古来のこっけいな技が加味されたもの。相撲節(すまいのせち)や御神楽(みかぐら)の夜などの余興に即興で演じられた。
2.平安時代から鎌倉時代にかけて、寺社に所属する職業芸能人(猿楽法師)が祭礼などの際、1を街頭で行ったもの。
3.平安時代以降、諸大寺で、呪師(じゅし)の芸能(広義には猿楽の一種)のあとに1が演じられたもの。
4.中世以降、23が演劇化して能・狂言が成立したところから、明治初期まで能・狂言の古称。→能 →狂言
★すまい‐の‐せち〔すまひ‐〕【相=撲の節】
平安時代、毎年7月に宮中で、諸国から召し集められた相撲人(すまいびと)の相撲を天皇が観覧した行事。初めは7日、のち、大の月は28日・29日、小の月は27日・28日となった。2日前にけいこの内取りがあり、当日は召し合わせといって20番(のち17番)の取組があり、翌日、優秀な者を選んで行う抜き出、衛府の舎人(とねり)などによる追い相撲があった。場所は多く紫宸殿(ししんでん)南庭で行われた。すまいのせちえ。すもうのせち。すまい。《季 秋》
★み‐かぐら【▽御神‐楽】
神楽を敬っていう語。特に宮中で行われる神楽をさす。→神楽1
★かぐら【神‐楽】
《「かみくら(神座)」の音変化》
1.神をまつるために奏する舞楽。宮中の神事芸能で、先行の琴歌神宴(きんかしんえん)などに、石清水八幡(いわしみずはちまん)などの民間の神遊びを取り込み、平安時代に内侍所御神楽(ないしどころみかぐら)として完成。楽人は左右の本方(もとかた)・末方(すえかた)の座に分かれ、歌い奏し、主要部分では舞を伴う。御神楽(みかぐら)。
2.諸社、民間の神事芸能で、神を迎え、その御魂を人々の体内にいわいこめる一連の儀礼中に行われる歌舞。採物(とりもの)神楽(出雲流(いずもりゅう)神楽・巫女(みこ)神楽)・湯立(ゆだて)神楽(伊勢流神楽)・獅子(しし)神楽など、多くの系統がある。《季 冬》
3.能の舞事の一。女神・巫女などが幣束を持って優美に舞う。また、その囃子(はやし)。笛を主に、大鼓・小鼓・太鼓が特有の神楽の譜で演奏される。
4.狂言の舞事の一。また、その囃子。笛と小鼓の囃子で、巫女が鈴と扇を持って舞う。能の神楽とは別の曲。
5.歌舞伎下座音楽の一。能管・太鼓・大太鼓ではやす。3からの流用で、時代物の神社の場面などに用いる。本神楽。
★いわしみず‐はちまんぐう〔いはしみづ‐〕【石清水八幡宮】
京都府八幡市八幡高坊にある神社。旧官幣大社。祭神は品陀別命(ほんだわけのみこと)・息長帯姫命(おきながたらしひめのみこと)・比売大神(ひめおおかみ)。貞観元年(859)宇佐八幡宮を勧請(かんじょう)したのが起源。石清水放生会(ほうじょうえ)は三大勅祭の一。宇佐・筥崎とともに、三大八幡といわれる。男山八幡宮。
★かみ‐あそび【神遊び】
神前で、歌舞を奏すること。また、その歌舞。神楽(かぐら)。
「かご山やさか木の枝ににぎかけてその―思ひこそやれ」〈夫木・一八〉
★もと‐かた【本方/元方】
1.宮廷の御神楽(みかぐら)のとき、二組に分かれた歌い手のうち、先に歌いはじめる方。神殿に向かって左側に位置する。⇔末方(すえかた)。
2.卸売りする店。問屋。また、製造元。
3.事業の元手を出す人。出資者。また、興行の主催者。興行主。
★すえ‐かた〔すゑ‐〕【末方】
