プロフィールNOTOYA Reiko

卍丸のブログ
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平成5年(1993)10月12日 に低温核融合の特許を申請している

出願番号 特願平5-254351

公開番号 特開平6-317686

平成6年(1994)11月15日 公開

要約
電解質の軽水溶液を遷移金属、アルミニウム、錫またはステンレス鋼からなる空隙率が0.3~35容量%の多孔質体を陰極として電気分解することを特徴とする低温核融合方法。

発明の詳細な説明
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は低温核融合方法に関する。詳しくは高温プラズマ状態を達成することなく、常温等の低温で電気化学的に核融合を行なうことにより、エネルギーとしての利用が容易な低温核融合方法に関する。
【0002】
【従来の技術とその問題点】エネルギー資源として核分裂反応を利用した原子力エネルギーは実用化されているが、安全性、放射性廃棄物等の問題がある。この点から核融合はクリーンなエネルギー資源として期待されているが、核融合を発現させるためには高密度で超高温のプラズマを閉じ込めなければならず、非常に強力な磁場等を必要とする等、技術的困難性は極めて高い。
【0003】一方、1989年3月23日、M.フライシュマン(英、サウサンプトン大学)とS.ポンス(米、ユタ大学)は陰極をパラジウム、陽極を白金とする重水の電解系で、長時間電流を流し続けると、異常な発熱と中性子が認められると報告した(M.Fleischmann and S.Pons, J.Electroanalytical Chem.,261,301(1989))。この現象は一般にコールドフュージョン(Cold Fusion)、低温核融合(常温核融合)と呼ばれ、極めて簡便に核融合反応を行わせることの出来る方法として注目される。
【0004】しかし、この方法は、トータルでみると入力より出力が大きくならないこと、ある時突然起きる現象であること、パラジウム陰極は一回しか使用できないこと、重水およびパラジウムは高価であることなどの欠点を有する。また、最近、R.ミルズ(米)とS.クナイジス(米)はカリウムイオンの軽水溶液をフォイル状ニッケル陰極を用いて電解することにより、低温核融合を実現している(R.Miles and S.Kneizys, Fusion Technol.,19,65(1991))。しかし、この方法をさらに検討したその後の報告では得られる過剰熱(〔出力─入力〕/入力で表現される)は実用的にはたかだか30%が限度であり、実用化には難がある。また、ニッケル陰極は再使用出来ない、電力の印加が電流のオン/オフを繰り返す等複雑である、定常的な熱発生は出来ない等の課題を有する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記のような難点を解決し、定常的に熱を、しかも大量の過剰熱を発生し、安価で、長期繰り返し使用可能な電極を用い、安全に低温核融合を行わせることの出来る方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】電解液水溶液中で多孔質体の陰分極電極を用いて陰分極を行うと、水素電極反応が生起され、その際、電解質の金属イオン(MZ+:zはイオン価数を表す)が電極表面において電子移動を起こし、電極表面層に吸着、蓄積し、さらには電極素材との間で、下記式〔1〕で示されように、金属間化合物(式中ではM(I)で示す。)を形成することが、本発明者の研究により知られている(R.Notoya and A.Matsuda, J.Research Inst. Catal. Hokkaido Univ.,14,198(1966); R.Notoya, Shokubai, 61(1970); R.notoya, Elektrokhimiya,in press)。
【0007】この電極反応は、〔1〕 MZ+ + ze- = M(I) 、 〔2〕M(I) + H2 O = MZ+ + OH- + H および 〔3〕 2H= H2 となるが、この反応の中間体である金属中間体M(I)と吸着(吸収)水素Hが、電極上に十分蓄積されるように工夫すれば、これらの中間体同士が核反応を起こし、重水を用いないで通常の軽水の溶液系で大量の発熱が得られることを見出し、本発明に到達した。
【0008】本発明は、電解質の軽水溶液を遷移金属、アルミニウム、錫またはステンレス鋼からなる空隙率が0.3~35容量%の多孔質体を陰極として電気分解することを特徴とする低温核融合方法に存する。以下、本発明を詳細に説明する。本発明において陰極として使用する多孔質金属を構成する金属元素は遷移金属、アルミニウム、錫またはステンレス鋼である。遷移金属としては、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir,Pt、Au、Hgが挙げられる。特に好ましい構成金属はニッケル、コバルトおよび白金である。
【0009】本発明においては、これらの金属を用いて空隙率5~35容量%の多孔質体を陰極として使用する。多孔質電極の製造は各種の方法が採用できるが、好ましくは粒径が100μm以下、好ましくは5nm~100μmの金属粉を常温または高温中で加圧して成形して得る。1μm未満では成形が困難であり、100μmを超えたものを原料としたものでは電極としての堅牢性に優れたものが得られにくい。加圧する圧力は10数トン/cm2 までの範囲から適宜選択される。原料金属粉は二種以上混合して用いてもよく、また合金化したものを用いてもよい。
