15歳無職 生活保護停止 那覇市「働く力ある」 地裁「早計」 支給を再開:沖縄タイムズ
那覇市に住む15歳の無職少女を「働く能力を活用していない」などとして生活保護世帯から切り離し、保護費を打ち切ったのは違法だとして、少女の母親が那覇市に世帯分離の取り消しを求めた仮処分で、那覇地裁(酒井良介裁判長)は16日までに、世帯分離を停止する決定をしていたことが分かった。処分は7月16日付。母親側は緊急性があるとして県への不服申し立ても同時に行っており、県も世帯分離の取り消しを裁決。これを受け、市は8月12日付で少女の生活保護費の支給を再開している。(高崎園子)
訴状や決定書によると、この世帯は母親と子ども5人の母子家庭で、世帯分離されたのは15歳の長女。母親は長女が不登校になったのをきっかけに仕事を辞め、2009年4月から生活保護を受給するようになった。長女は今年3月に中学校を卒業し、高校を受験したが不合格になった。来春の受験を目指している。
母親側によると、今年5月、那覇市の職員から「期限内(1週間後)に長女が仕事を探さなければ保護を打ち切る」と通告があり、6月から長女分の生活保護費3万4千円余が削られた。そのため食費や学用品の購入に不自由しており、幼い子どもたちの成長発達が著しく阻害される―と将来に不安を訴えた。
一方、市側は、担当者が長女に就労支援を受けるよう促したり面会を求めても応じず、収入を得るための努力をしなかったと反論。長女分を除いても保護費など約23万7千円余のほか児童扶養手当、子ども手当の収入があり家計の見直しで対応できると主張している。
那覇地裁は、この世帯は平均的な母子家庭より子どもの人数が多く、県内の平均給与所得や母子家庭の収入と比較することは合理性がないと判断。稼働能力の可否についても、不登校時期のある15歳の少女を中学卒業後わずか2カ月の間に判断するのは「早計にすぎる」とした。さらに全国的な不況や県内の芳しくない就職事情を指摘し、世帯分離は「裁量の逸脱と認めるべき余地がある」とした。
「すぐ働け」は酷
子どもの問題に詳しい元児童相談所所長の山内優子さんの話 子どもが社会に出るための支援がないまま、中学を卒業した段階で、すぐ働けというのは非常に酷だ。(進学の場合、世帯分離の対象にはならなかったが)母親が働いていた間、少女が妹弟の面倒をみていたかもしれず、十分に受験勉強ができる環境があったかも疑問だ。
みなさんはこのニュースを見て何を思うでしょうか。那覇地裁の決定に同意し、「15歳の少女を家計から外すなんてなんという非道な措置だ」と思う人もいるのでしょうか。しかし記事を良く見ると、ここで語られるべき論点は全く別のところにあるのがわかります。
文中には、「長女分を除いても保護費など約23万7千円余のほか児童扶養手当、子ども手当の収入があり」とあります。単純に長女分を足して27.1万円。仮に長女が最年長者とすれば、子供手当は5人分でますからこれが6.5万円。さらに児童扶養手当が5万円程度出ているはずですから、合計で実に38.5万円にものぼります。長女より年上の15歳以上の子供の子供がいれば、子供手当の額は変わりますのでこれはあくまで最大値ですが、35万以上もらっているのは確実でしょう。さらに生活保護世帯は、税金や医療費、その他社会保障費用が一切無料です。つまり実質、月当たり40万以上の手取り収入があることになります。
全国でも所得が低い沖縄県では、平均月収が税込みで23.5万円(平成20年)です。手取りにすれば20万を切ります。まじめに働いている人がこの給与で一生懸命生きているのに、一方では働いていない人間が倍以上の収入を得てのうのうと生活しているのです。
これだけの大金を働かずして受給していながら、さらに金を貪るべく裁判を起こしたこの家族に対しては憤りを感じると同時に、このような状況を許している日本という国には呆れさえ感じます。
そして、裁判所の判断にも驚かされます。「この世帯は平均的な母子家庭より子どもの人数が多く、県内の平均給与所得や母子家庭の収入と比較することは合理性がない」とは一体なんでしょうか。子供が5人いたら県内の平均所得の倍以上の所得を得ていても多くないとでも思ったのでしょうか。これが多すぎることは馬鹿でもわかります。
そしてこんなニュースもあります。
生活保護1万人超 那覇市:沖縄タイムス
那覇市の生活保護費の受給者が、7月末の速報値で1万28人と、初めて1万人台を突破したことが市保護管理課の話で17日、分かった。同時期の人口31万5886人を基にすると、単純計算でほぼ30人に1人が受給者となる深刻な事態。市は長引く不況を主因とみており、受給者の年代分析などを進めて保護費の適正化を急ぐ方針だ(後略)
まじめに働くより楽な生活ができるのですから、生活保護世帯が増えるのは当然の結果です。しかし、これは国が定めた法律ですから、地方自治体は苦しい台所事情を抱えながらも、支給を止めるわけにはいかない。だからこそ、今回のように大金を受給してのうのうと生活している受給者へ対して少しでも支給額を減らそうと、熟慮して判断を下したという背景がこのニュースではっきりと見えてきます。それに対して、「判断は早計にすぎる」「裁量の逸脱と認めるべき余地がある」などとして、支給を満額再開するようにと、裁判所は平気な顔で命令を下せるのですから、それにも驚かざるを得ません。
私は以前から、生活保護制度がこの国を滅ぼすと主張しています が、今回のニュースはその認識をさらに強固なものとさせました。
政治家達もこの現状に全く気付いていないわけではないのでしょうが、生活保護にメスを入れれば、「不況の中で弱者切り捨て。弱い物に死ねというのか」などと大きな騒ぎになり、支持率が落ちるのを恐れてできないというのがこの国の馬鹿げた現状です。まじめに働く者が少ない給与で税金を払いながら苦しい生活をし、働かない者はその税金から働く者の倍以上の金額を受け取ってのうのうと生きる。こんな国は必ず滅びます。
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参考書籍:
働けません。―「働けません。」6つの“奥の手”
プチ生活保護のススメ 改訂第3版―申請書付
大田 のりこ 河西 保夫 大山 典宏(生活保護110番)