第二次安倍政権待望論Ⅱ(前編) | 田母神俊雄オフィシャルブログ「志は高く、熱く燃える」Powered by Ameba

第二次安倍政権待望論Ⅱ(前編)

安倍晋三氏が自民党総裁になり、次の選挙が終われば第二次安倍内閣が誕生する公算が高くなってきた。安倍氏は5年前体調不良により内閣を投げ出す形で首相を辞任することになったが、第一次安倍内閣の1年間で、小泉総理が5年間も総理をやっても出来なかったことをいくつも成し遂げた。安倍氏は元来身体が弱く、辞任当時は毎日20回もトイレに駆け込むほどお腹の具合が悪かったというから、辞任の仕方のまずい点は大目に見るべきだと思う。いまようやく彼の身体に適合する薬が見つかり、体調もいいということなので、今度こそは戦後レジームからの脱却を成し遂げてくれるのではないかと思っている。


いま我が国は10年以上ものデフレが続き、国力は徐々に衰え、学校を卒業しても2人に1人しかまともな就職が出来ないような状況であり、多くの国民が将来に希望を見出せないでいる。また中韓露などから領土問題を仕掛けられているが、これに対しても形どおりの抗議をする以外にはなんら解決策を実行できない有様である。さらにこの20年では、かつては世界最強と言われた我が国の政治、経済、金融、雇用などのシステムを、「改革」の掛け声の下に政府が先頭に立ってぶち壊しを行って来た。それもこれも戦後のアメリカの占領下で我が国に押し付けられたアメリカの歴史観、すなわち東京裁判史観から我が国が抜け出せないでいることに起因している。安倍氏の言う戦後レジームからの脱却こそが21世紀に我が国が世界に冠たる素晴らしい国として存続するために是非とも必要なのである。


しかし我が国の多くの政治家は、保守派と言われる人でもそれに気付いていない。歴史認識などは過去の問題であり、何をいまさら騒ぐ必要があるのかという態度である。しかし歴史認識こそが現在の我が国の政策の方向性を決めているのである。歴史認識の問題は我が国では現在進行形の問題なのである。そして安倍総裁は歴史認識が問題であることを十分に承知している数少ない政治家の1人である。


アメリカの占領下で徹底的な我が国の弱体化工作が実行された。アメリカによって我が国の歴史は暗黒の歴史に塗り替えられ、多くの日本国民が自虐史観に染められた。また公職追放により20万人以上ものまともな人たちが職を追われ、その穴埋めに戦前追放されていた所謂サヨクと言われる人たちが当てられた。これらの人たちは敗戦により得をした人たちである。この敗戦利得者たちは戦後レジームからの脱却が行われることは自らの利益を失うことである。そこで安倍総理の誕生は彼らにとっては大変な脅威なのである。敗戦利得者の代表である朝日新聞などでは、すでに安倍降ろしの動きが始まっている。しかし安倍氏に頑張ってもらわなければ将来の日本が困る。今のままでは我が国は早晩中国などに飲み込まれることになってしまうだろう。


先月自民党総裁選の直前に、国際政治学者の深田匠さんから「第二次安倍政権待望論」という論文が届き

先月の私のブログで紹介させていただいた。幸いにも安倍総裁が誕生し次の総理は安倍晋三氏になる公算が極めて強くなってきた。そこで我々日本を大切にしたい日本国民が声を上げてしっかりと安倍内閣を支える必要がある。安倍降ろしの動きを私たちが止めなければならない。この度深田匠さんが安倍政権を支えるために「第二次安倍政権待望論Ⅱ」という論文をまとめられた。読ませていただいてまさに我が意を得たりという感じである。読みやすく素晴らしい内容であるので皆さんにも紹介させていただきたいと思う。前回よりもさらに長くはなるが、多くの皆さんに読んでいただきたいと思っている。




「第二次安倍政権待望論Ⅱ 日出づる国の光芒」
国際政治学者 深田匠


平成24年9月26日。この日、「小さな奇跡」が起こり日本に新しい希望が誕生しました。当初はマスコミからはせいぜい3位どまりで苦戦するといわれていた安倍氏が、その予想を覆して見事な逆転勝利を果たされ自民党第25代総裁に就任されました。「このままでは日本は衰亡する」という国民の深刻な危機感によって、何か目に見えない大きな力が動き始め、すでに日本が変わり始めているのでしょう。

