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中小零細の製造業がサバイバルするために重要なこと - 真壁昭夫:信州大学経済学部教授

村上龍 Japan Mail Media 8月28日(火)16時57分配信



 経済のグローバル化が進み、人件費が相対的に低い新興国が経済発展の段階を迎えていることもあり、足元で、わが国企業を取り巻く環境は一段と厳しさを増しています。中でも企業体力が比較的に弱い中小企業が生き残っていくのは、容易なことではないと思います。ただ、中小企業が自社の強みを上手く生かすことができれば、業務をしっかり展開することは可能だと思います。実際に、中小企業の中には、長期間に亘って好調な収益状況を維持している企業もあります。

 中小企業が生き残っていくための要素は、月並みな言葉かも知れませんが、当該企業が顕著な"特徴"を特っていることだと思います。"特徴"を持たない企業は、基本的に、他の企業との差別化が図れないわけですから、その分、社会の中での存続が難しくなるはずです。その意味では、"特徴"というファクターは、中小企業に限らず、企業のレゾンデートル=存続意義の一つと考えられます。

 実際、中小企業の中でしっかり生き残っている企業は、それぞれ明確な"特徴"を持っているように思います。ある企業では、企業全体を家族であるような経営を行っているところがあります。この企業の経営者はオーナー経営者なのですが、「従業員全員を皆家族だと思っている」と公言しています。従業員の誕生日には経営者自らが誕生会を開催して、家族も呼んで会を開くと聞きました。

 経営者が、従業員全員に対して会社=家族のようなイメージを植え付けることによって、従業員からハイレベルなコミットメント(企業への帰属意識)を定着させ、それによって生産性を引き上げ、業績を向上させるようにしているのです。企業での生産性が上昇すると、その分だけ低いコストで生産ができることになります。当該企業からすれば、製品の競争力が上昇することになります。

 あるIT関連の先端技術を持つ企業は、経営者が大手企業の技術開発部門からスピンアウトした人材です。この経営者は、純粋に新しい技術の開発を行いたいという人なのですが、大手企業では予算などの制約が厳しく、自由な活動ができないため独立しました。そして、経理や営業は、同じく大手企業からスピンオフしてきた人材が担当しています。

 その企業では、営業担当者が以前からの人脈を生かして、新しい製品を販売することにそれほど不自由がないという利点があったようです。また、技術開発部門は新しい環境の中で、今までの大企業の中での開発とは違ったセンスで新技術を開発したことにより、経営者は、「大手企業の中にいるよりも、はるかに良好なパフォーマンスが上がっている」と言っていました。この企業の場合の"特徴"は、主に技術開発力という要素だと思います。

 ユニクロを中小企業から大手流通業まで育てた経営者は、「サラリーマンの時代は終わった」という興味深い指摘をしました。彼の頭の中では、サラリーマンとして企業に依存するのではなく、従業員一人一人が店の経営者の視点を持って、「どうすれば、店の売り上げを増やすことができるか」を考えることが必要と考えているのでしょう。

 その為には、顧客が必要とするような製品の開発や、製品価格をできるだけ引き下げる努力、さらには店舗における接客態度などを、管理者や経営者に言われるのではなく、自分たちで工夫することが求められるはずです。そうした工夫によって、他の企業とは違った要素=差別化を図ることができるのでしょう。

 これらの例を見ても、企業が社会の中でレゾンデートルを維持するためには、他にはない何かを生み出すことが必須の条件だと思います。それは大企業でも中小企業でも変わらない命題なのだと思います。

信州大学経済学部教授:真壁昭夫