【0010】陰極の空隙率は0.5~35容量%とする必要がある。0.5容量%未満では効果が十分でなく、35容量%を超えると堅牢性に優れた陰極は得られずまた前述した金属中間体M(I)と吸着(吸収)水素Hが電極上に十分蓄積する効果が十分発揮されない。特に好ましい空隙率は20~35容量%である。陰極の製法として特に好ましい方法は、原料の遷移金属、アルミニウム、錫またはステンレス鋼として粒径1~100μmのほぼ球状の微小球体を使用する方法である。特に粒径が10~30μmの範囲にあるほぼ同じ粒径の微小球体を使用して成形した成形体が、電極としての活性が高くまた前述の陰極上の現象が生起し易く好ましい。また、この際、原料金属粉とは異なる種類の遷移金属、アルミニウムまたは錫を、平均粒径が1μm以下の微小粉体の形で添加してもよい。また、形成された成形体を異なる種類の遷移金属、アルミニウムまたは錫の溶液で含浸、塗布、電解あるいは無電解メッキ処理等を施してもよい。
【0011】陰極はその多孔質部分を電解液に浸漬する前に、真空引きを行って吸着している物質やミクロポア(細孔)中に存在する気体等を除去したのち、水素、酸素、ヘリウムガスまたは電解液でミクロポアを満たすことが好ましい。使用する電解液は、電解質を溶解した軽水てある。通常の水を用いて低温核融合を実現するのが本発明の特徴であるが、重水が存在していても悪影響はない。従って天然水や通常の工業用水等で十分可能であるが、好まざる電極反応を引き起こす不純物を除去するために、蒸留法あるいはイオン交換法等の通常の精製法で精製された軽水を使用する。また重水を添加、混合したものを用いてもよい。
【0012】電解質としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、第3A族元素および遷移金属の水酸化物、炭酸化合物、硫酸化合物、燐酸化合物、硝酸化合物、ハロゲン化合物および過塩素酸化合物が使用できる。具体例としては、例えば、KOH、K2 CO3 、CoSO4 、LiOH、Li2 CO3 、NaOH、Na2 CO3 、KCl、KNO3 、K2 SO4 、KClO4 、K3 PO4 等が挙げられるが、特に好ましくはK2 CO3 およびCoSO4 である。
【0013】これらの電解質は二種以上を混合して用いてもよく、その濃度は軽水の溶液として溶解していれば特に制限されないが、通常0.01モル/l以上、好ましくは0.1モル/l以上である。電気分解の際の陰極と陽極間に印加される極間電圧は通常1.5から50V程度、好ましくは2から10Vである。両極間に流れる電流量は、電極の見掛けの表面積1cm2 あたり通常1mA以上であり特に制限されない。
【0014】電解は、常温、常圧下で行ってよく、必要に応じて加圧下で行ってもよく、温度も0℃から300℃あるいはさらに高温でもよい。
【0015】
【実施例】以下実施例により本発明を詳細に説明するが本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
実施例1粒径10μm未満と20μm超のものを除去した粒径10μm~20μm(平均粒径15μm)の完全球に近いニッケル微小球体からなるニッケル粉末を、常温下10ton/cm2 荷重でプレス成形して、空隙率30%の1x0.5x0.1cmの板状陰極を作成した。
【0016】この陰極とこれに対向するPt製陽極およびPt製参照電極で構成したガラス製の同一の電解槽(a)、(b)の2槽に濃度0.5モル/lの炭酸カリウムの軽水溶液20mlを入れたものを恒温槽に収容した。恒温槽は電解の間中、19.40℃プラスマイナス0.01℃に保持される。電気分解を開始し、電解槽中の電解液の温度は開始時の20℃から60℃に上昇した。
【0017】電解のために加えたエネルギーWinput は次の式から求められる。
【0018】
【数1】Winput =I(E-1.482V)
ここで、Iは電流値、Eは陰極と陽極との電位差、1.482Vは H2 O=H2 + (1/2)O2 に要するエンタルピー変化の値を示す。リファレンスとして同じ電解槽に、抵抗値14オームのニクロム線ヒーターからなる標準ヒーターを挿入したものを用い、電解の時と同じエネルギーWinputを与え、その際の電解液の温度上昇を同様に測定して比較解析を行った。
【0019】図1は電解槽(a)、(b)の電解液の温度上昇(それぞれ1a、1bで示す)とリファレンスの温度上昇(2で示す)を示す。電解液が2.2joule.sec -1のWinput に対して初期温度20℃から50℃に上昇していることが分かる。またWinput と温度上昇が比例関係にあり、リファレンスに対して著しい温度上昇があることが分かる。この差は過剰熱(ΔWoutput)として定義される。
【0020】図2は過剰熱ΔWoutputと加えたエネルギーWinput の関係を示す図であり、図2からΔWoutputがWinput に対し3倍以上であることが理解される。電解の後、電解液を検出精度0.02ppm の炎光分光分析装置でカルシウム濃度を測定したところ、4.4wt.ppmおよび3.6wt.ppmのカルシウム濃度の増加が確認された。
【0021】以上のことから、次のような核反応が起こったものと推測される。
【0022】
【数2】