総裁選の期間中、相変わらず「戦後体制」にしがみつく左派マスコミは新聞・雑誌・TV等を総動員して石破氏を露骨に推す世論操作を試みました。自ら捏造した「慰安婦強制連行」なる虚偽プロパガンダを死守したい朝日新聞にいたっては、「安倍元首相 思慮に欠ける歴史発言」(9月7日付)と題し、河野談話について「かりに首相に再登板した安倍氏がこれを引き継がないということになれば、日本外交が苦労して積み上げてきた国際社会の信頼を失いかねない。(小略)一国の政治指導者として不適格だ」などと、露骨な選挙妨害攻撃を繰り広げていました。

左派マスコミの意に反して安倍氏が決戦投票に残る可能性が高いことが判明すると、未練がましくも「石破氏が地方票で大差をつけた場合に『地方の声は無視できない』として、石破氏が支持を増やす可能性もある」(共同通信)などと、何が何でも安倍総裁誕生を阻止しようとなりふり構わぬ世論誘導を図りました。しかしマスコミが「政権交代」の世論誘導を煽った民主党政権の醜態を目の当たりにしてきた国民は、もうこれまでのように簡単には踊らされなくなっているのでしょう。

石破氏の唱える「改憲、国防軍創設」は左派マスコミの思想とは正反対のものであるのに、なぜ左派マスコミは石破氏を推したのでしょうか。それは「戦後体制」の土台となっている自虐史観さえ守ることができれば、改憲も国防軍創設も簡単に潰すことができると考えているからでしょう。もし安倍氏の手によってこの土台から変えられてしまえば、もはや「戦後体制」を守るすべがなくなるからです。従って安倍氏・石破氏の改憲や防衛面での主張が同じものであっても、それらの実現を妨げてきた「戦後体制」の本質が何かを熟知する安倍氏と、「戦後体制」の中で生きている石破氏とでは、思想的にあまりにも大きな違いがあるということです。石破氏が民主党との連立を念頭に置いておられたということも、なんとしても「戦後体制」護持したい左派マスコミにとっては好都合だったのでしょう。なにしろ民主党は日教組や官公労・自治労など多くの左翼勢力に支えられているのですから、なんとかして民主党を与党に残したいという意図だったのでしょう。

安倍政権へのネガティブ・キャンペーンを繰り広げた左派マスコミは、自虐史観と共産主義への憧れから中国と通謀ないし共鳴し、中国の主張の代弁を長年行ってきました。日中記者交換協定なるもののせいで、産経を除く日本のマスコミの多くは中国の従属下に置かれてきました。昨今のオスプレイ配備に反対する報道も、沖縄にオスプレイが配備されてしまえば無給油で一時間以内に尖閣へと海兵隊が到達できるからです。中国共産党に通謀ないし共鳴して中国の尖閣侵略を容易にする目的で、確信的にオスプレイ配備に反対している勢力がこの日本国内に確実に存在しているのです。そしてその勢力こそが安倍氏へのネガティブ・キャンペーンのいわば黒幕です。
安倍氏がまだ首相に就任されていない現在ですら、左派マスコミはふたたび安倍氏へのネガティブ・キャンペーンを再開し、3500円のカツカレーがどうのこうのと馬鹿みたいな難癖をつけています。カツカレーと国益と何の関係があるのでしょうか。そして石破氏も同じものを食べていたのになぜ安倍氏だけを攻撃するのでしょうか。これこそがまさに左派マスコミがかつて行った安倍政権叩きと軸を同じくするものです。何ら政策とは関連のない事柄に対する理不尽な難癖・言いがかり・こじつけ・卑劣なイメージ操作の洪水です。

しかし左派マスコミがこれだけ懸命に石破氏を推し、安倍氏に対するネガティブ・キャンペーンを繰り広げたにもかかわらず、総裁選で安倍氏に期待する国民の声は広がりを増す一方でした。ブログなどインターネットで、ツイッターで、街頭での呼びかけで、友人間や職場などのクチコミで、この国難に際して「安倍氏に日本を救ってほしい」という一途な思いで懸命に安倍氏への支持を訴え続けた国民の方々が多くおられました。安倍氏の勝利はすなわち、心ある多くの国民の声が左派マスコミに対して勝利したといっても過言ではないでしょう。
そして安倍氏の推薦人となられた議員の方々、第1回投票から安倍氏に投票された議員の方々は、石原氏支持を求める派閥の締め付けをふりきって、また「党員票が圧倒的多数」と予測されようとも惑わされて自虐史観リベラルの石破氏を支持することを是とせず、私利私欲も打算も超越して純粋に日本の将来を考えておられる方々だといえるでしょう。

