上の表は、元専修大学教授・社会保障問題研究者の唐鎌直義さんが作成した生活保護基準以下の貧困世帯について地域別に見たものです。世帯貧困率が一番高い地域は東北で27.5%もあり、その上、捕捉率が7.6%と断トツに低くなっています。捕捉率というのは、生活保護基準以下の世帯で、実際に生活保護を受給している世帯数の割合のことです。世帯貧困率が最も高い東北地方には、低所得者ほど負担を強いる消費税増税がどの地域よりも重くのしかかることになるのです。
上の表は、私が所属する労働総研の労働者状態分析部会でお世話になっている財政問題研究者の垣内亮さんが作成した「東北6県の税目別税収の全国の税収に占める割合」です。
東北地方は、住民も企業も東京など大都市にくらべ所得が低いために、消費税の税収割合が断トツで高くなっています。ここでもどの地方よりも東北地方に消費税増税が重くのしかかることになります。加えて東日本大震災後は、被災者が所得を失い所得税はかからない人が多くなっていて、この点からも消費税増税は一層重い負担となるのです。
また、東北地方は関東などにある大企業の工場に部品を供給する下請企業の集積地でもあります。上のグラフにあるように、日本商工会議所など中小企業4団体による調査によれば、「消費税が引き上げられた場合、販売価格に転嫁できるか」という問いにたいして5~7割の中小業者が「転嫁できない」と答えています。多くの中小業者は、自らの利益を削って消費税を納入しているのです。消費税増税は東北地方の下請中小業者に壊滅的な打撃を与えることになります。
同じく垣内亮さんが計算したところによると、消費税が10%になると、宮城・岩手・福島の被災3県の消費税負担額が5,637億円となり、住民税負担額3,741億円を大きく上回り被災地住民に重くのしかかることになります。(※2010年度決算による計算で、内訳は、宮城県→消費税10%負担額2,413億円・住民税負担額1,698億円。岩手県→消費税10%負担額1,273億円・住民税負担額786億円。福島県→消費税10%負担額1,951億円・住民税負担額1,277億円)
最後に、岩手県陸前高田市議会の意見書を紹介します。野田政権はこうした被災地の声を聞き、震災復興に逆行する消費税増税法案を直ちに撤回すべきです。
被災地に新たな負担を強いる消費税増税に反対し、
社会保障制度の充実を求める意見書
政府は、平成24年2月17日に「社会保障・税一体改革大綱について」を閣議決定しました。この大綱は、社会保障安定のための主たる財源を消費税とし、2015年までに段階的に消費税率を10パーセントまで引き上げるとしています。
市内に甚大な被害をもたらした東日本大震災から1年が経過しましたが、本市は未だ復興の緒に就いたばかりです。
仮設店舗ながらも再開した商店、新たな事業所の進出、養殖漁業の一部再開など、市内経済も回復の兆しを見せつつありますが、再開の見込みが立たない事業者も多く、市民の生活は依然厳しい状態が続いています。
このような中での消費税増税は、被災地域に暮らす者にとって大きな負担となり、地域経済の更なる冷え込みを招くことが懸念されます。
社会保障制度の充実は多くの国民が望むところであり、その財源確保は重要な課題ではありますが、消費税増税は被災地の復興にも大きな影響を与えかねません。
社会保障制度改革のためには、国民の負担を増やすのではなく、まずは歳出の無駄を削減し、国民の所得向上のための経済運営に取り組むなど、国民の理解を得ることが重要です。
以上のことから、下記事項について取り組まれるよう強く求めます。
記
1 被災地に新たな負担を強いる消費税の増税を行わないこと
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出します。
平成24年3月12日
岩手県陸前高田市議会
(byノックオン。ツイッターアカウントはanti_poverty)