【0023】実施例2実施例1において、電解質を濃度0.2モル/lの硫酸コバルトに代えた以外は実施例1と同じにして行った。電解液の温度は20℃から50℃まで上昇し、50℃の状態が100時間維持された。このときの過剰熱ΔWoutputと加えたエネルギーWinput の関係を図3に示す。以上のことから、次のような核反応が起こったものと推測される。
【0024】
【数3】

【0025】実施例3実施例1において、電解質を炭酸カリウムから濃度0.5モル/lの水酸化リチウムに代え、また、陰極として、実施例1で用いたのと同様の多孔質ニッケル電極および白金黒付き白金を用いた以外は実施例1と同様に電解を行った。その結果得られた過剰熱ΔWoutputと加えたエネルギーWinput の関係を図4に示す。ニッケル電極の場合220%、白金の場合250%の過剰熱が発生した。
【0026】以上のことから、次のような核融合が起こったものと考えられる。
【0027】
【数4】

実施例4実施例1において、多孔質ニッケル陰極を、電解前に10-6mmHgに到達した真空度のガラス管に100時間入れ、その間数時間数回にわたり100~150℃に加熱した後、電解液をガラス管に導入し、ニッケル陰極中の細孔を電解液で満たした。これ以外は実施例1と同じにして電解を行った。
【0028】図5はその結果得られた過剰熱ΔWoutputと加えたエネルギーWinput の関係を示す図で、5aは上記処理を行った陰極を用いた場合、5bは上記の真空処理を施さなかった場合を示す。真空処理を行った場合、過剰熱は370%以上であるが、真空処理を行わなかった場合は240~170%であり、処理を行わなかった場合は過剰熱が半減し、さらに電極の汚染による活性低下が見られた。
【0029】
【発明の効果】本発明の低温核融合方法は、過剰熱を300%以上も発生させることが出来、定常電流による入力に対して比例した定常発熱が出来る。また陰極は100回以上も再使用あるいは長期使用可であり、陰極として堅牢であり自由な形状に成形出来る。また中性子やトリチウムを極微量しか発生しないので、安全で容易に安価なエネルギー資源として多いに期待される。



