裏切りのサーカス(ネタバレ) | 三角絞めでつかまえて2

裏切りのサーカス(ネタバレ)

裏切りのサーカス

三角絞めでつかまえて-裏切りのサーカス

原題:TINKER TAILOR SOLDIER SPY
2011/イギリス、フランス、ドイツ 上映時間128分
監督:トーマス・アルフレッドソン
原作:ジョン・ル・カレ
出演:ゲイリー・オールドマン、キャシー・バーク、ベネディクト・カンバーバッチ、コリン・ファース、スティーブン・グレアム、トム・ハーディ、キアラン・ハインズ、ジョン・ハート、トビー・ジョーンズ、サイモン・マクバーニー、マーク・ストロング、スヴェトラーナ・コドチェンコワ
(あらすじ)
東西冷戦下の1980年代、英国諜報(ちょうほう)部「サーカス」を引退したスパイ、スマイリー(ゲイリー・オールドマン)に新たな指令が下る。それは20年にわたってサーカスの中枢に潜り込んでいる二重スパイを捜し出し、始末するというものだった。膨大な記録や関係者の証言を基に、容疑者を洗い出していくスマイリーがたどり着いた裏切者の正体とは……。(以上、シネマトゥデイより)

予告編はこんな感じ↓




96点


「裏切りのサーカス」は、人によってかなり評価が分かれる作品だと思うので、僕の点数を鵜呑みにしないで!
※ただ、トーマス・アルフレッドソン監督の作風や、説明台詞が少ない映画、スーツを着たオッサンがウロウロする映画などが好きな人は、公式サイト「鑑賞前:ご一読ください」を読んでから、劇場に行くと良いですよ。


なんとなく気になってたので、公開して少し経った頃に新宿武蔵野館で観てきました。感想は「ああん、素敵… (´Д`;) ハァハァ」って感じでしたよ。


武蔵野館恒例の水槽を使った展示がありまして。
三角絞めでつかまえて-水槽の展示

魚が隠れてるそうです。毎回、いろいろ考えますな~。
三角絞めでつかまえて-毎回いろいろ考えますな

チェス盤を置いたりと、なかなか凝っております。
三角絞めでつかまえて-中も凝ってる

記事の切り抜きも飾ってありましたよ。
三角絞めでつかまえて-記事の切り抜き

半券を提示すると2回目は1000円で観られるとか。これは良いサービス!
三角絞めでつかまえて-リピーター割引


とにかくカッコ良かったです。画面の色調や構図、音楽、役者の演技と、すべてが見事に融合して“陰鬱で冷徹だけど温もりも感じる世界観”を作り出しているというか。僕はドンピシャだったんですけど、あの雰囲気にハマる人には最高の作品なんじゃないでしょうか。内容は全然違いますが、トーマス・アルフレッドソン監督の前作「ぼくのエリ 200歳の少女」を思い出しました。

話自体も、僕は原作の「ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ」は未読だし、テレビドラマ版も未見ですけど、世間の「ちょっと分かりにくいね (´・ω・)(・ω・`) ネー」という評判を聞いていた→覚悟を抱いて画面に集中して鑑賞したのが功を奏したのか、意外と飲み込みやすかったりして。時系列さえちゃんと追えていられれば、そんなには難しくない印象でしたよ。


イギリスで作られた連続ドラマ版はこんな感じ↓ 主演はアレックス・ギネス(日本では未放映、未ソフト化)。




というか、たぶん僕も気付けてないヒント描写とか結構あると思うんですけど、映画的に「誰が二重スパイ<モグラ>なのか!?Σ(゚д゚;)」という謎解き要素よりも、主人公スマイリーの目を通じて“世知辛いスパイ事情”を描くのに重きを置いてるので、この映画のムードにやられちゃっている人からすると、多少分からないところがあっても「まぁ、いっか (・∀・)」とスルーできちゃう感じ。まぁ、何はともあれ、予告編の画像を使って、若干の誇張を交えながらあらすじを書き残しておきますね↓


イギリスの諜報機関<サーカス>の元締めコントロール(ジョン・ハート)は、組織にソ連の二重スパイ<モグラ>がいると思ってまして。
三角絞めでつかまえて-コントロールの依頼

命令を受けたプリドー(マーク・ストロング)は「ジジイも耄碌したな…」と思いつつも、ハンガリーに。
三角絞めでつかまえて-請け負うプリドー

ところが、作戦は無残に失敗してしまうというね…。
三角絞めでつかまえて-作戦失敗

その結果、コントロールは失脚→即病死。右腕だったスマイリーも巻き添えで退職。踏んだり蹴ったりですな。
三角絞めでつかまえて-失脚する2人

退職後、スマイリーが呑気に暮らしていると、突然、政府のオリバー(サイモン・マクバーニー)から「モグラを突き止めて!」との依頼が。
三角絞めでつかまえて-実はスパイが!

