「現代語大東亜会議演説集シリーズ」第3弾です(いつの間にかシリーズ化しちゃってるw)。
今回はビルマのバー・モウ首相の代表演説の内容をご紹介いたします。
議長閣下並びに各代表閣下、ここに私の考えを表明させていただきますが、私はいささかためらいを感じております。特にこの会議のような場合においては、我々一同の胸中には、ただ一つの考えのみが存在することはむしろ当然であり、言い表す言葉は色々ですが、我々は同じ心、同じ意思、同じ目的から生まれる唯一の考えがあるのみであります。従って、私の所見の中には、既に各代表が表明された思想なり、感情なり、事実なりが延々繰り返されるであろうことも、当然のことであります。しかし、それでも私はそのように申し述べることに意義があると考えており、それはまさしくビルマ国もまた、同じ考えを持っていることを明らかにしなければならないからであります。
ある意味、私は既に各代表が述べられた同じ言葉を語り、同じ所見をお伝えするために、本国から来たとも言えるのであり、それは結局、我々一同が同じ所見を持っているからであります。この席に立って周囲を眺めた時、私の胸に浮かんでくるのは、過去の政治情勢がそうさせ、西洋において出席を余儀なくされた様々な会議の思い出であります。なるほど、これらの会議におきましても多数の人々が集い、互いに丁重に扱い、談笑を交わし、各種の事柄、とりわけ天候その他について話しました。しかし、私は常によそ者がよそ者の中にいる感じを免れることができず、しかも古代ローマにおける奴隷のような感じを抱くのが常でした。
本日、この会議における空気はまったく別のものであります。この会議から生まれる感情をどのように言い表しても誇張し過ぎることはありません。長年、ビルマにおいて私はアジアの夢を見続けてまいりました。私のアジア人としての血は常に他のアジア人に呼びかけてきたのであります。昼でも、夜でも、私は自分の夢の中でアジアがその子供に呼びかける声を聞くのを常としましたが、今日この席において私は、初めてアジアが夢ではないアジアの呼び声を現実に聞いた次第であります。我々アジア人はこの呼び声、我々の母の声に応えてここに集まったのであります。私はこの議場において述べられた各国代表閣下の所見に対し、大変感動しながら耳を傾けたのであります。これらの所見は全て記憶にとどめるべきものであり、感動に満ちたものでありまして、大げさに言うことを許されるならば、私はその中に子供を呼び集めるアジアの声を聞くような気がしたのであります。何がどうであろうとも、各代表が何を述べられようとも、また、いかなる地方色が加えられようとも、その底に流れるものはただ一つの「声」でありまして、あらゆる所見を通じて、そこには計画と目的と精神の統一があり、これを私は我らのアジアの血の呼び声と称するのであります。今や我々は心で考える時期ではなく、まさに血をもって考えるべき時であり、私がはるばるビルマから日本に参りましたのも、この血をもって考えるという考えの致すところなのであります。
既に述べられたいくつかの記憶すべき演説の中でも、特筆すべきは議長閣下の所見であります。議長閣下はいつも闘志溢れる演説をされますが、本日の演説は闘志の演説以上のものでありまして、実に素晴らしい演説であります。しかも、閣下は真の武士が武器を選ぶように一言一言を選ばれ、その言葉を流線化し、一つの究極目的のために配置されたのであり、この点について、私は代表各位と共に議長閣下に対し、深く感謝いたします。
世界の動きはまことに急速であり、大東亜戦争の前においては今日のような会合は到底考えつかなかったと思います。当時におきましては、アジア人が今日のように一同に会することはできなかったのであります。それが今や我々は、このように集まっているのであります。私の心眼には新しい世界が創造されていく姿がまざまざと映っております。私は議長閣下の演説の中に、新しい世界、アジア人のためのアジア的な世界の機構が現実に形成されつつあるのを見る次第であります。
ここ数年におきましても、アジア人は互いに分割され、互いに知らず、また、これを知ろうとすることもなく、しかもそれぞれ別の世界に住んでいるような感じがありました。当時においては、郷土としてのアジアは存在せず、アジアは一つではなく「多」であり、しかもアジアを分割する敵と数を同じくし、アジアの大部分はこれら敵国のいずれかに影のように追随していったのであります。
過去において、我々にとっては実に待ち遠しい期間であった過去においては、今日、我々が一同に会しておりますように、アジアの各国民が会合をすることは到底考えられなかったのであります。それがどうでしょう、その不可能が実現したのであります。それも我々の中の最も著名な夢想家でさえも夢想することができなかった形で実現されたのであります。
今日、大東亜会議は東亜の首都で開催されております。こうして新しい世界、新しい秩序、新しい国籍が生まれたのであります。有史以来初めて東亜の国民は、東亜は一つになって分離してはならないという真理に基づく、自由にして平等な同胞として会合をしているのであります。
しかし、本日の東亜国民の会合は無から生じたのではありません。手品師の使う空の帽子から突然飛び出してきたものではありません。東亜において一つの世界を滅ぼし、他の世界を作った間に起きた数々の事件の結果として生まれたのであります。既に述べたとおり、これらの事件は非常に大きく、また、それが影響するところはかなり広く、日本によるアジアでの指導権の把握、無敵日本軍の電撃的作戦による東亜の席巻及び反アジア勢力の撃砕、歴史に例のない日本を中心とする全東亜国民の共同の敵に対する結果、更にアジア進展の転機とするビルマ国及びフィリピン国の独立等々が、これに該当するものであります。未だかつて、これより偉大にして重要なことが東洋に起こったことはありません。
私の所見をこれ以上進める前に、他の代表が既に述べた考えではありますが、私からも一言述べたいと思います。これはビルマ国もまた、その考えを述べることに誇りを持つべきだからであります。
私が既に申し述べました東洋を変貌させた様々な事件は、日本なくしては到底起こり得なかったものであります。我々多くの者が、長い間さまよい、救いを求めてやまない荒野から我々を救い出してくれたのは、東洋の指導国家・日本であります。全東亜が日本に抱く期待は大きく、私は全東亜が喜んで日本に対し、大いに報いるところがあることについては、完全な確信を持っております。
私はあえて申し上げます。本日の会合はまことに意義深い行事であります。議長閣下が述べられたように、我々は正義、平等、互恵に基づき、他を生かすことにより、我々もまた、生きるという大原則の下に新しい世界を創造しつつあります。あらゆる見地から見まして、東亜はそれ自体一個の世界を成しているものであります。即ち物質的には自給自足で豊かであり、戦略的には不敗にしていかなる敵も打ち破ることができ、精神的には完成された「一」であり、自ら別世界を形成しております。しかるに我々アジア人は数世紀もの長い間、この事実を忘れていたため、多大な損失を被ったのであります。その結果、アジア人はついにアジアを失ってしまったのであります。今や、日本のおかげで我々はこれらの事実に気づき、これによって行動を開始した次第でありますから、アジア人は必ずや取り戻し、この簡単な真理の中にアジアの全運命がかかっているのであります。
(次回へ続く)