「戦後体制」からの脱却には3つの関門があります。今回の安倍氏の総裁就任は1つめの関門を乗り越えたことになります。2つめの関門は安倍自民党が選挙に勝って第二次安倍政権が誕生することです。そして3つめの関門は、安倍政権に対しておそらく前回同様のネガティブ・キャンペーンを繰り広げるであろう左派マスコミの攻撃から、国民の力でいかにして安倍政権を守り抜いていくかです。現時点ではまだ肝心の安倍政権は誕生していませんので、一日も早い安倍政権実現のために、より多くの一般国民が安倍氏の目指す理想への理解を深めてくれるよう、私たち国民有志も声を上げ続けていかなければならないでしょう。

第二次安倍政権が現実味を帯びてきた今、安倍氏と日本国民が共有するべき理想について、ここで改めて安倍氏が提示しておられる「日本再起」のための政策を採りあげ、私の専門である国際情勢の解説を交えながらの論評を述べさせていただきたいと思います。

現在多くの国民が中国の常軌を逸した反日攻勢に怒りを感じています。これまで日本から中国へ行ってきた経済援助は、国際機関を通じた迂回援助を合わせると7兆円を超え、形式的に民間を経由させた援助も合わせると10兆円以上にも達するといわれています。一国が他の一国に与えた経済援助額としては世界史上最多の金額です。
しかしながら中国はその援助の事実を自国民に伝えず、その金をインフラ整備などに充てることで浮いた予算をすべて軍拡費用にまわしてきました。日本からどれだけ多くの援助や技術協力をしてもらっても感謝の欠片すらなく、中国は核ミサイルの照準を日本の主要都市に向け、軍事力を背景にして日本の固有領土である尖閣を力づくで強奪しようとしています。

さらに中国政府要人が「沖縄は中国の属国だった。今後議論を始めなければならないのは沖縄の帰属問題だ」と公言し、沖縄を奪う意図を露にするまでに至っています。詳しくは別の機会に譲りますが、沖縄にはすでに中国の政治工作員が多数潜入しており「沖縄独立運動」を起こさせようと様々な工作を行っています。反日暴動デモでは日本企業の工場が焼き討ちされ、日系デパートが破壊略奪され、在中日本人が暴行を受けましたが、このデモ隊を先導していたのは中国公安当局です。要するに日本に脅しをかけるための官製デモであったということです。日本企業の工場焼き討ちを許容せしめたことで明らかに中国は最後の一線を越えました。
国際政治学の観点で予測するならば今後日中冷戦はさらに加速することは疑いなく、中国に傾倒してきた日本企業は即刻その拠点をインドやASEANなどにシフトするべきでしょう。一党独裁国家では昨日までの法がいきなり今日変わるということが起こりえます。中国内の日本企業の全資産が没収される事態も絶対にないとはいえないのです。

中国がここまで増長するに至ったのは、ひとえに日本側の自虐史観による対中従属主義・謝罪外交を長年積み重ねた結果です。日本の自虐史観に呼応する形で、中国でも江沢民時代に常軌を逸した反日教育が推進されてきました。現在の日中関係の状況はまさに日清戦争前夜を想起させます。明治維新で近代化を果たした日本は清が共に白人植民地主義と戦う友邦になってくれることを願って、「日支親善」を唱えて様々な援助を行いました。しかし清はその援助を受け取りながら軍備を増強し、これみよがしに北洋艦隊を差し向けて日本を威嚇しました。こうして日本の善意は踏みにじられ続け、やがて日本と清は朝鮮半島の独立維持の是非をめぐる地政学的理由で開戦にいたったのです。

そして実は日中間でもう1つ繰り返されかけていることがあるのです。シナ事変に先立ち中国共産党は国民党を巧妙に利用して「国共合作」という反日戦線をつくりました。国民党の中でも親日派であった汪兆銘は国民党を出て第三の道を選び、やがてシナはソ連と組んだ共産党、アメリカと組んだ国民党、日本と組んだ汪兆銘一党の3派が実質的な内戦を繰り広げる状況へ進んでいったのです。日本が中国を侵略したのではなく、中国の内戦に巻き込まれたというのがシナ事変の真相です。
そして現在、中国は息のかかった台湾の外省人(蒋介石とともに大陸から台湾へ移った漢民族)を操って、台湾でも反日デモを起こさせ、尖閣については「中台合作」を呼びかけています。私の目には台湾の親日派である李登輝元総統が汪兆銘とオーバーラップします。まさに歴史は繰り返すのです。日本は何度同じ過ちを繰り返せばいいのでしょうか。