仕方なく情報部で仲良しだったピーター・ギラム(ベネディクト・カンバーバッチ)と組んで、レッツ、モグラ探し!ヘ(゚∀゚*)ノ ダレカナー
三角絞めでつかまえて-片腕となるピーター

容疑者は4人。“ティンカー”のアレリン(トビー・ジョーンズ)はコントロールを失脚させたイヤな奴だけど、意外性はないよね。
三角絞めでつかまえて-怪しい人1 ティンカー

“テイラー”のヘイドン(コリン・ファース)は演じてるのが有名な人なだけに、スゲー怪しいムード。
三角絞めでつかまえて-怪しい人2 テイラー

男子的にはグッと来る名前“ソルジャー”のブランド(キーラン・ハインズ)ですが、扱い的には地味。
三角絞めでつかまえて-怪しい人3 ソルジャー

一番イヤなネーミングの“プアマン”トビー(デヴィッド・デンシック)は、その冴えない名前通りの小物。脅されたらベラベラ弁解してました。
三角絞めでつかまえて-怪しい人4  プアマン

さらに、忠実な部下だった自分も疑われてたことを知ってしまうスマイリー。諜報機関って、そんなに周囲が信用できないんですかね。
三角絞めでつかまえて-スマイリーも疑われてました

で、いろいろあった結果、モグラはやっぱりヘイドンでした ┐(´ー`)┌ ホレミタコトカ
三角絞めでつかまえて-モグラは僕でした

フリオ・イグレシアス「La Mer」が流れる中、実は生きていたプリドーがヘイドンを射殺して涙…。
三角絞めでつかまえて-テイラーを射殺...

事件を解決したことで、スマイリーは無事サーカスに復帰。「まぁ、頑張ってみますかな」的な表情で終わってました。
三角絞めでつかまえて-復帰しました


本筋の他にも、いろいろなエピソードが盛り込まれてるんですけど、僕的に好きだったのがプリドーのくだり。彼の人生を時系列順に振り返ると「ヘイドンのことが大好き(たぶんゲイ)→だから、薄々モグラだと気付きつつも、彼のことはスルーしてハンガリーに→ところが、ヘイドンは逆に彼をKGBに売ってしまい、拷問される日々に突入→何とかKGBに解放されてからは(ヘイドンが尽力した可能性有)、教室内に入ってきた鳥を即座に叩き殺すような“型破り教師”として生きてた→スマイリーが来訪し、自分が情報を吐いたことでハンガリーにいた他の仲間たちが全員死亡したことを知る→『ヘイドンのことは好きだけど、落とし前はつけなきゃ』と泣く泣く射殺」ってことだと思ったんですが…どうなんでしょうか。とにかく演じたマーク・ストロングは超渋くて、内向的な少年と交流するシーンなんてベタなんだけど素晴らしくてね…(最後、少年を邪険に追い返したのは「スマイリーから惨劇を聞いて、己の仕事の禍々しさを思い出した→しかも、これからヘイドンを殺しに行く」から…ですよね?)。最後に涙を流す“あの顔”にもジーンとしちゃいましたよ。


プリドーが内向的な少年を助けてあげる描写は大好物でした。
三角絞めでつかまえて-型破り教師


下っ端現場スパイのリッキー・ター(トム・ハーディ)も良かったです。そもそもこの物語は、彼が人妻スパイのイリーナ(スヴェトラーナ・コドチェンコワ)から掴んだモグラ情報が、何者かに握りつぶされたことを上司のピーターに報告するところから始まるワケですけど…。リッキーったら、タイプじゃなかったハズのイリーナにすっかり惚れてしまってて。スマイリーに「お、俺が危険な任務を遂行する代わりに、何とか彼女を助けろよ!ヽ(`Д´;)ノ オネガイ」なんて言ったりするんですが、実は“彼女はプリドーがKGBで拷問されていた時、すでに無残に殺されてる”から、スマイリーも「う、うん… (・ω・;)」と歯切れが悪いという地獄のようなシチュエーション。最後のシーンでも、雨の中のリッキーがまだ彼女を想ってる風なのが泣けるんですよね…(ノω・、) シンジャッタノニ...


