「安全なお米を学校給食に使わない理由が無い」~福島市が1月から、地元産コシヒカリの使用を再開へ | 民の声新聞

「安全なお米を学校給食に使わない理由が無い」~福島市が1月から、地元産コシヒカリの使用を再開へ

福島市は1月から、学校給食への市内産コシヒカリの使用を1年ぶりに再開する。わが子の内部被曝の危険性が払しょくされないことから使用の中止や保護者アンケートの実施、検査の厳格化を求める保護者に対し、市教委はあくまで「安全が確認された米を使わない理由が見当たらない」との構え。アンケートも行わず弁当持参の自由も公言しない。保護者の不安は無視されたまま、間もなく「地産地消」が復活する


【「福島市の給食は日本全国で1番安全」】

 議長に促されて起立した議員はまばらだった。

 請願の不採択が決まると、傍聴席で見守っていた母親の1人は思わず声を出して膝を叩いた。

 17日に開かれた福島市議会の「東日本大震災復旧復興対策並びに原子力発電所事故対策調査特別委員会」。継続審査中の3件も含め、市民から提出された請願や陳情が次々と葬られていく。

 「子どもたちへの線量計配布」も、「国に原発ゼロの政治決断を求めること」も、「政府の『原発事故収束宣言』の撤回を求めること」も不採択。「40歳未満の市民と妊婦の寝場所を0.23μSV未満にすること」も、「原子力規制委員を決め直すことを求めること」も、軒並み不採択。この中に、361人の署名が添えられた請願「福島市の学校給食に関することについて」と陳情「学校給食用米穀に福島市産を使わないことを求める」も含まれていた。

 請願を仲介した若手市議が市教委を質した。

 「『不検出』ではなく、具体的な数値を公表するべきだ」

保健体育課長

 「測定器が20ベクレル未満だと『不検出』と表示される仕様になっており、できない」

市議

 「保護者アンケートを実施するべきだ」

課長

 「アンケートの結果によって判断されるものではない」

市議

 「米が『安全だ』と言う根拠は何か」

課長

 「県の全袋検査も含め、5回の検査を通過する。福島市の学校給食は日本全国で一番安全だ」

 保守系会派からは「現在の検査体制で十分、安全は担保されている」「市当局の安全宣言を聞いて安心した」と市教委を後押しする意見が相次いだ。JAの密接な関係にあるとされる市議からは「安全な米を子どもたちに食べさせないことの弊害、地元の子どもたちに食べさせないで他県に売ることの道義的責任を考えると、賛成できない」との意見も出された。革新系会派は「保護者に慎重に説明するべきだった」と市教委を批判したが、古参市議の発した野次が、議会の雰囲気を如実に表していた。

 「信じる者は救われるんだよっ」
民の声新聞-福島市議会①
学校給食に福島市産コシヒカリを使わないよう求

めた請願・陳情を採択しなかった福島市議会


【「福島市産を使わない理由が見当たらない」】

 福島市教育委員会によると、福島市内で収穫されたコシヒカリは県の全袋検査で放射性物質が検出されていないため「安全だが保護者の安心のため」に郡山市内の精米工場「JAパールライン福島」でも玄米と白米で二度、抽出検査。さらに福島県学校給食会でも抽出検査をし、最終的に市内に4カ所ある給食センターでも抽出検査をするという。

 市議会では、抽出検査ではなく全量検査を求める声も出たが、「市内の学校で消費される米は年間250㌧(25万kg)。検査は1kgごとに行うため、全量検査となると25万回やらなければならない。それだけの検査体制を敷くにはかなりの労力と費用がかかる」。市教委としては県が実施している米の全袋検査に全幅の信頼を置いており「本来は、それだけで十分安全」との考え。給食センターでは、その日使う食材はすべて検査をしているが、来年度も継続するという。

 「元々、地産地消の観点から福島市産のコシヒカリを学校給食に使ってきたわけです。昨年12月から1年間は中止してきましたが、安全性が確認できたのだから元に戻すのが自然でしょう。安全な米を使わない理由が見当たらない」と市教委幹部。「請願・陳情も不採択となったわけですし、計画通り、実施していきます」
民の声新聞-食べて応援
農水省が推進する「食べて応援しようキャンペーン」。

学校給食の現場でも、地産地消の名の下に地元産の

米が使われる


【「弁当持参の自由を公に認めて欲しい」】

 小中学生の子どもがいる40代の母親は「できれば福島市産の米は使って欲しくない。それでも使うというなら、やはり全量検査と可能な限りのゼロベクレル。福島市では一週間のうち7割が米飯給食です。親として心配するのは当然です」と話した。

 保護者の不安を無視するかのような市教委の進め方に怒りがおさまらない。

 「二本松市でも地元産の米を使うことが決まりました。でも、教育長名の文書が配られたんです。給食費を返金することはできないが、どうしても不安な方は弁当を持参させてください。担任の許可も手続きも不要です、と。福島市も最低限、そのくらいはやってほしいですよ。説明会もなくプリント1枚だけ。心配するお母さんはどうしたら良いのでしょうか」

 弁当持参について、市教委は「さまざまな問い合わせがあるが、給食を強制はしていない。個々に学校と相談してほしい」と話す。各学校長には「米の安全性を十分に説明したうえで、保護者の意向も尊重するように」と指導しているという。

 しかし、実際には学校長の判断に委ねられており、これまでもミネラルウォーターの持参や屋外プール授業への参加など、様々な場面で多くの親たちが辛い思いを強いられてきた。学校側が弁当持参に難色を示せば、母親はわが子に気兼ねなく弁当を持たせることができない。本来は、給食か弁当か選択の自由があることを、市教委が公に示すべきなのだ。

 「今回配ったプリントは、市教委として安全性を確信して出した文書です。市が責任をもって確実に安全であるという通知を出すのに、一方で保護者の不安に触れるのは矛盾が生じる。それはできません」(福島市教委)。

 保護者の不安は置き去りのまま。不安を唱える者は異端という風潮だけが拡がるなか、学校給食の「地産地消」が進む。


(了)