私事にて恐縮ですが、私は9月末から数日間、台湾へ現地世論の調査に訪れました。台北・台中・台南・宜蘭を回りましたが、台湾人の親日感情はこれまで通り何も変わらず、街は平穏であり、日本人に対しては非常に親切であり、そして台湾の一般国民から「親台派」だと思われている安倍氏の総裁就任を歓迎するムードがありました。私は尖閣海域に侵入した台湾漁船団(台湾北東部の宜蘭の漁民)に近い人物とも接触しましたが、彼は「実は領有権などどうでもいいのです。宜蘭は漁業ぐらいしか産業がない街で、とにかく漁業権を認めてほしいのです。漁民の願いはそれだけです」と強調されていました。また台北の企業人たちにも尋ねてみたところ、「あれは漁業の問題だから、漁業に無関係な仕事をしている人たちはほとんど関心がないですよ」とのことでした。

この台湾漁船団の尖閣侵入や台北での反日デモに対して資金提供しているのは、中国で手広く事業を展開し親中派(中台統一派)とされる台湾の某食品企業です。その事実は台湾国民にもよく知られており、私が一般の台湾国民の方々に取材したところ、まるで口を揃えたかのように「あの食品会社の会長は若い頃は日本でお煎餅作りの修行をして、日本の製菓会社の応援で大企業に成長できた。それなのに大陸でのビジネスを優先するために中国共産党に媚びている。あまりにも恩知らずだ」「あの会社の食品はもう買わないことにした」「日本は中国・韓国に嫌がらせされて気の毒だ。せめて台湾だけは日本の友人でいたい」「反日デモをやっている連中は中台統一派の外省人ばかりで、我々一般人は『またあいつらか』といった醒めた目で見ています」といった反応がほとんどでした。日本人の中韓への旅行が激減した代わりに台湾への旅行が増えていることを台湾人は非常に喜んでおり、日本企業が中国から台湾へと拠点シフトしてほしいと願う声も多く聞くことができました。

台湾は東日本大震災にあたって世界一の240億ドル以上の義援金を送ってくれました。台湾以外の全ての国からの義援金総額を上回る金額を、人口2300万人の台湾一国で送ってくれたのです。しかも台湾人の平均所得は日本の三分の一を多少越える程度です。巨額の義援金のほとんどは台湾国民からの民間寄付金です。もしも台湾で同じような大震災が起きたときに、人口1億3000万人近い日本では人口に応じた比率(240億ドルの5倍)の義援金が果たして集まるのでしょうか。台湾の華視新聞等のアンケート調査では「台湾人にとって2011年で最も幸福だった出来事」の第1位は、「東日本大震災への義援金が世界一の金額になったこと」でした。日本の左派マスコミはあたかも台湾でも反日気運が生じているような印象操作報道を行っていますが、これほどまでに日本に親愛の情を抱いてくれている友邦が簡単に反日に転じることなどありえないでしょう。今回の現況調査を通じて、台湾の親日感情はいささかも揺らいでいないことを私は確信しました。

しかし台湾においても外省人経営の親中派メディアが日台離反を煽る報道を盛んに行っていることは事実であり、中国は尖閣問題を中台統一(台湾併合)や日台離反のために利用していることを忘れてはならないでしょう。台湾は軍事面における日本の安全保障の地政学的な要であり、また経済的にも日本への物資輸送は台湾海峡のシーレーンを通って輸送されており、台湾が独立を保ち親日国であることは日本の生命線なのです。もしも台湾が中国と統一されてしまえば日本は軍事的に本土まで中国の侵略の脅威にさらされ、経済を支える輸送ルートも中国に握られてしまい、もはや中国の属国になるしか道がない状況に追い込まれます。ある意味において尖閣問題では同時に台湾の存在を戦略的に考えるマクロで視る必要があるのです。

今なお台湾国民から多大な尊敬を集めている李登輝氏は「尖閣は日本領だ」と認められた上で「台湾の漁業権だけ配慮してほしい」とおっしゃっています。安倍氏は台湾政界の親日勢力とのパイプが太く、日本の政治家の中では最も李登輝氏と親しく、李登輝氏から多大な信頼を得ておられます。そして安倍氏は訪台時に「日台を離間させようとの中国の動きに備えねばならない」と馬総統に率直に語りかけ、台湾メディアに「日本と台湾は深い友情で結ばれている。だから解決できない問題などない」と語られ、多くの台湾国民の心を魅了されました。


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