リッキー役のトム・ハーディ、スゲー良かったです。
三角絞めでつかまえて-武闘派のリッキー・ター

夫がDV野郎だったりと、とにかく可哀相だったイリーナ。死にザマも無残でした…。
三角絞めでつかまえて-可哀相なイリーナ...


つーか、もう、役者さんたちは全員褒めるところしかないというか、特にスマイリーは地味なくせに凄まじくカッコ良くて、ゲイリー・オールドマン的にベストだったんじゃないかと(まぁ、そんなに出演作を観てませんがー)。ベネディクト・カンバーバッチも良い感じだったし(ゲイ設定だったのは少し驚いた)、コリン・ファースの演技も最高だったし(特に“自信満々の出来る男”だったハズなのに、捕まって正体がバレた途端、小物に見えたのが良かった)。それと、「ミスト」でムカつくババァを射殺して観客の溜飲を下げてくれたトビー・ジョーンズが、今回は非常にイヤな奴を好演してるんですけど、終盤に失脚した時のムードがまさに「ションボリの中のションボリ」って感じで、実に良い仕事をしたなぁと感心しましたよ。


イヤな奴を好演したトビー・ジョーンズ。終盤のションボリ振りは偉人レベル。
三角絞めでつかまえて-ベスト・イヤな奴


演出も大好きでした。過去のパーティシーンを入れることで登場人物たちの人間関係がどうだったのかを見せるのは上手いと思ったし、さり気なく風呂でハラワタを出して死んでたりする場面とかビックリしたし、拷問シーンの演出とかも気が利いてたし…(プリドーがたぶん大音量で何かを聴かされて凄まじく苦しんでいる後ろで、おばちゃんが読書か何かしてた)。宿敵カーラと妻のアンという、スマイリーにとっての重要人物2人の顔をあえて見せないってのも、恐ろしかったり、ミステリアスだったりと、非常に効果的に働いてたと思ったり。


何度か挿入されるパーティのシーンも、良く出来てたのではないでしょうか。
三角絞めでつかまえて-良かった頃

この後ろでは、おばちゃんが事務的に座ってて、それがまた残酷さを浮き彫りにしてましたよ。
三角絞めでつかまえて-拷問される日々


って、長々と書いて来ましたが、僕が本作で最も感動したのがラストシーン! 「現在のプリドーが家から生徒を追い返す→フリオ・イグレシアス「La Mer」が流れ始める(歌詞の内容がまた重要)→過去のパーティシーンでのヘイドンとプリドーの心が通う描写→現在に戻って、プリドーがヘイドンを射殺→その他の諜報員たちの現在が映る(今も現役の人、退職した人、無残に死んじゃった人の順)→スマイリーが自宅に帰ると奧さんのアンが帰宅してた→サーカスに復帰して出勤すると、すれ違った後にピーターがニヤリと笑う→スマイリーがリーダーの席に座ると同時に音楽終了って流れが実に情緒的で、鳥肌が立つほど素敵というか、この場面だけは何度でも観たいから、DVDが出たら絶対買うと誓っております。


とりあえず貼っておきますね↓ 平仮名で「らめぇ~る」って書くと何かドキドキしますね (´∀`) バカネ




ということで、トーマス・アルフレッドソン監督作が肌に合うのか、超大好きな映画でした (・∀・) ただ、集中して観ないとやっぱり分かりにくいところもあるだろうし、そんなに派手な展開はないので、苦手な人がいる気もしないでもないというか。ちょっと違うけど、「ゴーストライター」とかが好きな人ならオススメかなぁ。ちなみにリピーター割引があるということで、僕的には早速もう一度観る予定だったんですが、半券をなくしちゃったというね… ヽ(TДT)ノ ファック!




原作本。新訳になって読みやすくなったそうな。



トーマス・アルフレッドソン監督作。僕の感想はこんな感じ



デジタル盤のサントラ。輸入盤もあります。「La Mer」は入ってるのかな?



なんとなく思い出したロマン・ポランスキー監督作。僕の感想はこんな感じ