これとは別に核融合に伴う副産物として金Auができる特許も出願している
ロックフェラーがわざわざ日本を訪れ、天皇に面会したのもこういうことがあったからかもしれない
ジョージ・ソロスが所有していた8億ドル相当の金(ゴールド)を手放したというのもつながってくる
いい技術があるのに、なぜ日本政府は何もしないのか不思議だ
どこからか圧力を受けているのか?
タイムラグがあるとしても未来は暗いものではなく明るいと思う
世界中が閉回路の核融合発電の恩恵を受けるなら、今回のような原発事故もなくなり
石油をめぐって戦争をすることもなくなるし希少金属のGOLDが生産できる
今が人類にとって大きな転換点だ
アメリカドルの基軸通貨体制が崩壊した後、日本の円が基軸通貨になる可能性もある
やがて世界中でGOLDが生産されるようになれば、いよいよ世界統一通貨というものが、視野に入ってくると思う

http://ameblo.jp/sugachii/entry-11029067621.html





平成8年(1996)1月11日 に出願

出願番号 特願平8-3003

公開番号 特開平9-197077

平成9年(1997)7月31日 公開

特許請求の範囲
【請求項1】 電極材料として核変化を生じ得る物質を含んでなる常温核融合用電極。
【請求項2】 核変化により同位元素を生じ得る物質を電極材料として含んでなる請求項1に記載の常温核融合用電極。
【請求項3】 貴金属並びに自然界における存在量が極く稀な元素と原子番号の近い元素群から選ばれた少なくとも一種の元素を電極材料として含んでなる常温核融合用電極。
【請求項4】 前記自然界における存在量が極く稀な元素と原子番号の近い元素がW,Mo,Tc,Re,Ag,Cd,Hg,In,Tl,Sn及びPbからなる群から選ばれた少なくとも一種の元素である請求項3に記載の電極。
【請求項5】 放射性物質を含んでなる請求項1に記載の常温核融合用電極。
【請求項6】 核変化を生じ得る物質からなる電極を用いて同位元素、貴金属又は稀元素を製造する方法。
【請求項7】 請求項5に係る電極を用いて放射性物質を無害化する方法。


