たとえば、病原性大腸菌O-157は、ベロ毒素という猛烈に強力な毒素を出す。
これは、赤痢菌の毒素と同じで、ベロ毒素が血液の中に入り込むので、死に至ることがある。
だから、O-157は本当に怖い。
一方、ノロウイルスは、こうした毒素を一切ださない。
じゃあ、どうして下痢や嘔吐が起きるかというと、塩素という元素がかかわっている。
小腸の細胞膜に、塩素イオン(正確には、塩化物イオン)を通す穴がある。
この穴から塩素イオンが小腸の中に出ていくと、それに伴って水分も出ていく。
これによって、粘膜が守られ、消化吸収をスムーズに行われる。
健康を維持するには、大切な仕組み。
ところが、ノロウイルスが感染すると、穴が開きっぱなしになる。
だから、大量の水分が腸の中に流れ込み、下痢となるわけ。
その分、体内では水分が不足する。
だから、水分やミネラルが補給できれば、ノロウイルス自体で死に至ることはない。
これが、O-157や赤痢菌と違うところ。
水分補給を、こまめに、しっかり行うのが、決定的に重要だ。
これさえ出来れば、それほど恐れる必要はない。
塩素イオンと人体の機能との関係については、「元素周期表で世界はすべて読み解ける」(光文社新書)の第2章で詳しく解説しているので、こちらをご参照ください。