※引き続き、全労働省労働組合(全労働)の見解「理不尽な『公務員バッシング』に対して反論します」を紹介します。
理不尽な「公務員バッシング」に対して反論します
2012年1月 全労働省労働組合
多くのメディアが連日のように「公務員バッシング」を続けています。
日本社会が抱える諸問題は、すべて公務員のせいと言わんばかりの論調も少なくありません。
もとより、多様なメディアが公務や公務員を厳しく監視し、その問題点を広く発信(批判)していくことは、民主主義社会にとって重要な営みです。ですから、行政(公務)の側も情報公開に努めながら、多くの正当な批判を受け止めて、よりよい行政運営に努めるべきです。
しかしながら、昨今の批判の中には、20年前のことを取り上げてまるで昨日のことのように描いたり、統計や制度を意図的にねじまげて解説したりするなど、およそ公正とは言えないものもあります。
このような事態は、多くの国民に行政(公務)に対する「誤解」と「偏見」を植え付け、真に必要な改革方向を見いだすことを困難にするおそれがあります。ついては、メディアが好んで報じる代表的な「公務員バッシング」を取り上げ、事実に即して考え方を明らかにします。
▼家賃が民間の半分以下の膨大な数(22万戸)の公務員宿舎がある。しかも都心の一等地に豪華なマンションのような宿舎があるのは、おかしい。
公務員宿舎への批判は、次のように整理できます。1つは、宿舎は約22万戸もあり、国家公務員全体の4割にも相当し、多すぎるという指摘です。
国家公務員の約半数(24万人強)は自衛官です。自衛官は「指定された場所に居住する義務」があるので、必然的に基地内外の宿舎に入ることとなり、多くの宿舎を必要としています。
また、全国転勤の多い国家公務員(自衛官以外)にとっても、職業生活の多くの部分で二重生活(単身赴任)が避け難いという面があります。こうした実態から、適正な数の宿舎は公務の運営にとって必要です。
この間、政府は宿舎削減計画(25%削減)を決めていますが、公務の運営に支障が生じないのか、懸念があります。
もう1つは、家賃が安く「優遇」だという指摘です。
「宿舎使用料が民間の家賃の半分以下」との指摘ですが、そもそも、業務の必要性から入居を指定される宿舎の使用料と「家賃相場」と比較することが妥当なのでしょうか。
民間でも、事業の必要から労働者が転居を伴う異動を行う企業などでは、自社保有社宅または借り上げ社宅を保有しているのが一般的であり、国家公務員も同様な事情から宿舎が設置されているのですから、その企業が保有する、または借り上げた社宅の使用料を比べることが適当なのではないでしょうか。
この点では、人事院が「平成22年民間企業の勤務条件制度等調査」の中で「社宅の状況等」を調べています(下表参照)。
これを見ると、宿舎使用料は「優遇」とばかりは言えないでしょう。
しかも、多くの民間企業の社宅には管理人が置かれているなど管理も行き届いていますが、公務員宿舎はほとんどの場合、管理人は入居者の持ち回りですし、補修費用の大部分を入居者が自費で賄っています。そして、退去時には、わずか数年の入居であっても、数十万円(ひどいときには百万円近く)の原状回復費を支払わなければならないのです。こうした点はむしろ改善すべき部分でしょう。
さらに、都心の一等地にある宿舎(70平方メートル以上の幹部用)への批判があります。
このような広いタイプの幹部用宿舎は99%の国家公務員にとって無縁なのですが、たしかに幹部用宿舎とは言え、都心の一等地である必要があるのか、(国会議員宿舎の必要性とも比較し)きちんと検証すべきでしょう。
なお、公務員宿舎と言うと、テレビ番組等で紹介される国会議員宿舎のようなものを想像される方がいるかもしれませんが、全く違います。老朽化が進んだものが多く、周辺地域からもが美観を損ねるなどと苦情が寄せられるものまであります。
若手職員の場合は、こうした老朽化した世帯用宿舎に、見ず知らずの複数人で入居し、鍵もかからないふすま1枚で仕切られた一部屋を「宿舎」としてあてがわれている現状があります。
公務員宿舎の見直しも必要だと思いますが、一部を誇張した議論ではなく、全体像をとらえた議論が必要です。
※全労働省労働組合の見解「理不尽な『公務員バッシング』に対して反論します」を項目ごとに順次紹介しています。(以下は紹介済みの記事です)
◆国家公務員は民間労働者より賃金が1.5倍も高い?
◆国家公務員人件費が財政赤字の原因だから賃下げは当然?
◆「復興財源」確保のため公務員がまず身を削るべき?
◆国が赤字だから国家公務員の賃下げやリストラは当たり前?
◆公務員の年金制度は三階建て(職域加算)で優遇されている?