発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は常温核融合用電極並びにその電極の核変換によって、同位元素、貴金属、稀元素、非放射性物質又は熱エネルギーを製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、放射性元素の製造は、原子炉や荷電粒子加速器(サイクロトロンや線形加速器)を利用した中性子照射によって行われている。これらは、中性子のエネルギー調節が精確でなく、生成効率が良くないという問題がある。またかかる方法は利用に際して危険を伴い、高い使用料を必要とし、その方法は一般に簡便とは云い難いのが現状である。従って、製造された同位元素は非常に高価である。
【0003】放射性廃棄物の処理については、現在は、原子炉の「灰」を、国外に運んで再処理燃料とし、他の高レベルおよび低レベル廃棄物は、単に海洋投棄又は固体化して種々の容器に封入し、地下に貯蔵しているのみで、決定的な処理方法は見い出されていない。
【0004】核エネルギーの有効利用の方法としては、従来、原子炉発電と熱核融合の方法がある。しかしながら、前者はエネルギー効率が低く、危険な灰を大量に排出するので好ましくなく、後者は、30年来、国の内外において強力に開発研究が推進されてきたにもかかわらず、107 ℃という超高温下に、高圧プラズマを作り出さなければならず、簡便な方法とは云い難く、実用化されるまでには至っていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明は、前記した従来の放射性元素の製造、放射性廃棄物の処理及び核エネルギーの有効利用上の問題点を解決して、核変換により、同位元素、貴金属、稀元素、又は熱エネルギーを製造し得る常温核融合用電極を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明に従えば、電極材料として核変化を生じ得る物質を含んでなる常温核融合用電極が提供される。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明者は、常温核融合連鎖反応のための陰極及びその製造方法並びに電解液を先に提案した(特開平7-174878号公報参照)。本発明者は、その後、電極材料の金属の原子核変換反応を用いて同位元素、貴金属、稀元素、熱エネルギーを製造する方法を開発すべく更に研究を進めた。その結果、例えば多孔質金属陰極に、電極素材として、または、合金、混合物、化合物、吸収・吸着物、付着物および内包物として、他の元素や同位元素を含有させ(以下、混入と呼ぶ)、これを水、非水溶媒又は溶融塩から成る電解液中で電解することにより、下記の核反応およびその生成核の自然壊変を引き起こし、別の元素や同位体を製造し得る電極が提供される。
【0008】本発明の第一の態様に従えば、放射性又は非放射性同位元素が電極の核変換により、中性子捕獲等下記の核反応及びそれら生成物の自然核壊変(下記)の組み合わせにより製造される。製造される同位元素の種類は非常に多く、特に無単体同位元素を得易いという利点がある。従来の技術に比べて、本発明による方法は電解条件のコントロールを非常に精確に行うことが出来るため、目的物質のみを精度良く製造することが可能である。
【0009】核反応:(n,γ),(n,f),(n,p),(n,d),(n,t),(n,α),(n,α),(p,γ),(p,xn),(p,d),(p,t),(p,α),(d,γ),(d,xn),(d,xp),(d,t),(d,α),(t,γ),(t,xn),(t,np),(t,xp),(t,α),(α,γ),(α,np),(α,xp),(α,d),(α,t),(γ,n)、および常温核融合連鎖反応を起こす電極において可能な核反応(ここで、nは中性子、fは核分裂、p,d,tはそれぞれ陽子、重陽子、三重陽子を意味する)。
【0010】自然核壊変:α-,β- -,β+ -,γ-壊変、電子捕獲;EC、核異性体転移;IT陽子放出;自発核分裂;SF、およびこれらの複合壊変【0011】本発明に従った常温核融合用電極は核変化を生じ得る物質、即ち貴金属及び稀元素の核変換の原料として、原子番号がそれらと近い元素が選ばれる。例えば、白金族金属や金の原料としては、W,Mo,Tc,Re,Ag,Cd,Hg,In,Tl,Sn,Pbなどがあげられ、稀元素の原料としては、ハロゲン族、第6B族、アルカリ金属、アルカリ土類金属、第4A族元素、Po,Wなど種々の化学種が選ばれる。
【0012】常温核融合連鎖反応を起こし得る電極とは、遷移金属、アルミニウム、スズ及びステンレス鋼から選ばれた空隙率0.5~90容積%の少なくとも一種の多孔質体金属(粉末金属も含む)から成る常温核融合連鎖反応用陰極及び陽極である(特開平7-174874号公報参照)。
【0013】用いる反応系は、常温核反応を起こす電極を備えた電解セルで、アルカリ金属、アルカリ土類金属、第3A族元素及び遷移金属(陽イオン元素)の水酸化物、炭酸化合物、他種々の化合物の、軽水溶液、非水溶液及び溶融塩を電解し、上記陽イオン元素と電極素材の金属間化合物が核反応(特開平7-174874号公報参照)を起こす系である。
【0014】この系に於いて、下記の核反応が起こる。
d(重陽子核)+d→32He+n(中性子) (1)
d+d+d→p(プロトン)、t(三重陽子核)、32He又は42He,n,α粒子 (2)
などの水素の核反応、及びm+主としてn,p他に、d,t,α粒子→ m′+n,p,d,t,α粒子 (3)
として表される電解液から供給される陽イオン(m)の核反応。陽イオン(核m)は電極素材の表面層に金属間化合物として蓄積する物質であり、またm′は、ほとんどの場合、γ-壊変等の自然核壊変を起こす。
