内閣府が行った世論調査で、悪い方向に向かっている分野として外交が最も多く挙げられ、平成10年以来はじめてトップになったという、NHKの記事を紹介した。
ちなみに、これが内閣府の該当ページ(http://www8.cao.go.jp/survey/h25/h25-shakai/2-3.html)。
私は、このブログ記事で、セキュリティ・ダイヤモンド構想が国民に知らされていないことが、この結果の要因ではないかと書いた。どれくらい知らされていないかということについて、西村幸祐先生の著書を紹介した。
先日、「ジャパニズム 第17号」(青林堂、2014年)を見てみたら、西村幸祐先生の論考があった(16ページ以下)。
マスメディアがどのように安倍外交を報じているかが論じられていた。
これを読んで、ますますこの世論調査結果に納得がいった。
なお、西村先生の関連ツイートとしてhttps://twitter.com/kohyu1952/status/413683958098837504。

西村先生のこの論考を読むと、いかに安倍外交が巧みであるかがわかる。
そして、その安倍外交を解説できないマスメディアの知的劣化もわかる。
最も重要なのは、平成25年(2013年)12月13日から15日まで開催された、日本・ASEAN特別首脳会議である。
しかし、マスメディアはこの特筆すべき成果を、さっぱり評価しないのである。
というより、中国共産党の機関紙・人民日報と同じ視点でしか評価できない。
惨憺たる有様である。
まぁ、尖閣問題が悪化したのは石原都知事のせい、などと言っていた連中だからねぇ。
日本・ASEAN特別首脳会議は、東京に東南アジア諸国連合(ASEAN)十カ国の代表が集まった、アジアサミットである。
同年11月23日に中国が発表した防空識別圏(ADIZ)が具体的問題に取り上げられた。
この会議は、中国を牽制する意味を持つ。
また、中国の防空識別圏の発表後、中国の情報収集機がわが国の防空識別圏に入ると、航空自衛隊はF15戦闘機をスクランブル発進させ、その2日後の25日には、米国のB52戦略爆撃機が事前通報など一切なしに中国の主張する防空識別圏をかすめとんだ。その後の民間航空機フライトプラン提出問題などは些細なものである。
安倍外交は、中国封じ込めを着実に進めている。
西村先生は、日本・ASEAN特別首脳会議は、昭和18年(1943年)に東京で開催された大東亜会議に匹敵する意義を持つアジアサミットであると言う。
大東亜会議では、欧米のアジアに対する植民地主義・帝国主義を批判する大東亜共同宣言が採択された。
日本・ASEAN特別首脳会議も、領土的野心を持つ帝国主義中国を批判する意味を持つ。
従来、中国は、シンガポール、タイ、ラオス、カンボジアを中心として、ASEAN諸国に資本投下をして懐柔してきたのだが、この会議は、今までの中国のASEAN諸国への浸透を跳ね返す意味を持つ。
大逆転である。
こういう意義を、マスメディアは語ることができない(産経新聞の一部記事を除く)。
セキュリティ・ダイヤモンド構想も知らなければ日本・ASEAN特別首脳会議の意義もわからない、ということになれば、ただただ中韓との摩擦を見て、外交が悪化していると考えてしまってもやむを得ないところではある。
「あと2年なんですよ」
安倍晋三内閣総理大臣が、平成25年4月に、西村先生に漏らした言葉である。
「2年」とは何か。
中国の軍事力が自衛隊のそれを上回るとされるタイムリミットである。
安倍総理大臣は、この危機感を持って政権運営をしているのである。
◆◆◆ 関連動画 ◆◆◆
「【ニュースの読み方】大東亜会議の今日的意味[桜H25/11/6]」YouTube2013年11月6日
https://www.youtube.com/watch?v=LgmCsWEq_bk