アルジェリアでの誘拐事件 | 大野もとひろオフィシャルブログ Powered by Ameba

アルジェリアでの誘拐事件

報道によれば、アルジェリアにおいて日揮の社員と見られる邦人が拘束されたそうである。現時点で情報は錯そうしているが、どうやら、邦人に加えてアイルランド人やフランス人も拘束されているらしい。また、アルジェリア政府による発表や現地からの邦人の電話などの報道が正しいとすれば、誘拐というよりも現地の施設が武装勢力により抑えられ、一部の人々に被害が出ているという状況なのかもしれない。

多くの日系企業がリスクの多い地域への展開を躊躇し、外国企業の後塵を拝する中、日揮は、アルジェリアで長期にわたり事業を継続し、現地法人も設立してきた。同社はアルジェリアにおいて、石油処理プラントやガス関連プラントを受注し、我が国にとって必須のエネルギー分野においても貴重な役割を担ってきた。報道を見ると、どうやら同社がガス・プラントを受注したアルジェリア南東部のアイン・オンム・アン・ナース(英語表記ではインアメナス)のガス施設における出来事のようだ。

現時点で憶測は避けるが、可能性としては以下のようないくつかのシナリオが考えられると思われる。
1)アルジェリア国内のイスラーム系過激派による犯行
アルジェリアにはかつての反体制イスラーム勢力を母体とする『マグレブ諸国のアル・カーイダ』が、かつてよりは弱体化していると見られているものの確固たる拠点を築いており、彼らが外国人の多い施設を急襲、あるいは誘拐の対象とした可能性が考えられる。かねてより、アルジェリアで見られたこのような犯行が再び発生したのかもしれない。なお、8日には、この組織の前身である『教条と聖戦のサラフィー・グループ』のナンバー2であったベン・ムハンマドに誘拐の罪で無期懲役の判決が出されたばかりである。
2)リビアと関連の深いイスラーム系組織による犯行
アイン・オンム・アン・ナースはリビア国境に極めて近いが、アルジェリア東部はリビア西部のイスラーム系勢力や部族勢力と関係の深いアル・カーイダ系の勢力が拠点を築き、あるいはリビアとの間の武器・麻薬密輸の拠点となってきた。これらの勢力は、外国人の誘拐を繰り返してきた。
3)マリ情勢に関連したイスラーム系過激派による犯行
マリ情勢の悪化を受けて同国北部に勢力を拡大させている『アンサール・アッ・ディーン』などのイスラーム系勢力が、アルジェリア南部に越境し、あるいはアルジェリアでもその影響力を拡大させていると見られている。アルジェリア政府はアンサールに対する武力での制圧に乗り出しており、その余波を受けた可能性がある。また、マリに派遣されたフランス軍が北進し、イスラーム系勢力と本格的戦闘に入ったまさにそのタイミングであり、この影響も考えられる。

安倍総理は、小泉政権時代にイラクで3名の邦人が誘拐された際、総理に情報伝達を行うのを遅らせて初動に影響を与えた「前科」があり、危機管理には不安を抱かせるが、政府には冷静な分析と的確かつ迅速な判断が求められるところである。かりに、アルジェリア政府軍と武装勢力間の交戦が発生しているとの報道が真実であれば、事態は急速に展開する可能性もあり、あらゆる資源を投入して邦人の安全確保と正確な情報の把握に努めてもらいたい。その上で、邦人の方々の安全が一刻も早く確保されることを祈念している。