【0015】核変換を起こさせたい物質を、電極素材として、又は電極素材に混入させて、電極を作成し、上記核変化(1)~(3)を起こす反応系に於いて、この電極を用いて電解することにより本発明を実施することができる。更に、電極素材を多孔質体や微粉末とすることにより、気体や液体(ハロゲン等も含む)を電極本体に含ませることができる。
【0016】貴金属や自然に於ける存在量が極く稀な元素を製造する場合には、原子番号がこれらの元素に近いものを原料として、単体や化合物の微粉末として多孔質電極の細孔に充填する。これらの電極を常温核融合電極として用い、電解により核変換を実現する。例えば、多孔質ニッケル電極の製造過程で、タングステンの微粉末を適量、混合し、上記の電解系において電解すると、下記の反応によりレニウム、オスミウム、白金、イリヂウム、金を生成する。
【0017】186W(n,γ) 187W(τ1/2 =23.9h)-β- → 187Re187Re(n,γ) 188Re(τ1/2 =16.9h)-β- → 188Os188Os(n,γ) 189Os189Os(n,γ) 190Os190Os(n,γ) 191Os(τ1/2 =15.4d)-β- → 191Ir191Ir(n,γ) 192Ir(τ1/2 =74.2d)-β- → 192Pt-EC→ 192Os192Pt(n,γ) 193Pt(τ1/2 =50y)-EC→ 193Ir193Pt(n,γ) 194Pt193Ir(n,γ) 194Ir(τ1/2 =19.2h)-β- → 194Pt194Pt(n,γ)195mPt-IT→ 195Pt,195Pt(n,γ)196mPt-IT→ 196Pt,196Pt(n,γ) 197Pt(τ1/2 =18.3h)-β- → 197Au192Os(n,γ) 193Os(τ1/2 =30.6h)-β- → 193Ir上式において、アンダーラインは、安定同位元素を、τ1/2 ,s,m,h,d,yはそれぞれ、半減期、秒、分、時、日、年を表す。
【0018】同位元素や放射性物質は、電極素材又は電極中の混入物が、常温核融合電極の核子放射を受けて核反応を起こすことにより製造される。最も起こり易い核壊変は、中性子捕獲によるもので、この方法の優位点は、無単体同位元素(単一質量の意)を電解液中に容易に得ることである。例えば、生物作用のトレーサーとして良く使用される無単体同位元素C,P,Fe等は、下記の核反応により製造することができる。
【0019】14N(n,p)14C(τ1/2 =5730y)-β- →32S(n,p)32P(τ1/2 =14.28d)-β- →59Co(n,p)又は(d,2p)59Fe(τ1/2 =44.6d)-β- →65Cu(p,n)又は(d,2p)65Zn(τ1/2 =244d)-EC,β+→130Te(d,n) 131I(τ1/2 =8.040d)-β- →【0020】本発明の第二の態様によれば、放射性廃棄物の非放射物化の対象として、原子炉から排出される核廃棄物、医療及び科学研究に使用した放射性廃棄物、その他の放射性汚染物質を無害化する。即ちこれらの放射性物質を素材として、又はこれらを混合(内包)して、電極を作成し、上記核反応(1)~(3)の系において電解することにより、中性子捕獲他、種々の核反応を起こさせ、新たな自然壊変が加ることによっても、半減期の短い物質や非放射性物質に核変換させることができるため、これらの物質の非放射化を実現することができる。
【0021】例えば、核爆発の残留物である 134Csのβ- 崩壊の半減期τ1/2 は2.026yであり 134Baに変化する。しかし中性子捕獲により、 134Csの半減期は13.1dに短縮される。
【0022】134Cs(n,γ) 135Cs,135Cs(n,γ) 136Cs-β- → 136Ba【0023】同じく、 241Amはτ1/2 =433yであり、α崩壊して 237Npに変わる。しかし、次の反応によれば、半減期は=16h+2.12d+11.9h+369dであり、反応時間を加えても400日以内となる、即ち半減期が約400年から400日以下に短縮されたことになる。
【0024】241Am(n,γ) 242Am(τ1/2 =16h)-α→ 238Np(τ1/2 =2.12d)-β- → 238Pu,238Pu(p,γ) 239Am(τ1/2 =11.9h)-α→ 235Np(τ1/2 =369d)-EC→ 235U,【0025】上記反応によって、 235Uに核変換することは放射性廃棄物の処理と共に、核燃料の再製を意味する。
【0026】本発明に従えば、同様にして、電解により発生する中性子を利用して、医療用の放射性廃棄物を非放射化することができる。これらの数例を以下に示す。
【0027】14C(τ1/2 =5730y)(n,γ)15C(τ1/2 =2.45s)-β- →15N,99Tc(τ1/2 =214000y)(n,γ) 100Ru,60Co(τ1/2 =5.271y)(n,γ)61Co(τ1/2 =1.65h)-β- →61Ni.
【0028】なお本発明の電極固体内の核変換及び電極の細孔内の微小空間で起こさせる放射能照射は、上記の例に限るものではないことは云うまでもない。
【0029】
【実施例】以下、実施例によって本発明を更に説明するが、本発明を以下の実施例に限定するものでないことはいうまでもない。
実施例1多孔質ニッケル電極を用いて、0.1~0.5 mol/lのリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムの炭酸塩または硫酸塩の軽水溶液を電解し、発生するγ線をゲルマニウム・γ線スペクトルアナライザーにより継続的に観測した。その結果、電解により、すべての溶液中で510keV におけるピークが増大することが明らかになった。このピークは64Cuの生成に帰属するものである。表Iに、その実験結果を示す。
【0030】
【表1】