宮廷の御神楽(みかぐら)のとき、二組に分かれた歌い手のうち、あとに歌いはじめる側。神殿に向かって右側に位置する。⇔本方(もとかた)。
★げざ‐おんがく【下座音楽】
歌舞伎の効果音楽。唄・合方(あいかた)・鳴り物に大別され、三味線・笛・太鼓などを用い、舞台下手の黒御簾(くろみす)の中で演奏する。幕の開閉、人物の出入り、せりふその他の舞台演技の効果を上げるためのもの。陰囃子(かげばやし)。
★あい‐かた〔あひ‐〕【合方】
1 能楽で、謡(うたい)の伴奏をする大鼓(おおつづみ)・小鼓(こつづみ)・太鼓・笛による演奏。
2 邦楽で、唄と唄との間をつなぐ、三味線の合いの手の特に長いもの。長唄に多い。
3 歌舞伎の下座音楽で、三味線を主とし唄を伴わないもの。
★なり‐もの【鳴(り)物】
1 楽器。また、音曲。
2 歌舞伎下座音楽で、三味線と唄以外の鉦(かね)・太鼓・鼓・笛などの楽器による囃子(はやし)または擬音。また、それらの楽器。
★うた【歌/唄】
1 拍子と節をつけて歌う言葉の総称。また、それを歌うこと。神楽歌・催馬楽(さいばら)・今様(いまよう)から、現今の唱歌・民謡・歌謡曲などまで種類が多い。
2 一定の音節数によって語の調子を整えた感情の表現。長歌・短歌・旋頭歌(せどうか)や近代詩などの総称。
3 (歌)和歌。特に、短歌をさしていう。「―の道」
4 (唄)三味線を伴奏とする「うたいもの」の称。長唄・端唄(はうた)・小唄・地唄など。
◆2で、近代詩の場合には「詩」とも書く。http://p.tl/JY4i
[下接語]
東(あずま)歌・後(あと)歌・糸繰り歌・田舎歌・稲刈り歌・稲扱(こ)き歌・今様歌・伊呂波(いろは)歌・祝い歌・牛追い唄・牛方唄・臼(うす)歌・江戸唄・大歌・置き唄・踊り歌・替え歌・返し歌・神楽歌・懸け歌・陰唄・数え歌・片歌・門付(かどづけ)歌・賀の歌・歌舞伎(かぶき)唄・神歌・上方唄・唐歌・杵(きね)歌・木遣(や)り歌・口説き歌・組歌・久米(くめ)歌・下座(げざ)唄・恋歌・小唄・小歌・腰折れ歌・琴歌・木挽(こび)き歌・子守歌・在郷(ざいごう)歌・棹(さお)歌・防人(さきもり)の歌・座敷歌・戯(ざ)れ歌・騒ぎ歌・地歌・仕事歌・地搗(つ)き歌・芝居唄・三味線歌・祝儀歌・巡礼歌・畳句(じょうく)歌・田植え歌・田歌・田打ち歌・立(たて)唄・茶摘み歌・継ぎ歌・付け歌・鼓唄・紡ぎ歌・連ね歌・手鞠(てまり)歌・鳥追い歌・長唄・長歌・長持(ながもち)歌・端(は)唄・白鳥の歌・鼻歌・浜歌・流行(はや)り歌・引き歌・鄙(ひな)歌・百首歌・琵琶(びわ)歌・風俗(ふぞく)歌・船歌・祝(ほぎ)歌・盆歌・盆踊り歌・前歌・馬子唄・鞠(まり)歌・短(みじか)歌・持ち歌・本(もと)歌・大和(やまと)歌・童(わらべ)歌
★かぶき【歌舞伎/歌舞×妓】
《天正時代の流行語で、奇抜な身なりをする意の動詞「かぶ(傾)く」の連用形から》近世初期に発生、江戸時代の文化が育てた日本固有の演劇。先行の舞踊・音楽・科白劇(かはくげき)などの諸要素を集大成した、庶民的な総合演劇として今日に至る。歌舞伎劇。歌舞伎芝居。
★かはく‐げき〔クワハク‐〕【科白劇】
純粋にせりふとしぐさだけからなり、歌や踊りなどのない劇。音楽劇・舞踊劇などに対する呼称。

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