【0031】この様な反応系に於ける電解により、電極素材の金属も、上記の反応に於いて発生する核子等と反応し、原子核変換が起きることが、明らかになった。即ち、ニッケル電極の本体が以下の中性子捕獲をおこす。
【0032】
62Ni+n→63Ni+6.048MeV (4)
ここで生成63Niはβ線崩壊を起こすので、63Ni-β- →63Cuと成り、 (5)
さらに中性子捕獲が起きて、63Cu+n→64Cu+7.134MeV (6)
これは64Cuが放射するガンマ線、510keV の検出によって確認することができた。その他、64Cuと一緒に、56Co,58Fe,65Zn等も検出されているがこれらはすべて、62Niから派生したものと考えられる。その他、これらの系で、数種のAr,Kr,Xeの同位元素が電解により増大しているが、これらはアルカリ金属の壊変によるものである。
【0033】実施例2:貴金属元素の製造の例実施例1と同様のガンマ線の測定実験に於いて、多孔質ニッケル陰極を電極に用いた炭酸カリウム軽水溶液の24時間の電解により、表IIに示すピークが得られた。これら生成物の原料は、上記電極の一部に用いたタングステンである。なお 197Hgの検出は、この元素の自然壊変により 197Auが生成されることを示す。
【0034】
【表2】

【0035】実施例3:非放射性物質の製造白金黒付白金を陰極とする硫酸セシウム軽水溶液の電解後、0.1mol /LCs2 SO4 電解液のICP-MSによる分析の結果、図2に示すように、質量数=138のピークが著しく増大した。このピークの帰属は、可能な核反応を考慮して、 138Baであることが示された。白金黒付白金の代りに多孔質ニッケル陰極を用いた場合のチャートは図1に示す通りである。なお、図1及び図2の黒い陰模様は濃い溶液による汚れである。【0036】
【発明の効果】以下説明したように、本発明は、同位元素(無単体同位元素を含む)の製造に関して、電解条件のコントロールは非常に精確に行えるため、原子炉や荷電粒子加速器を利用した中性子線源を使う他の方法より、目的物質のみを精度良く、簡便に製造することが可能になり、又、放射性廃棄物の処理法としては、これが電解質の核反応特開平7-174874号公報に記載の方法と相まって唯一の決定的方法である。



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